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第一章

来客 3

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「は?! 何、言ってるの?! 3日後のパーティーって、あのグラン国の送別パーティーのことでしょ?」
ロイさんに、鋭い口調で、アイシャが詰め寄る。

「うん、そうなんだけどね…」

「なぜ? リリーは関係ないじゃない?」
どんどん、ロイさんを追い詰めていくアイシャ。

その姿は、まさに、かっこいい悪役令嬢だよ! 

…なんて思ってる場合じゃない。確かに、なんで、私?

「うん、そうだよね、リリーちゃんには関係ないんだけどね? でも、来てください!」
またもや、がばっと頭をさげる、ロイさん。

「あの…、なんで、私に来てほしいんですか?」
と、肝心の理由を聞く。

ロイさんは、アイシャをちらりと見て、その形相に言い淀んでいたが、覚悟を決めたように、話し始めた。

「ええとね、王太子のところへ、ラルフがどなりこんできたんだよね。王女のエスコートは絶対しないって言ってね」

あ、ラルフ、昨日、怒ってたもんね。

アイシャが、眉をひそめる。
「客人の王女のエスコートって、王太子がやるものでしょ? コンラートは婚約者もいないし、問題ないじゃない? なんで、ラルフなの?」

ロイさんが、
「うっ…、やっぱり、そこから説明しないといけないよね? はああ」
と、ため息をついた。

「実は、王女が、ラルフをご指名なんだ。それで、王太子の命として、ラルフに王女のエスコートを頼むことにしたから、王宮へうちあわせにきてね、って書いた書状を送ったら、すぐさま、どなりこまれて…。
いやあー、ラルフものすごーく怖いんだもん。震えあがったよ…」
と、ロイさんが、思い出したように、おびえた顔をした。

アイシャが、
「なんて、わがままなの? その王女?! それよりも、そんなわがままを許してる、コンラートとロイは、一体なんなの?!」
と、あきれた声で言った。

「ん-、リリーちゃんだけならともかく、アイシャやジャンくんがいたら、ごまかせないか…」
と、ロイさんが、つぶやいた。

ん? ロイさん、それは、どういう意味ですか?!

ロイさんは、開き直ったように、ぺらぺらと話し始めた。 
「今までさ、あの国と接点がなかったじゃない? だから、交渉だけでも面倒なのよ。
なのに、王女まで連れてきて。おとなしくしてたらいいけど、そんなキャラじゃないし。
正直、あの国の情報がなさすぎて、どう扱っていいかわからないわけ。調べる時間もないし。
しかも、あの王女は、相当大事にされ、甘やかされているから、どこまで注意していいかもわからないんだよね。
とりあえず、短い期間だし、極力、面倒を避けるため、できるだけ希望を聞いて、機嫌よく帰ってもらうことにしたの。そのためには、王女のお気に入りのラルフをあてがってたら、楽なんだよね」
と言った。

「それは、ラルフも怒るはずですね」
と、冷静に言うすジャンさん。

「確かにね。でも、ラルフはどなりこんできて、断ったんでしょ? 王太子の命であろうが、従わないわよ、ラルフは。まあ、私でも絶対に従わないけどね。書状なんか送ってきたら、びりびりにしてやるわね」
と、アイシャ。

そう言えば、ラルフは、にぎりつぶしてたね…。

ロイさんは、
「ほんと、二人とも似てるよね…。怖いんだから、もう…。
まあ、とにかく、あんなに怒ったラルフが王太子に従うわけがない。だから、仕方なく、王女に、もう一度、頼んだんだ。王太子のエスコートで我慢してくれって」

我慢って…。王太子様だよ? 

「そしたら、条件をだしてきた。エスコートはダメでも、ラルフと踊りたいって。だから、パーティーには絶対につれてきてくれってね。
でも、怒り心頭のラルフは、エスコートなしでも、絶対にパーティーに参加しないって言ってるんだよね。
そこで、俺は考えた。リリーちゃんに頼むしかないって! 助けて、リリーちゃん!」

「いや、だから、なぜ、そこで私がでてくるんですか?」
と、私は首をひねる。

アイシャは、だまって考えていたが、予想がついたのか、すごい目でロイさんをにらんでいる。

「だって、リリーちゃんは、ラルフをおびきよせるためのエサ、…いや、ちがった、鍵になるでしょ?」

今、エサって言ったよね?! 


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