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第一章

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「ジャン、とりあえず、リリーと一緒にいてくれてありがとう」
と、アイシャが声をかけた。

「あ、二人も知ってるの?」

アイシャはうなずいて、
「同級生だからね。留学する前までは、一緒のクラスだったしね? それで、二人で何を話してたの?」
と、聞いてきた。

「そうだ、アイシャ!! ジャンさんね、本が好きなんだよ。しかも、私たちの読んでいる本と同じ系統だよ! すごいでしょ? なので、私たちの本仲間に加入してもらうことにしました!!」

「ジャンさん、アイシャも本仲間だからね。はい、二人ともよろしくー!」
と言ってから、はっとまわりを見ると、…いろいろ見られてる。

いかん、すっかり忘れてたわ。王宮にいるってこと。
本のことになると、一気にテンションがあがってしまうのよね。
令嬢としては、あるまじき言動だったよね?
あわてて、何かしら令嬢らしさをかもしだすよう、顔の表情をあらためる。

ふと、ジャンさんと目があう。すると、ふわっと微笑まれた。
…なんか、優しい笑顔で、なごむわね。

そんな空間を邪魔するように、ラルフが冷たい口調で聞いてきた。
「その本仲間とやらは、男子禁制じゃなかったのか?」

はい? 今のところ、確かに男子はいないけど、別にそんなこと決めてない。

「ないよ。そんなルール」
と、私が答えると、

「じゃあ、今作れ」
と、氷の眼差しで命令する。

「はあ? 何言ってんの、ラルフ」

プハッと、ロイさんがふきだした。
「いやーん。ラルフくん、すごい独占欲?! おもしろーい」

この人、ほんと、懲りないな。ラルフを怒らせる天才か? 
ラルフのほうが怖くて、見れない。

が、ここに、もう一人猛者がいた。アイシャだ。
殺気だっているラルフにむかって高らかに宣言した。

「私は、ジャンの加入を歓迎するわ! ようこそ、ジャン」
そう言いながら、目はラルフを挑戦的に見据えている。

ラルフは、エメラルド色の瞳を燃え上がらせて、アイシャをにらみつけた。

なんなの、この状況? 
ただ私が好きな本を貸しているだけなのに、入会が難しそうな、たいそうなグループに変化しているよ?

「なになになに?! すごいおもしろそう。その本仲間、ぼくも入れてよ」
と、ロイさんが、アイシャとラルフの間にわりこむ。

ほんと、すごいね、ロイさん。冷え冷えとした、こんな二人の間に立つなんて!
もはや拍手を送りたい。あなたは勇者だ!!

「却下!」
アイシャが即答した。

「えー、ひどい!! リリーちゃん、お願い。入れて?」
と、今度は私の方にむいて言った瞬間、ラルフにスパーンと頭をはたかれた。

「いったーい! ひどいよ、ラルフ! ずばぬけた頭脳が傷つくじゃんか!」

「ド変態は、すっこんでろ」
ラルフ、次期公爵として、その口調はいかがなものかね?

が、きゃっと黄色い声が、まわりの令嬢からあがる。
前世でいうところの、蓼食う虫も好き好き。
なるほど、こういう口の悪いヒーローも需要ありね! 勉強になります!



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