(第2章連載中)だれか溺愛見せてください。ちなみに、溺愛を見たいだけで、溺愛してもらいたいわけではありません。

水無月あん

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第一章

アイシャの思い

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※今回は、アイシャの視点となります。

私は筆頭公爵家の長女。
国のため、生まれた時から、隣国ロジャン国の王子と結婚が決まっていた。
そのため、幼い頃から、勉強、勉強、勉強。
両親から甘やかされた記憶は一切ない。
出来たからと言ってほめられることもなく、何事も出来て当たり前だった。

なので、たまに見かける無邪気に遊ぶ同年代の子どもたちは、何か別の生きものみたいに思えていた。

そんな時、親戚の公爵家に親のかわりとして、使いを頼まれた。同い年のラルフの家だ。

ラルフとは年も同じで、成績もトップを争っている。
冷めきった性格まで似ていて、顔の系統まで似ているらしい。
まるで自分を見ているかのようで、なにか、もやっとすることもある。

親から言いつけられた用件も終わり、帰ろうとしたところ、公爵夫人に呼び止められた。

「アイシャちゃん、ラルフのお友達が遊びに来てるの。すごく楽しい女の子だから、一緒に遊んで行ったら?」

ラルフに友達? 私みたいな子に友達? しかも女の子? 一緒に遊ぶ? 
あのラルフが?!
まったく想像がつかない。興味をひかれ、お言葉に甘えることにした。

案内された部屋に行くと、ラルフと女の子がいた。
ふわふわとした金色の巻き毛で、愛らしい顔立ちの小さな女の子だ。

ラルフはあいかわらず冷めた顔で私を見た。
が、その小さな女の子は、くりくりとした大きな栗色の瞳で、こちらを観察している。
警戒している様子が、まるで小動物。

かわいい…。

そう、私は人間に興味はないけれど、動物は好きなのだ。
驚かさないよう、そーっと近寄っていく。

ラルフが、女の子に言った。
「親戚のアイシャ。俺と同じ年」

そして、私にむいて、
「こっちはリリアンヌ。俺らより一つ年下」
と、最低限の短すぎる紹介をする。

「リリアンヌさん、私、アイシャ。よろしくね」
と、声をかけてみる。

すると、リリアンヌは、とまどっている様子を見せた。

それを見たラルフが、
「アイシャには、リリーの素をだしても大丈夫だ」
と、話しかけている。

素って何?

すると、リリアンヌは、ふーっと息をはいて、にっこりと笑った。
「良かった! じゃあ、普通にしゃべるね。私、リリアンヌ。リリーって呼んで。
年は10歳。だけど、前世があるから、精神的には、もっと年上なの。本が大好き。よろしくー!」

小動物ではなく、未知の生物だった。

それから、リリーの前世の話、本への愛、溺愛が見たいなどの話を、ずーっと聞かされた。
まるで、妖精みたいな可憐な見た目なのに、貴族令嬢のかけらもない、不思議すぎる中身。
そのギャップに私は衝撃をうけた。

が、話を聞きながら、心から笑ったのは、いつぶりだったろう。
リリーといると、自分は人形ではなく、人間なんだと思えることができた。


※ 長くなるので、ここで一旦きります。そして、もう一回アイシャ視点が続きますが、よろしくお願いします。
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