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第一章

本屋ですよ

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「ええと、ジャンさん。ラルフが、本仲間のことが、どうもわかってないらしくて、こんな感じになってるけど、ごめんなさいね?」

ジャンさんは、
「気にしてないよ」
と笑った。なんて、器が大きいの!! 

ちょっと、見習いなさいよ、と、ラルフを見たら、エメラルド色の瞳がやけに光って、野性味が強くなってる。

「リリアンヌ嬢って、猛獣使いみたいだね」
と、ジャンさんが、涼し気な顔で言った。

「は? 何言ってんだ、ジャン」
と、またまた狂暴化したラルフ。確かに、猛獣に見えてきた…。
そして、同じ年なのに、ジャンさんがなんて大人に見えるんでしょう。

「あ、そうだ。さっきから気になってたんだけど、ジャンさん。もう、私たちは、本仲間でしょ。だから、リリアンヌ嬢じゃなくて、リリーって呼んでね。みんなそう呼ぶから」

すると、ジャンさんは、嬉しそうに微笑んで言った。
「わかったよ、リリー」

「おい、こら待て」
と、ラルフ。

もう、その口調、どこのならず者って感じだけど?!

「ジャンがそう呼ぶのはダメだ」

「なんでよ?」
私が聞くと、

「男だからだ。リリアンヌ嬢でもなれなれしいな。ミラベル侯爵家令嬢、あるいは、呼ばない。この二択だ」

「はあ? なにそれ? もう、また、ラルフの過保護がでちゃってるけど、気にしないでね。ジャンさん」

ジャンさんは、穏やかな笑みをうかべたまま、
「ラルフの気持ちもわかるけど、ぼくも引く気はないから」
そう言って、強いまなざしで、ラルフを見た。

「あ?! 知りあったばかりだろ?!」
ラルフの目が更にするどくなって、ジャンさんを射抜く。

ジャンさんも、強い目力で受けて立っている。
穏やかそうに見えるけれど、こんな状態のラルフに立ち向かうなんて根性がある!

が、しかし…。おかしいよね、なんなの、この不穏な状況? 
たかが、名前の呼び方だよ?

「はいはい、呼び名なんてどうでもいいから! ということで、本人が決めます。ジャンさんは、リリーと呼んでちょうだい! ラルフはこれ以上、ぐだぐだ言うなら、ミラベル侯爵令嬢呼びさせるよ? ということで、この件は終わり!」
と言いきって、とっとと、本を物色することにした。

ジャンさんのほうをむき、
「持ってきた本は、ここでは渡せないから、店をでてから渡すね」
と、言った。

すると、ジャンさんは、うなずいて、
「ぼくも、おすすめを持ってきたんだ」
と、にこっと笑った。

「え、ありがとう! どんな本だろう。楽しみ!」
新しい仲間からの本だと、新たな発見がありそうで嬉しい。

が、なぜか私の背後から、まがまがしい空気がながれてくる…。

ラルフ、私の背後にはりつかないで、本を見て! 
ここは、本屋さんだよ!


  
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