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第二章
美しくも不思議
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ラルフが冷気を放出する中、話し始めたジョルジュさん。
「私が婚約していたのは、7歳の頃だ。相手はロジャン国の第一王女」
「え? ロジャン国って、この国の王女様…?」
思わず、つぶやいてしまった私。
「ああ。わが国とロジャン国とのつながりを強くするための政略だ。最初は、王太子のコンラートとロジャン国の第一王女が婚約する予定で、わが国を訪問してきた。だが、当時から、側近として、コンラートと共に行動していた私の顔を見た王女が、コンラートは嫌だ、私と婚約したいと駄々をこねた」
えっ…、王太子様が嫌って…。なんだろう、この既視感…。
あ、ラルフとグラン国の王女!
王太子様のエスコートを嫌がった王女…。うん、似てる…。
王太子様、なんだか、苦労されてますね…。
そして、ジョルジュさんの話は続く。
「私は筆頭公爵家の嫡男で、王族とは近い親戚だ。身分として不足はない。そのため、急遽、私と婚約が結ばれることとなった」
「はあ…」
「それから、一か月後。正式に婚約するため、ロジャン国で婚約式というものが行われることとなり、私は両親と一緒に、ロジャン国にきた。何故か、王女の希望で私の衣装が用意されていた。どうやら、王女の好きな物語にでてくる騎士が私に似ていて、その騎士の着ていた騎士服に似せた衣装を用意したみたいだった」
「えええ! そんなっ、うらやまし…」
そこまで言いかけて、思わず口を閉じる私。
だって、その王女様。自分の好きな登場人物の衣装を着せようとしたってことでしょ?!
うわあ、さすが、大国の王女様。財力がないと無理だわ!
当時のジョルジュさんは7歳の少年だけれど、おそらく、恐ろしいほどの美少年だったはず。
豪奢な騎士服を着たジョルジュ少年…。
現実感がなさすぎて、私の想像の範囲を超えている。
もしや物語の世界をも越えていたかもね…。
王女様は、ジョルジュ少年を見ながら、物語のヒーローの少年期を想像したりなんかして…。
はああー、うらやましすぎる!
思わず、妄想で興奮していると、肩をポンとたたかれた。
アイシャだ。
「リリーが想像していることは、だいたいわかるわ。…でも、早くお兄様と話をつけたいので、とりあえず、今は、お兄様の話を聞きましょ」
と、アイシャが冷静に言った。
現実に戻ると、ジョルジュさんが私をじっと観察している。
「あ、すみません…。ちょっと、本好きとしては妄想がひろがってしまって…。ええと、どうぞ。続きを…」
私が言うと、ジョルジュさんが真剣に聞いてきた。
「リリアンヌ嬢は王女のように、騎士の物語が好きなのだろうか?」
思いもかけないジョルジュさんからの質問に、
「え…? あ、特に騎士の物語が好きというのではなくて、寡黙な騎士がヒロインだけを溺愛するのが好み…、ではなくって、…ええと、あ、素敵な騎士のヒーローは好きですね…」
と、しどろもどろで答えてしまった私。
「そうか…」
と、ちょっと考え込むジョルジュさん。
「お兄様、リリーの気をひこうと、騎士服を着るなんて安直な手段にでるのはやめてくださいね。恥ずかしいわ」
と、冷たく言い放つアイシャ。
いや、そんなことは考えてないと思うよ。
まあ、見られるもんなら見たいけれど…?
と思ったら、ジョルジュさんが少し目を見開いて、アイシャを見た。
「なぜ、わかった?」
「え、まさか…?!」
驚く私の横で、アイシャがあきれたように言った。
「そりゃあ、わかるわよ。今のお兄様は、人間の心を持ち始めたばかりなんだから」
「なるほどな」
アイシャ、その言い方…。そして、ジョルジュさんも、そこは素直に納得するの…?!
なんというか、美しくも、不思議な兄妹だよね…。
「私が婚約していたのは、7歳の頃だ。相手はロジャン国の第一王女」
「え? ロジャン国って、この国の王女様…?」
思わず、つぶやいてしまった私。
「ああ。わが国とロジャン国とのつながりを強くするための政略だ。最初は、王太子のコンラートとロジャン国の第一王女が婚約する予定で、わが国を訪問してきた。だが、当時から、側近として、コンラートと共に行動していた私の顔を見た王女が、コンラートは嫌だ、私と婚約したいと駄々をこねた」
えっ…、王太子様が嫌って…。なんだろう、この既視感…。
あ、ラルフとグラン国の王女!
王太子様のエスコートを嫌がった王女…。うん、似てる…。
王太子様、なんだか、苦労されてますね…。
そして、ジョルジュさんの話は続く。
「私は筆頭公爵家の嫡男で、王族とは近い親戚だ。身分として不足はない。そのため、急遽、私と婚約が結ばれることとなった」
「はあ…」
「それから、一か月後。正式に婚約するため、ロジャン国で婚約式というものが行われることとなり、私は両親と一緒に、ロジャン国にきた。何故か、王女の希望で私の衣装が用意されていた。どうやら、王女の好きな物語にでてくる騎士が私に似ていて、その騎士の着ていた騎士服に似せた衣装を用意したみたいだった」
「えええ! そんなっ、うらやまし…」
そこまで言いかけて、思わず口を閉じる私。
だって、その王女様。自分の好きな登場人物の衣装を着せようとしたってことでしょ?!
うわあ、さすが、大国の王女様。財力がないと無理だわ!
当時のジョルジュさんは7歳の少年だけれど、おそらく、恐ろしいほどの美少年だったはず。
豪奢な騎士服を着たジョルジュ少年…。
現実感がなさすぎて、私の想像の範囲を超えている。
もしや物語の世界をも越えていたかもね…。
王女様は、ジョルジュ少年を見ながら、物語のヒーローの少年期を想像したりなんかして…。
はああー、うらやましすぎる!
思わず、妄想で興奮していると、肩をポンとたたかれた。
アイシャだ。
「リリーが想像していることは、だいたいわかるわ。…でも、早くお兄様と話をつけたいので、とりあえず、今は、お兄様の話を聞きましょ」
と、アイシャが冷静に言った。
現実に戻ると、ジョルジュさんが私をじっと観察している。
「あ、すみません…。ちょっと、本好きとしては妄想がひろがってしまって…。ええと、どうぞ。続きを…」
私が言うと、ジョルジュさんが真剣に聞いてきた。
「リリアンヌ嬢は王女のように、騎士の物語が好きなのだろうか?」
思いもかけないジョルジュさんからの質問に、
「え…? あ、特に騎士の物語が好きというのではなくて、寡黙な騎士がヒロインだけを溺愛するのが好み…、ではなくって、…ええと、あ、素敵な騎士のヒーローは好きですね…」
と、しどろもどろで答えてしまった私。
「そうか…」
と、ちょっと考え込むジョルジュさん。
「お兄様、リリーの気をひこうと、騎士服を着るなんて安直な手段にでるのはやめてくださいね。恥ずかしいわ」
と、冷たく言い放つアイシャ。
いや、そんなことは考えてないと思うよ。
まあ、見られるもんなら見たいけれど…?
と思ったら、ジョルジュさんが少し目を見開いて、アイシャを見た。
「なぜ、わかった?」
「え、まさか…?!」
驚く私の横で、アイシャがあきれたように言った。
「そりゃあ、わかるわよ。今のお兄様は、人間の心を持ち始めたばかりなんだから」
「なるほどな」
アイシャ、その言い方…。そして、ジョルジュさんも、そこは素直に納得するの…?!
なんというか、美しくも、不思議な兄妹だよね…。
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