11 / 108
第一章
これぞ、逸材?
しおりを挟む
人影に隠れながら、ささっと歩き始めたわたし。
が、すぐに、
「すみません」
と、声がした。
私じゃないよね。誰も知らないし、しかも背景に同化しているはず!
ということで、また歩き出そうとすると、
「ミラベル侯爵家の御令嬢リリアンヌ様ですよね?」
と、はっきりした、声が聞こえた。
えっ、それって私?!
思わず、声のほうを見ると、長身の若い男性が立っていた。
亜麻色の髪に、整った顔立ち。
私を見つめる、落ち着いたこげ茶色の眼差しは、えらく真剣だ。
全く見たことがない人だけど、もしや、何か、私、しでかした?!
貴族社会には疎く、溺愛のターゲット以外覚える気もないので、侯爵令嬢とは思えないほど何も知らない。
どうしよう。知らないうちに、失礼なこと、してしまったのかな?
先手必勝で、先に謝るか?!
なんて、思っていると、
「は、…はじめまして。トルイド伯爵家のジャン・トルイドと申します!」
と、直立不動で挨拶された。えっと、声がちょっと裏返ってますが?
「リリアンヌ・ミラベルです。えっと、はじめまして…」
と、一応、挨拶をかえしてみる。
これで良いのかな?
「突然、失礼かと思ったのですが、どうしてもお話したくて声をかけさせていただきました」
「え? 私と?!」
思わず、びっくりして問い返してしまった。だって、そんなことを言われたのは初めてだもんね。
その人は、なぜか頬を赤らめて、うなずいた。
背も高く、多分、年上のようだけれど、なんか、かわいらしい人だなあ。
と、思った瞬間、私の溺愛観察スイッチが入った!
まず、真面目で、不器用そうなところが好感度が高い。
きっと、ヒロインを一途に溺愛するんだろうなあ。素敵!
しかも、この容姿! ラルフとは違うタイプの美形だ。
一体、どこに埋もれてたんだろう? というような、逸材ね。
是非、だれかを溺愛して、私に見せて!
おっといけない。本人を目の前にして、妄想がひろがり意識がとんでた。
ジャンさんは、まだ頬を赤らめたまま言った。
「実は、本屋で何度もおみかけしたことがあって…。私も本が好きなので、お話しできればと思ってたんです。あの本屋は掘り出し物があるので、ぼくもよく行くんです」
確かに! あそこは、本当、おもしろい本があるんだよね!
もう、ジャンさんに一気に親しみがわいてきた。
だって、好きな本屋が一緒だなんて、本好きとしては嬉しい。
「どんな本を読まれるんですか?」
思わず、聞いてみた。
ジャンさんは、はずかしそうにしながら言った。
「小説なら何でも読みますが、特に恋愛ものが好きです…」
耳まで赤くなっている。
ジャンさん、なんて、かわいいんでしょ!!
恋愛小説を読む、寡黙な美青年。ギャップもあって、いいわ!
ちっとも恥ずかしがることなんかないのに。
なので、
「私も恋愛もの読みます。なかでも、溺愛が好きなんです!」
と、胸をはって言ってみた。
すると、目を見開いたあと、ふわりと微笑んだ。
なんて、素敵な笑顔。
これぞヒロインに向けてほしい笑顔だわ!
が、すぐに、
「すみません」
と、声がした。
私じゃないよね。誰も知らないし、しかも背景に同化しているはず!
ということで、また歩き出そうとすると、
「ミラベル侯爵家の御令嬢リリアンヌ様ですよね?」
と、はっきりした、声が聞こえた。
えっ、それって私?!
思わず、声のほうを見ると、長身の若い男性が立っていた。
亜麻色の髪に、整った顔立ち。
私を見つめる、落ち着いたこげ茶色の眼差しは、えらく真剣だ。
全く見たことがない人だけど、もしや、何か、私、しでかした?!
貴族社会には疎く、溺愛のターゲット以外覚える気もないので、侯爵令嬢とは思えないほど何も知らない。
どうしよう。知らないうちに、失礼なこと、してしまったのかな?
先手必勝で、先に謝るか?!
なんて、思っていると、
「は、…はじめまして。トルイド伯爵家のジャン・トルイドと申します!」
と、直立不動で挨拶された。えっと、声がちょっと裏返ってますが?
「リリアンヌ・ミラベルです。えっと、はじめまして…」
と、一応、挨拶をかえしてみる。
これで良いのかな?
「突然、失礼かと思ったのですが、どうしてもお話したくて声をかけさせていただきました」
「え? 私と?!」
思わず、びっくりして問い返してしまった。だって、そんなことを言われたのは初めてだもんね。
その人は、なぜか頬を赤らめて、うなずいた。
背も高く、多分、年上のようだけれど、なんか、かわいらしい人だなあ。
と、思った瞬間、私の溺愛観察スイッチが入った!
まず、真面目で、不器用そうなところが好感度が高い。
きっと、ヒロインを一途に溺愛するんだろうなあ。素敵!
しかも、この容姿! ラルフとは違うタイプの美形だ。
一体、どこに埋もれてたんだろう? というような、逸材ね。
是非、だれかを溺愛して、私に見せて!
おっといけない。本人を目の前にして、妄想がひろがり意識がとんでた。
ジャンさんは、まだ頬を赤らめたまま言った。
「実は、本屋で何度もおみかけしたことがあって…。私も本が好きなので、お話しできればと思ってたんです。あの本屋は掘り出し物があるので、ぼくもよく行くんです」
確かに! あそこは、本当、おもしろい本があるんだよね!
もう、ジャンさんに一気に親しみがわいてきた。
だって、好きな本屋が一緒だなんて、本好きとしては嬉しい。
「どんな本を読まれるんですか?」
思わず、聞いてみた。
ジャンさんは、はずかしそうにしながら言った。
「小説なら何でも読みますが、特に恋愛ものが好きです…」
耳まで赤くなっている。
ジャンさん、なんて、かわいいんでしょ!!
恋愛小説を読む、寡黙な美青年。ギャップもあって、いいわ!
ちっとも恥ずかしがることなんかないのに。
なので、
「私も恋愛もの読みます。なかでも、溺愛が好きなんです!」
と、胸をはって言ってみた。
すると、目を見開いたあと、ふわりと微笑んだ。
なんて、素敵な笑顔。
これぞヒロインに向けてほしい笑顔だわ!
30
お気に入りに追加
722
あなたにおすすめの小説
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる