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第一章

ため息がとまらない

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馬車の中で、今日、自分のなかにわきおこった、よくわからない、もやもやした気持ちを、アイシャに全部話した。

そして、ラルフへの自分の態度を思い出して、はーっとため息をつく。

なんで、あんなに、自分自身がコントロールできなかったんだろう?  
ラルフは、全然悪くないのに、あれでは、ただの八つ当たりだ。
自己嫌悪で、ため息がとまらない。

「はああー。これって、やっぱり、兄離れできてない妹みたいな感じなのかなあ? 
ほら、ラルフとは、子どものころから、ずーっと一緒にいたから。
そういえば、ラルフの恋愛とか見たことがないから、実際見ると、びっくりしたのかな…。あんなに、ラルフの溺愛を見られる日を期待してたのに。いざとなると、ダメだね…。
ラルフはちっとも悪くないのに、もやもやして、あたっちゃって…。
冷静になると、ほんと、小さい子どもみたいで恥ずかしいわ。
気が重いけど、明日にでも謝りにいかないとね…。そう思うでしょ、アイシャ?」
と、私が聞いた。

が、アイシャは、
「これは、まずいわね…。私の計画が…。いえ、まだ、大丈夫。奴は、今、盛大に墓穴をほってるし。
それに何より、本人が気づいてない。奴も気づいてない。奴が気づいたら、嬉々として、一気に仕掛けるだろうしね。想像しただけで、むかつくわ…。つまり、私が留学先に帰る前が勝負ね。そう、今がチャンスだわ…」
などと、意味不明なことを、ぶつぶつとつぶやいてる。

「アイシャ? どうしたの?」

私がよびかけると、アイシャは、はっとしたように私を見た。

そして、
「あ、ごめんなさい。ちょっと、私の望む、よりよい未来にするためには、どうしたらいいのか考えていたの…。
ラルフのことは気にしなくていいわよ。あれは大いに反省すべきだし。悩めばいいのよ! 
それより、今日は、リリーに、しっかりと、ロジャン国のいいところを知ってもらうわ。今、すぐにでも、住みたくなるように、くわしく説明するわね。腕がなるわ! フフフ」
そう言うと、それはそれは、きれいな笑みを浮かべた。

アイシャ、またもや、悪役令嬢の顔になってるよ?
なにか、企んでそうなんだけど。
まあ、すごく、似合ってるんだけどね…。

ということで、到着しました。
アイシャのお家。

さすがは、筆頭公爵家。いつ来ても、目を見張るほど、立派なお屋敷!

同じ公爵家でも、ラルフの家とは雰囲気が全然違う。
ラルフの家は、エルザおばさまが仕切っていらっしゃるからか、アットホームな感じだけど、アイシャの家は、入った瞬間から、ぴしっとしていて、メイドさんたちも隙がない感じ。

そういえば、アイシャのご両親はお忙しいらしく、お屋敷でお会いしたことは一度もない。

ということで、毎回、緊張しながら、アイシャについていく。

そして、広々としたアイシャの部屋に通された瞬間、はーっと息をはいた。

アイシャが、笑って言った。
「もう何十回も来てるのに、まだ、緊張するの?」

私は、うなずいた。

「緊張するよ! 立派な廊下で、つまずいて、転んだらどうしようとか。だれか、笑ってくれたら、まだ救われるけど、無言だったら恥ずかしすぎて、いたたまれないなあ、とか」

アイシャは、クスクスと笑って言った。
「なにそれ? もう、リリーはおもしろいわね。いいわよ、もし転んだら、私が笑うから。安心して」

うん、アイシャが笑うと、これまた、微妙な空気になりそうなんだけどね…。
やっぱり、転ばないように気をつけよう!
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