57 / 108
第一章
視線が痛い
しおりを挟む
動悸が激しくて、王太子様のご挨拶は、何も聞き取れなかった。
そして、音楽がなりはじめ、会場はざわざわとしはじめる。皆、思い思いに動きはじめたよう。
近くを、飲み物を配る人が通りかかった。
そう言えば、のどが、からっからだ…。
「あ、飲み物…」
とつぶやいたら、すぐにラルフが察してくれたよう。
やっと、私の手を離し、私の分と、アイシャの分の飲み物をその人から受け取って、手渡してくれた。
早速、飲むと、フルーツのジュースが、つかれた心と体にしみわたる!
「くーっ! 美味しいー。しみるー!」
私が心からの声を発すると、アイシャが、
「その見た目と、しゃべった時のギャップがすごいわね。おもしろいわー」
と、私を眺めながら、微笑んだ。
あ、今の私、前世なら、お風呂上りに、ビールを飲むおじさんみたいだったね…。
「よほど、のどがかわいてたんだな」
と、ラルフが、ちょっとあきれた顔で言った。
「うん。おなかは、もっとすいてるけどね!」
と、開き直る私。
「わかった。食べに行くか」
と、ラルフは言い、またもや、私の手をにぎった。
「え? ちょっと、手をつかまなくても、歩けるよ?」
と、私が言うと、
「ダメだ。短い距離でも、危ないからな」
ラルフが、言いきった。
「危ない? いやいや、ここは、王宮のパーティー会場だよ?
危険な動物たちがいるジャングルじゃないよ?」
そう言って、私が手をふりほどこうとすると、ラルフは、さらに強く、私の手をぎゅっとにぎってきた。
そして、ラルフは、少しかがむようにして、私の顔を横からのぞき込む。
エメラルド色の瞳は、真剣だ。
「ここは、危険な奴らがごちゃついている、ジャングルみたいなもんだ。動物たちより、たちが悪いしな。
視線も、うっとうしいし…。こんなところで、リリーを一人で歩かせられない」
ラルフの過保護が、ますます悪化してるんだけど…。
アイシャが、
「仕方ないわね。…まあ、確かに、今はラルフといたほうがいいかも。あの王女の視線は、不快だわ!
リリーに、なにかしてきたら、あの王族ごと沈める方法を考えないとね」
と、美しい顔で、おそろしいことをさらっと言った。
アイシャ…。それは、やめてあげて?!
ということで、ここは、おとなしく、ラルフに手をつながれて、料理の並ぶテーブルの方へ、歩いていく。
歩くたびに、あたりが静まり、注目されているのがわかる。
颯爽と歩くラルフに手をひかれ、連行される私。その後ろから、女王のように、優雅にアイシャが歩いてくるのだから、目立ちまくりだよね。
視線が痛すぎる…。
お願いですから、みなさん、こちらを見ずに、ざわざわっと、しててください!
このなんとも言えない空気の中、
「おっ、ラルフ! 久しぶり」
声をかけてきた勇者がいた。
茶色でくせのある髪に、くりっとした目。親しみやすそうな男の人だ。
「あ、アイシャさんも久しぶり」
と、アイシャにも声をかけた。
「お久しぶりね。ルークさん」
と、アイシャが微笑みながら、挨拶を返す。
「おまえ、目立ってんぞ! なんてたって、美女二人もひきつれてるからな?!
ちょっと、紹介しろよ。その手をにぎってる、きれいな…」
と、そこまで言った瞬間、黙った。
ラルフが、氷のような視線で威圧しているからだ。
ルークさんとやらは、おびえた顔でつぶやいた。
「ラルフ、こわいよっ…。殺気立ってる…? こわっ…」
心配になって、私が、
「あの、どなた?」
と、ラルフに聞くと、ラルフは私のほうを見て言った。
「リリーは永遠に知らなくていい」
が、その人は、あわてたように私にむかって挨拶をしてくれる。
「俺は、ラルフの同級生で、ラングーン伯爵家のルークです。よろしく!」
すると、ラルフが、すぐさま言った。
「ルーク。誰が、リリーに、自己紹介していいって言った? リリー、今のは忘れろ。必要ないからな」
え?! ちょっと、失礼でしょ?
かわいそうに、ルークさんが、涙目になってるよ。
そして、音楽がなりはじめ、会場はざわざわとしはじめる。皆、思い思いに動きはじめたよう。
近くを、飲み物を配る人が通りかかった。
そう言えば、のどが、からっからだ…。
「あ、飲み物…」
とつぶやいたら、すぐにラルフが察してくれたよう。
やっと、私の手を離し、私の分と、アイシャの分の飲み物をその人から受け取って、手渡してくれた。
早速、飲むと、フルーツのジュースが、つかれた心と体にしみわたる!
「くーっ! 美味しいー。しみるー!」
私が心からの声を発すると、アイシャが、
「その見た目と、しゃべった時のギャップがすごいわね。おもしろいわー」
と、私を眺めながら、微笑んだ。
あ、今の私、前世なら、お風呂上りに、ビールを飲むおじさんみたいだったね…。
「よほど、のどがかわいてたんだな」
と、ラルフが、ちょっとあきれた顔で言った。
「うん。おなかは、もっとすいてるけどね!」
と、開き直る私。
「わかった。食べに行くか」
と、ラルフは言い、またもや、私の手をにぎった。
「え? ちょっと、手をつかまなくても、歩けるよ?」
と、私が言うと、
「ダメだ。短い距離でも、危ないからな」
ラルフが、言いきった。
「危ない? いやいや、ここは、王宮のパーティー会場だよ?
危険な動物たちがいるジャングルじゃないよ?」
そう言って、私が手をふりほどこうとすると、ラルフは、さらに強く、私の手をぎゅっとにぎってきた。
そして、ラルフは、少しかがむようにして、私の顔を横からのぞき込む。
エメラルド色の瞳は、真剣だ。
「ここは、危険な奴らがごちゃついている、ジャングルみたいなもんだ。動物たちより、たちが悪いしな。
視線も、うっとうしいし…。こんなところで、リリーを一人で歩かせられない」
ラルフの過保護が、ますます悪化してるんだけど…。
アイシャが、
「仕方ないわね。…まあ、確かに、今はラルフといたほうがいいかも。あの王女の視線は、不快だわ!
リリーに、なにかしてきたら、あの王族ごと沈める方法を考えないとね」
と、美しい顔で、おそろしいことをさらっと言った。
アイシャ…。それは、やめてあげて?!
ということで、ここは、おとなしく、ラルフに手をつながれて、料理の並ぶテーブルの方へ、歩いていく。
歩くたびに、あたりが静まり、注目されているのがわかる。
颯爽と歩くラルフに手をひかれ、連行される私。その後ろから、女王のように、優雅にアイシャが歩いてくるのだから、目立ちまくりだよね。
視線が痛すぎる…。
お願いですから、みなさん、こちらを見ずに、ざわざわっと、しててください!
このなんとも言えない空気の中、
「おっ、ラルフ! 久しぶり」
声をかけてきた勇者がいた。
茶色でくせのある髪に、くりっとした目。親しみやすそうな男の人だ。
「あ、アイシャさんも久しぶり」
と、アイシャにも声をかけた。
「お久しぶりね。ルークさん」
と、アイシャが微笑みながら、挨拶を返す。
「おまえ、目立ってんぞ! なんてたって、美女二人もひきつれてるからな?!
ちょっと、紹介しろよ。その手をにぎってる、きれいな…」
と、そこまで言った瞬間、黙った。
ラルフが、氷のような視線で威圧しているからだ。
ルークさんとやらは、おびえた顔でつぶやいた。
「ラルフ、こわいよっ…。殺気立ってる…? こわっ…」
心配になって、私が、
「あの、どなた?」
と、ラルフに聞くと、ラルフは私のほうを見て言った。
「リリーは永遠に知らなくていい」
が、その人は、あわてたように私にむかって挨拶をしてくれる。
「俺は、ラルフの同級生で、ラングーン伯爵家のルークです。よろしく!」
すると、ラルフが、すぐさま言った。
「ルーク。誰が、リリーに、自己紹介していいって言った? リリー、今のは忘れろ。必要ないからな」
え?! ちょっと、失礼でしょ?
かわいそうに、ルークさんが、涙目になってるよ。
27
お気に入りに追加
722
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
【更新中】悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! -5年前「白パンダ」と私を嗤った皆様に今度は天使の姿でリベンジします! 覚悟は宜しくて?-
薪乃めのう
恋愛
見た目は天使、中身は自称悪役令嬢が、5年前に王宮行事に参加した自分を『白パンダ』と笑った王子達にリベンジします。
美形王子から『白パンダ』と言われる程の有様でしたが、言われたシュゼットはショックから一念発起して、自分を笑った王子達に仕返しするため完璧令嬢になって現れました。
隣国と自国の王子や王弟、外交大使の息子や侯爵家の息子など、登場する男子は美形さんばかりです。
小説家になろう様でも投稿しております。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。
宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。
だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!?
※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる