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第一章

奇妙な行動

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おすすめの本をジャンさんに説明したり、されたりしながら、本棚をまわっていく。
やはり、好きな本を話し合うのは楽しいよね!

が、そんな楽しい中、ずーっと背中に圧を感じている。
というのも、ラルフがはりついたままだからだ。

「ちょっと、離れてよ。変だよ?! ほら、ラルフも本を見て!」
私が振り返って言うと、

「見なくていい。リリーが決めた本を読む」

本屋にきて、本を見ないとは! 本好きとしては、信じられん…。
しかも、私が決めた本って…。課題図書じゃないんだよ?

ふと、本棚の高いところに目をやると、ジャンさんに進めたい1冊を見つけた。

「この赤い装丁の本。素敵な恋愛もので、おすすめなんだよね」
と言いながら手を伸ばすと、背後から、にょきっと長い手がのびてきた。
もちろん、ラルフだ。

ラルフは、私にその本を手渡してくれた。
「ありがとう」

そして、その本を、私は、ジャンさんに見せようと、
「ジャンさん、この本、知ってる? 是非読んでほしいんだけど」
そう言いながら、ジャンさんの方に、本を手渡そうとすると、さっと本が取り上げられた。

えっ? 何がおこったの?

と思ったら、ラルフが、私の手から素早く本を取り、ジャンさんに手渡した。

なんと、流れるような早業! 

と、感心したものの、その後も、そんなことが何度か続く。
ジャンさんが私に手渡そうとしたときも、同じだ。私より先に受け取って、私に渡す。

なんだ、これ? 変だよね?

ラルフは、私の手のかわりをしているんだろうか? 
過保護が爆発しすぎて、介護みたいになってしまっているのだろうか?

ラルフの意図はわからないけど、とにかく恥ずかしいから、やめていただきたい!

ジャンさんも、なんとも言えない顔をしている。

それに、本屋では、すでにラルフのあとをついてくる女性もちらほら。その方たちが、ラルフの奇妙な行動に、ざわついている。

これは、止めないと!

私は小声で注意した。
「ちょっと、やめてよ、ラルフ! 私は手が使えるからね」

「そんなこと、わかってる」
と、あきれはてたような目で私を見る。

カッチーン。

変な行動を注意したら、こっちが変みたいなその態度は、なにかね?! 

「じゃあ、なんで、さっきから、そんな行動するの?」

「やりたいから、やってる。リリーは気にするな」

いやいや、気になるわ。

そこで、クスッと、ジャンさんが小さく笑い、
「ラルフ、余裕がないんだね」
と、挑戦的な口調で言った。

「あ?!」
ラルフが、一気に野獣と化す。

が、私としては、それどころではない。

今のジャンさん、普段とは、ちょっと違ってた。

もしや、これが、腹黒属性!!
完璧な好青年なのに、ちょっと、垣間見える腹黒。
すごく、いいんじゃない?!

目の前の殺伐とした空気もなんのその。私の妄想がとまらないわ!

 
 


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