48 / 108
第一章
来客 3
しおりを挟む
「は?! 何、言ってるの?! 3日後のパーティーって、あのグラン国の送別パーティーのことでしょ?」
ロイさんに、鋭い口調で、アイシャが詰め寄る。
「うん、そうなんだけどね…」
「なぜ? リリーは関係ないじゃない?」
どんどん、ロイさんを追い詰めていくアイシャ。
その姿は、まさに、かっこいい悪役令嬢だよ!
…なんて思ってる場合じゃない。確かに、なんで、私?
「うん、そうだよね、リリーちゃんには関係ないんだけどね? でも、来てください!」
またもや、がばっと頭をさげる、ロイさん。
「あの…、なんで、私に来てほしいんですか?」
と、肝心の理由を聞く。
ロイさんは、アイシャをちらりと見て、その形相に言い淀んでいたが、覚悟を決めたように、話し始めた。
「ええとね、王太子のところへ、ラルフがどなりこんできたんだよね。王女のエスコートは絶対しないって言ってね」
あ、ラルフ、昨日、怒ってたもんね。
アイシャが、眉をひそめる。
「客人の王女のエスコートって、王太子がやるものでしょ? コンラートは婚約者もいないし、問題ないじゃない? なんで、ラルフなの?」
ロイさんが、
「うっ…、やっぱり、そこから説明しないといけないよね? はああ」
と、ため息をついた。
「実は、王女が、ラルフをご指名なんだ。それで、王太子の命として、ラルフに王女のエスコートを頼むことにしたから、王宮へうちあわせにきてね、って書いた書状を送ったら、すぐさま、どなりこまれて…。
いやあー、ラルフものすごーく怖いんだもん。震えあがったよ…」
と、ロイさんが、思い出したように、おびえた顔をした。
アイシャが、
「なんて、わがままなの? その王女?! それよりも、そんなわがままを許してる、コンラートとロイは、一体なんなの?!」
と、あきれた声で言った。
「ん-、リリーちゃんだけならともかく、アイシャやジャンくんがいたら、ごまかせないか…」
と、ロイさんが、つぶやいた。
ん? ロイさん、それは、どういう意味ですか?!
ロイさんは、開き直ったように、ぺらぺらと話し始めた。
「今までさ、あの国と接点がなかったじゃない? だから、交渉だけでも面倒なのよ。
なのに、王女まで連れてきて。おとなしくしてたらいいけど、そんなキャラじゃないし。
正直、あの国の情報がなさすぎて、どう扱っていいかわからないわけ。調べる時間もないし。
しかも、あの王女は、相当大事にされ、甘やかされているから、どこまで注意していいかもわからないんだよね。
とりあえず、短い期間だし、極力、面倒を避けるため、できるだけ希望を聞いて、機嫌よく帰ってもらうことにしたの。そのためには、王女のお気に入りのラルフをあてがってたら、楽なんだよね」
と言った。
「それは、ラルフも怒るはずですね」
と、冷静に言うすジャンさん。
「確かにね。でも、ラルフはどなりこんできて、断ったんでしょ? 王太子の命であろうが、従わないわよ、ラルフは。まあ、私でも絶対に従わないけどね。書状なんか送ってきたら、びりびりにしてやるわね」
と、アイシャ。
そう言えば、ラルフは、にぎりつぶしてたね…。
ロイさんは、
「ほんと、二人とも似てるよね…。怖いんだから、もう…。
まあ、とにかく、あんなに怒ったラルフが王太子に従うわけがない。だから、仕方なく、王女に、もう一度、頼んだんだ。王太子のエスコートで我慢してくれって」
我慢って…。王太子様だよ?
「そしたら、条件をだしてきた。エスコートはダメでも、ラルフと踊りたいって。だから、パーティーには絶対につれてきてくれってね。
でも、怒り心頭のラルフは、エスコートなしでも、絶対にパーティーに参加しないって言ってるんだよね。
そこで、俺は考えた。リリーちゃんに頼むしかないって! 助けて、リリーちゃん!」
「いや、だから、なぜ、そこで私がでてくるんですか?」
と、私は首をひねる。
アイシャは、だまって考えていたが、予想がついたのか、すごい目でロイさんをにらんでいる。
「だって、リリーちゃんは、ラルフをおびきよせるためのエサ、…いや、ちがった、鍵になるでしょ?」
今、エサって言ったよね?!
ロイさんに、鋭い口調で、アイシャが詰め寄る。
「うん、そうなんだけどね…」
「なぜ? リリーは関係ないじゃない?」
どんどん、ロイさんを追い詰めていくアイシャ。
その姿は、まさに、かっこいい悪役令嬢だよ!
…なんて思ってる場合じゃない。確かに、なんで、私?
「うん、そうだよね、リリーちゃんには関係ないんだけどね? でも、来てください!」
またもや、がばっと頭をさげる、ロイさん。
「あの…、なんで、私に来てほしいんですか?」
と、肝心の理由を聞く。
ロイさんは、アイシャをちらりと見て、その形相に言い淀んでいたが、覚悟を決めたように、話し始めた。
「ええとね、王太子のところへ、ラルフがどなりこんできたんだよね。王女のエスコートは絶対しないって言ってね」
あ、ラルフ、昨日、怒ってたもんね。
アイシャが、眉をひそめる。
「客人の王女のエスコートって、王太子がやるものでしょ? コンラートは婚約者もいないし、問題ないじゃない? なんで、ラルフなの?」
ロイさんが、
「うっ…、やっぱり、そこから説明しないといけないよね? はああ」
と、ため息をついた。
「実は、王女が、ラルフをご指名なんだ。それで、王太子の命として、ラルフに王女のエスコートを頼むことにしたから、王宮へうちあわせにきてね、って書いた書状を送ったら、すぐさま、どなりこまれて…。
いやあー、ラルフものすごーく怖いんだもん。震えあがったよ…」
と、ロイさんが、思い出したように、おびえた顔をした。
アイシャが、
「なんて、わがままなの? その王女?! それよりも、そんなわがままを許してる、コンラートとロイは、一体なんなの?!」
と、あきれた声で言った。
「ん-、リリーちゃんだけならともかく、アイシャやジャンくんがいたら、ごまかせないか…」
と、ロイさんが、つぶやいた。
ん? ロイさん、それは、どういう意味ですか?!
ロイさんは、開き直ったように、ぺらぺらと話し始めた。
「今までさ、あの国と接点がなかったじゃない? だから、交渉だけでも面倒なのよ。
なのに、王女まで連れてきて。おとなしくしてたらいいけど、そんなキャラじゃないし。
正直、あの国の情報がなさすぎて、どう扱っていいかわからないわけ。調べる時間もないし。
しかも、あの王女は、相当大事にされ、甘やかされているから、どこまで注意していいかもわからないんだよね。
とりあえず、短い期間だし、極力、面倒を避けるため、できるだけ希望を聞いて、機嫌よく帰ってもらうことにしたの。そのためには、王女のお気に入りのラルフをあてがってたら、楽なんだよね」
と言った。
「それは、ラルフも怒るはずですね」
と、冷静に言うすジャンさん。
「確かにね。でも、ラルフはどなりこんできて、断ったんでしょ? 王太子の命であろうが、従わないわよ、ラルフは。まあ、私でも絶対に従わないけどね。書状なんか送ってきたら、びりびりにしてやるわね」
と、アイシャ。
そう言えば、ラルフは、にぎりつぶしてたね…。
ロイさんは、
「ほんと、二人とも似てるよね…。怖いんだから、もう…。
まあ、とにかく、あんなに怒ったラルフが王太子に従うわけがない。だから、仕方なく、王女に、もう一度、頼んだんだ。王太子のエスコートで我慢してくれって」
我慢って…。王太子様だよ?
「そしたら、条件をだしてきた。エスコートはダメでも、ラルフと踊りたいって。だから、パーティーには絶対につれてきてくれってね。
でも、怒り心頭のラルフは、エスコートなしでも、絶対にパーティーに参加しないって言ってるんだよね。
そこで、俺は考えた。リリーちゃんに頼むしかないって! 助けて、リリーちゃん!」
「いや、だから、なぜ、そこで私がでてくるんですか?」
と、私は首をひねる。
アイシャは、だまって考えていたが、予想がついたのか、すごい目でロイさんをにらんでいる。
「だって、リリーちゃんは、ラルフをおびきよせるためのエサ、…いや、ちがった、鍵になるでしょ?」
今、エサって言ったよね?!
15
お気に入りに追加
719
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって (元悪役令嬢編)
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で貴族令嬢として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
*****ご報告****
「逃げて、追われて、捕まって」連載版については、2020年 1月28日 レジーナブックス 様より書籍化しております。
****************
サクサクと読める、5000字程度の短編を書いてみました!
なろうでも同じ話を投稿しております。
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい
tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。
本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。
人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆
本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編
第三章のイライアス編には、
『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』
のキャラクター、リュシアンも出てきます☆
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。
宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。
だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!?
※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる