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第二章

理解できない

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「間に入る権利だと? 何、意味がわからないこと言っている。子どもの頃は、見どころがあると思ったが、見込み違いだったか…。ラルフ、しばらく会わないうちに馬鹿になったな」
ジョルジュさんは、氷のような視線でラルフを見ながら、言い放った。

ちょっと、ジョルジュさん! なんて恐ろしいことをラルフに言うんですか!
この殺伐とした空気に、平然と引火するなんて、怖いですよっ!!

驚きすぎた私が目をむいていると、案の定、ラルフが、すごい剣幕でジョルジュさんに言い返す。

「あんたになんて思われようがどうでもいい! それより、馬鹿なのはそっちだろうっ?! 2人だけで屋敷に滞在なんてしたら、リリーに変な噂がたつ! そんなこともわからないのか!!」

ラルフ…。
私のことを思っての言葉は嬉しいけれど、エメラルド色の瞳がぎらついて、すっかり野生に戻っている。
ジョルジュさんには、丁寧な言葉で話さないといけないルールなのでは…?

なーんてことを言える雰囲気は一ミリもない…。
とにかく、ウルフ化しているラルフを落ち着かさないと!

が、どうやって…。

考えている間に、ジョルジュさんが冷たいオーラを放ちながら口を開いた。

「2人だけだと? ラルフ、何を言っている。この屋敷には、住み込みの使用人が21人。通いの者を入れると48人いる」

さすが、筆頭公爵家。
別宅であっても、かなりの数の使用人さんが働いているんだね。

…なーんて言ってる場合じゃなくて、ジョルジュさん!
ラルフと会話がかみあってないですよっ?!

「おいっ! ふざけてんのか?!」
隣のラルフの怒りが伝わってきて、肌がびりびりする。

そして、反対側では、アイシャがため息をついた。
「お兄様…。ラルフの言っていることはそうじゃないわ…」

二人のそんな反応にも全く表情を変えず、ジョルジュさんが、飛び掛かりそうな勢いのラルフに淡々と言った。
「ならば、リリアンヌ嬢がこの屋敷に滞在する理由があればいいのだな」

「ああ?!」
地鳴りのような声を出すラルフ…。

ジョルジュさんは、はたと私に視線をあわせた。

「リリアンヌ嬢」

「はいっ?!」
突然、呼びかけられ、声が裏返った。

すると、ジョルジュさんが、さっと椅子から立ちあがった。

え、何故?!

そう思いながらも、つられて私も立ってしまう。
テーブルをはさんで向かい合ったとたん、両隣のラルフとアイシャも立ちあがった。

なんともいえない雰囲気が部屋中にひろまる。
ええと、今から戦いが始まるのでしょうか?

変な緊張でドキドキしていると、ジョルジュさんが、私をまっすぐに見て言った。

「リリアンヌ嬢、私と婚約していただけないだろうか?」

…ん? 耳から入ってきた言葉が理解できない。

「ええと、今なんと…?」

「リリアンヌ嬢、私と婚約して欲しい」

「…こんやく? …って、あの婚約?! えええええ?!」
私の絶叫する声が、部屋中に響き渡った。
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