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第一章
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※リリー視点に戻ります。
結局、パーティーでは、溺愛観察どころではなかった…。
私の本仲間に入るかどうか、すったもんだし、観察するどころか、観察されまくりだった…。
ただでさえ目立つラルフに、これまた整った顔立ちのジャンさん、変すぎて怖いけど、見た目だけはかっこいいロイさん。そして、冴える美貌のアイシャが集まってたんだから、仕方がない。
第三者なら、私も興味津々で観察しただろう。が、当事者たるや、人の目が痛いだけ。疲れた…。
が、二日後。
そんな困難も乗り越え、新たに本仲間となったジャンさんに本を届けるべく、待ち合わせの本屋にきた。
時間より早めにきて、本をゆっくり物色しようと、ルンルンで本屋に入る。
そのとたん、背の高い男性が目にとびこんできた。
見慣れた漆黒の髪。よーく知っているエメラルド色の瞳。
目があった…。
「ちょっと、なんで、ラルフがいるの?!」
「本を買いにきたに決まってるだろ」
と、ラルフは言ったが…、
「いやいや、本読まないよね? ラルフは」
教科書や学術書、資料みたいなもの以外、読んでるところを見たことがないからね。
「これから読む。ということで、俺も今日から本仲間に加入する」
と、冷たい美貌で、当たり前のように言い放った。
「はああ?! なんでそうなるのよ…」
思わず、声が大きくなったが、他のお客さんに迷惑なので、あわてて声をひそめる。
「まさか、ジャンは入れて、俺は入れないなんて言わないよな?!」
と、圧をかけてくる。
切れ長の鋭い目が、更に研ぎ澄まされて、切れ味のよい刃物にみえてきた。
よく切れそうだね…。
他のお客様の邪魔にならないよう、私はラルフのうでをひっぱって、店の隅に連れて行く。
が、大きな声だと迷惑よね。
私は、伸びあがって、ラルフにぐいっと顔を近づけると、
「あのね、ジャンさんと何を競ってるかはわからないけど、まず、基本として私の貸す本を読みたいの? だって、私が好きな本って恋愛ものとかだよ? ちゃんとわかってる?」
と、目をしっかり見て、念を押した。
「…」
ラルフはなぜか返事をしない。固まったまま、ラルフの頬が、ほんのりと赤くなった。
「ちょっと、ラルフ? どうしたの?」
が、ラルフは硬直したままだ。
もしや、この暑さでやられたの?! 熱は?!
あわてて、手をのばして、ラルフの額をさわる。…普通だ。
すると、ラルフが、あわてて、
「…やめろ、リリー!」
と言って、手をはらいのけた。
「あ、良かった。動いた! 急に動かなくなったから、熱でもあるのかと思ったよ。気をつけてね」
と、気づかいをみせる、やさしい私。
なのに、ラルフは感謝するどころか、ため息をついて、
「…ほんとに、危ない生きものだな?」
と、つぶやいた。
はい? なんですって?
そこへ、
「あ、リリアンヌ嬢。ここにいたんですね」
と、声がした。
笑顔のジャンさんが立っていた。今日も穏やかな笑顔ね。癒される。
「ラルフもいたんだ? 一緒に来たの?」
と、聞かれた。
「違います」
「ああ、そうだ」
相反する答えが、かぶった。
びっくりして、ラルフのほうを見る。
え? なに、嘘ついてるの? 嘘つきに育てたおぼえはありません!
私の抗議の視線に目もくれず、
「俺も本仲間に加入することにしたから」
と、挑戦的にジャンさんに言った。
いつも冷静で、ずばぬけた頭脳なのに、ラルフの判断力がおかしい…。
どう考えても、本仲間に入ることで、すばらしい利益をうむみたいな、壮大な勘違いをしてるんじゃない?
入会金もいらないけれど、私の推す本を読める以外、何一つ特典はありませんよ、ラルフさん。
結局、パーティーでは、溺愛観察どころではなかった…。
私の本仲間に入るかどうか、すったもんだし、観察するどころか、観察されまくりだった…。
ただでさえ目立つラルフに、これまた整った顔立ちのジャンさん、変すぎて怖いけど、見た目だけはかっこいいロイさん。そして、冴える美貌のアイシャが集まってたんだから、仕方がない。
第三者なら、私も興味津々で観察しただろう。が、当事者たるや、人の目が痛いだけ。疲れた…。
が、二日後。
そんな困難も乗り越え、新たに本仲間となったジャンさんに本を届けるべく、待ち合わせの本屋にきた。
時間より早めにきて、本をゆっくり物色しようと、ルンルンで本屋に入る。
そのとたん、背の高い男性が目にとびこんできた。
見慣れた漆黒の髪。よーく知っているエメラルド色の瞳。
目があった…。
「ちょっと、なんで、ラルフがいるの?!」
「本を買いにきたに決まってるだろ」
と、ラルフは言ったが…、
「いやいや、本読まないよね? ラルフは」
教科書や学術書、資料みたいなもの以外、読んでるところを見たことがないからね。
「これから読む。ということで、俺も今日から本仲間に加入する」
と、冷たい美貌で、当たり前のように言い放った。
「はああ?! なんでそうなるのよ…」
思わず、声が大きくなったが、他のお客さんに迷惑なので、あわてて声をひそめる。
「まさか、ジャンは入れて、俺は入れないなんて言わないよな?!」
と、圧をかけてくる。
切れ長の鋭い目が、更に研ぎ澄まされて、切れ味のよい刃物にみえてきた。
よく切れそうだね…。
他のお客様の邪魔にならないよう、私はラルフのうでをひっぱって、店の隅に連れて行く。
が、大きな声だと迷惑よね。
私は、伸びあがって、ラルフにぐいっと顔を近づけると、
「あのね、ジャンさんと何を競ってるかはわからないけど、まず、基本として私の貸す本を読みたいの? だって、私が好きな本って恋愛ものとかだよ? ちゃんとわかってる?」
と、目をしっかり見て、念を押した。
「…」
ラルフはなぜか返事をしない。固まったまま、ラルフの頬が、ほんのりと赤くなった。
「ちょっと、ラルフ? どうしたの?」
が、ラルフは硬直したままだ。
もしや、この暑さでやられたの?! 熱は?!
あわてて、手をのばして、ラルフの額をさわる。…普通だ。
すると、ラルフが、あわてて、
「…やめろ、リリー!」
と言って、手をはらいのけた。
「あ、良かった。動いた! 急に動かなくなったから、熱でもあるのかと思ったよ。気をつけてね」
と、気づかいをみせる、やさしい私。
なのに、ラルフは感謝するどころか、ため息をついて、
「…ほんとに、危ない生きものだな?」
と、つぶやいた。
はい? なんですって?
そこへ、
「あ、リリアンヌ嬢。ここにいたんですね」
と、声がした。
笑顔のジャンさんが立っていた。今日も穏やかな笑顔ね。癒される。
「ラルフもいたんだ? 一緒に来たの?」
と、聞かれた。
「違います」
「ああ、そうだ」
相反する答えが、かぶった。
びっくりして、ラルフのほうを見る。
え? なに、嘘ついてるの? 嘘つきに育てたおぼえはありません!
私の抗議の視線に目もくれず、
「俺も本仲間に加入することにしたから」
と、挑戦的にジャンさんに言った。
いつも冷静で、ずばぬけた頭脳なのに、ラルフの判断力がおかしい…。
どう考えても、本仲間に入ることで、すばらしい利益をうむみたいな、壮大な勘違いをしてるんじゃない?
入会金もいらないけれど、私の推す本を読める以外、何一つ特典はありませんよ、ラルフさん。
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