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第一章

無理を言わないでください

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ルーニーさんの、お弟子さんらしき人がドレスを何着か持ってきた。

「これ、全部、私の新作。アイシャちゃんに言われたサイズに直してきたんだけど、ぴったりだわね!」
と、私を上から下まで眺めて、うなずいた。

ぴったりよりも、私が気になっているのは、ドレスのお値段。
私は、すべてをけちって、本代につぎこんではいるけれど、このような素敵ドレスを買うお金はないのですが?!

ということで、ルーニーさんに、
「あのー、ドレス、おいくらなんですか…? とても私が買えるような感じに思えないのですが…?」
と、おそるおそる聞いてみた。

すると、ルーニーさんは、
「やだっ! 心配しないで?! これらは、新作のサンプルなの。だから、今日は、妖精姫ちゃんに着てもらって、感想をきいて、あと、ちょっと写真をとらせてもらえればOKよ! 
まあ、買い取りであれば、アイシャの知り合いだから、相当お安くはしておくけど?」
と、にんまり笑った。

「…あ、なんだか、すみません…。お役に立てるか、わかりませんが、今日だけお貸しください…。ハハハ…」
と、自信なく笑う。

というのも、ルーニーさんのドレスはどれも本当に素敵なんだけど、私が着たことがないような、派手なドレスばかりだ。
とても、似合うとは思えないんだけど…。

皆さんをがっかりさせそうで、…不安がつのる。

が、そんな私の不安をものともせず、アイシャとルーニーさんの話し合いがはじまった。

「この紫のドレスはどうかしら?」
と、ルーニーさんがアイシャに聞く。

「…そうねえ。あててみて」
と、アイシャが言うと、ルーニーさんのお弟子さんが、ドレスを私にさっとあてる。

アイシャは腕をくんで見ていたが、
「似合うわ…。でもね、…色は大人っぽいけど、形がかわいすぎて、今までの路線上にあるのよね。もっと、はっとするほど、変えてみたいの!」
と、ルーニーさんに言った。

「なるほどね。じゃあ、このオレンジは? なんか、小悪魔みたいになるんじゃない?」
と、ルーニーさんが、つったっている私にオレンジ色のドレスをあてる。

いやいや、小悪魔って…。

「確かに、それも、かわいいんだけど…。もっと、品が良くて、大人の色気もあるのがいいわね」
と、アイシャが考えながら言った。

大人の色気? 何を言うの、アイシャさん! 
どんなドレスを着ても、ないものは出せませんよ?! 

すると、
「なら、これは?! とっておきの、真紅のドレスよ!」
と、ルーニーさんが叫んだ。

真紅のドレスは、ドレープが美しく、目を奪われる。

が、これを私が着る?!

アイシャが、
「そうね、それがいいわ」
と、うなずいた。

いやいやいやいや。無理でしょ?!

「私、赤いドレスだと、顔が完全に負けるよ? 能面みたいになっちゃうよ? もう少し、地味目の色に」
と、言いかけたところを、

「こら、おしゃれ放棄の妖精! あのね、私を誰だと思ってるの! センスあふれまくりの最高のデザイナー、ルーニー様よ! 私の目に狂いはないわ!」
と、ルーニーさんが、私に言い放った。

色々、つっこみどころが満載だ…。

が、とりあえず、おしゃれ放棄の妖精って、私のこと?
ほめられてるんだか、けなされてるんだか…。 
斬新な呼びかけすぎて、返事ができないんだけど。

が、ルーニーさんは、怒らせたら、面倒な人だってことは、わかった。
わかりました! こうなったら、なんでも着ます!

ということで、アイシャのおしゃれ部隊のメイドさんたちに、アイシャの更衣室に、真紅のドレスとともに、ひきこまれた私。

私はつったっているだけで、あっという間に、ドレスを着せられた。

更衣室からでると、すぐさまルーニーさんがよってきて、ドレープを調整しはじめた。
真剣なまなざしで、声もかけられない。

ルーニーさんの調整が終わると、今度は、アイシャとルーニーさんの指導のもと、アイシャのおしゃれ部隊に、ヘアメイクを施されはじめた。

私は、ただただぼーっと、座っているだけだ。
なのに、沢山の方たちに動いてもらって、申し訳ない感じ…。

髪をまかれたり、つられたり、あげられたり、盛られたり…。
それが終わると、色々顔にぬられはじめた。

どれぐらい時間がたったかな?

やっと、私の準備が終わったようだ。


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