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第二章

なんてことを!

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ジョルジュさんは、じっと私を見つめながら聞いていた。
そして、少し考えるように黙ったあと、口を開いた。

「わかった。リリアンヌ嬢の希望どおりにしよう。色々手間をかけるが、よろしく頼む。婚約のことだが、リリアンヌ嬢に私の真意が伝わっていないことがよくわかった。だが、私もこんな気持ちになったのは初めてなので、うまく説明できない。そのため、一旦取り下げよう。そして、自分の気持ちを分析し、リリアンヌ嬢に伝わるように努力してから、再度申し込む」

ん?
つまり、私の希望は受け入れられ、婚約の申し込みは取り消され、その後、再度申し込む…って、ええ?!

「お兄様に、人間の気持ちが芽生えてきたっていうこと…?」
アイシャが腕を組みながら、確認するようにつぶやく。

「何度申し込まれても、絶対にお断りだ! だから、二度と申し込むな!」
そう吠えるように言ったのは、すっかり野生化したラルフだ。

「ラルフ、おまえには申し込んでいない」
ジョルジュさんが冷静に指摘する。

確かにね…。 

「当たり前だ! リリーへの婚約申し込みは、俺が断るということだ」

「おまえは、リリアンヌ嬢の父親か?」
ジョルジュさんが冷たい視線をラルフになげる。

確かにね…。それ、私もよく思います。過保護だからね。

「違うに決まってんだろっ?!」
荒れた雰囲気をまき散らすラルフ。

最初、ジョルジュさんに敬語で話していたラルフを、もはや、全く思い出せないわ…。

そこでアイシャがラルフを静止するように、さっと片手をあげた。
「ラルフは、ちょっと黙ってて!」

おお! そのしぐさ、かっこいい! 

そして、アイシャは、ジョルジュさんに挑むような目を向けて、やけに真剣な声で、ジョルジュさんにたずねた。

「お兄様、リリーへの婚約申し込みは本気ということですか?」

ジョルジュさんも、真剣な声で答えた。

「ああ、もちろん本気だ」

「今日、会ったばかりなのに?」

「時間は関係ないだろ。その証拠に、生まれた時から知っている妹のおまえよりも、今日会ったリリアンヌ嬢に親しみを感じている」

…えええええええ?! 

ちょっと、ジョルジュさん?! 
なんてことを言ってるのっ?!

アイシャ、大丈夫?!
と、思って見たら、アイシャは力強くうなずいていた。

「それは、わかるわ。私も同じだったから。ラルフの家で、リリーに出会った日。その一日で、すっかり、リリーが大事になったもの。お兄様と比べるべくもないわ」

…はああああああ?!

ちょっと、アイシャまで?! 
なんてことを言ってるのっ?!

私の心の絶叫をよそに、淡々と二人の会話は続いていく。
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