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第一章

だまっててくれ

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ラルフは、ジャンさんを見ずに言った。
「ジャンはだまっててくれ」

怖い…。けれど、気になるので、
「二人は知りあい?」
と、聞いてみた。

ラルフは答えないけれど、ジャンさんが、
「同級生なんだよ」
と、私にむかって、穏やかに教えてくれた。

「へえ、そうなんですね?」

このまま、ラルフのほうを見ずに、ジャンさんとずっとしゃべっていようか…。
と、現実逃避してたら、
「リリー、俺、言ったよな。動くなって。どれだけ探したと思ってるんだ?」
ラルフが、私の目の前にまわりこんできた。

うしろになでつけるようにセットしていたラルフの髪が乱れ、額には汗が…。
走ってきたのかな…。

そんなラルフを見ると、胸がぎゅっとしめつけられた。

「心配かけてごめんなさい、ラルフ」

すると、ラルフは、はーっと大きなため息をついて、
「リリーに何もなくて良かった…」
と、エメラルド色の瞳を不安げにゆらした。

が、すぐさま、
「知らない人についていくなって、俺は何度も言ったよな?!」
と、お怒りモードに入った。

「でも、知らない人じゃなくて、ラルフの同級生だよね?」
なーんて、反論してみたのが良くなかった。

「それは結果そうだっただけで、リリーにとったら、今日会ったばかりの知らない人だろ?!」

ごもっとも。

「それに、俺の同級生であろうが、なかろうが、ついて行ったらダメだ。誰でも、すぐに信用するな! もっと、警戒心を持て!」

「でも、ジャンさんは、いい人だったから…」
と、ここまで言った時、ラルフから極寒の空気が流れ始める。

「ジャンさん…? へえ、短い時間に、すっかり、ジャンと仲良くなったみたいだな?」
冷え冷えとした口調に、体が凍りそうだ。

なんか、更に怒ってない? もしかして、ジャンさんと仲が悪いのかな?
それで、私が仲良くなったのが、許せないとか?

と、ここで、ジャンさんが、
「さっきも言ったように、ぼくが、リリアンヌ嬢としゃべりたくて声をかけたんだ。そのことに、君の許可がいるのか?」
と、真剣なまなざしでラルフにたずねた。

もちろん、いらないけど…。

「ああ、いるね」

ええっ?! そうなの?!

堂々とそう答えるラルフの目がますます冷たく、狂暴になっている。
いつも冷静なラルフなのに、どうしたの! まるで野生のウルフみたいだよ?!

その時、ケラケラと笑う声が聞こえてきた。

見ると、あ…、ロイさん再登場。
隣にはアイシャがいる。

「リリーちゃんがいないって、二人が大騒ぎするから、一緒にさがしてたんだけどね。もう、なに、楽しい感じになってんの?」
ロイさんが、嬉しそうに近づいてきた。






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