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第一章
観察開始
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「アイシャとはつもる話もあるけれど、とりあえず、溺愛観察していい?」
と、私が言うと、
「もちろん! 私も手伝うわ」
と、アイシャ。さすが、本仲間であり、そして、心強い助っ人!
というのも、アイシャは筆頭公爵家令嬢であり、未来の隣国の王子妃。
そのため、貴族の面々の情報は全て頭に入っている。
しかも、留学していても、その情報は最新だ。
なので、仲の良いと噂の婚約者などの情報を、色々教えてくれるんだよね。
でも、
「いいの? アイシャは、溺愛ものはまるで興味ないよね?」
と私が聞くと、
「まったくないわね。私の好みは悪役令嬢もの。それも復讐一択よ」
と、ニヤリ。まさに悪役令嬢の笑みだ。
アイシャは、復讐ものを読んでは、「生ぬるい、私ならこうするのに」と、楽しそうに話す内容は、いつも恐ろしくて、震撼させられる。
アイシャの未来の旦那様である王子様。どうぞ、己の行動にはお気をつけて…。
おっと、話がそれたが、まあ、手伝ってくれるなら、お願いしよう!
ということで、わくわくしながら、フロアをみまわしてみる。
と、いきなり、それらしき二人を発見!
なかなか身長差のあるカップル。特に男性のほうが、甘く女性を見つめているではないか!
私の萌えるタイプの二人ではないが、手始めに良さそうじゃない。
「ちょっと、アイシャ! ねえ、あの二人はどう?」
私が、早速、助っ人に聞いてみる。
助っ人アイシャは、即座に答えた。
「男性のほうは、マリオン伯爵家の嫡男。女性のほうは、最近、勢いのあるドメノ子爵家の令嬢。婚約の噂はあるけれど、まだ噂だけ。…まあ、溺愛ではないわね」
「えーっ! 判断がはやいっ! なんで、なんで?」
アイシャはフフっと意味ありげに笑った。
「まあ、見てて」
怪しまれないように、用意された飲み物をとりながら、目は二人を追う。
そして、飲み物を片手に、アイシャと談笑している風を装いながら、目はずっと二人を見ている。
すごい、完璧! まさに、今、私は溺愛探偵だよね!
「おや、新たな登場人物が!」
子爵令嬢の友人なのか、女性が一人、令嬢に笑いながら近寄ってきて、三人になった。
溺愛の場合、他の令嬢には目もむけないはず。
後できた女性は、二人の甘さに居づらくなって、すぐに立ち去ってしまうよね。
…って、あれ?
男性は、後で来た令嬢の方に、前のめり気味に話しかけている。すごい笑顔だ。
これは、どうみても溺愛ではない…。
「あー、残念! 違った」
と、私が言うと、アイシャは、うなずいた。
「後できた令嬢は、ムイトー家の令嬢。資産家の男爵家よ。実は、マリオン伯爵家は、事業に失敗してね。それで、息子は、裕福な家の令嬢との結婚を狙ってるんですって」
「なーんだ、貴族によくある話かあ」
と、私は、がっくりと肩をおとす。
アイシャは、
「ねえ、リリーって、自分が溺愛されたいとは思わないの?」
と、私に聞いてきた。
私は一瞬きょとんとしたが、思いっきり首を横にふった。
「いやいやいやいや、違うんだよね。だって、私の好みの溺愛は、寡黙で素敵なヒーローが、純粋で天使のように可憐なヒロインを愛するパターンだよ。私だと、おおいにずれるじゃない。そうなると、それは、もはや、物語で憧れた私の見たい溺愛ではないんだよね。まあ、それに、自分が溺愛されるなんて…うん、まったく想像できない」
すると、アイシャは、怪しげな微笑みをうかべた。
「なるほどね。寡黙で素敵なヒーローか。うんうん、まるで違うわね。…ざまあみろ」
ん? 不穏なつぶやきが聞こえたような気がするけど…、気のせいよね?
と、私が言うと、
「もちろん! 私も手伝うわ」
と、アイシャ。さすが、本仲間であり、そして、心強い助っ人!
というのも、アイシャは筆頭公爵家令嬢であり、未来の隣国の王子妃。
そのため、貴族の面々の情報は全て頭に入っている。
しかも、留学していても、その情報は最新だ。
なので、仲の良いと噂の婚約者などの情報を、色々教えてくれるんだよね。
でも、
「いいの? アイシャは、溺愛ものはまるで興味ないよね?」
と私が聞くと、
「まったくないわね。私の好みは悪役令嬢もの。それも復讐一択よ」
と、ニヤリ。まさに悪役令嬢の笑みだ。
アイシャは、復讐ものを読んでは、「生ぬるい、私ならこうするのに」と、楽しそうに話す内容は、いつも恐ろしくて、震撼させられる。
アイシャの未来の旦那様である王子様。どうぞ、己の行動にはお気をつけて…。
おっと、話がそれたが、まあ、手伝ってくれるなら、お願いしよう!
ということで、わくわくしながら、フロアをみまわしてみる。
と、いきなり、それらしき二人を発見!
なかなか身長差のあるカップル。特に男性のほうが、甘く女性を見つめているではないか!
私の萌えるタイプの二人ではないが、手始めに良さそうじゃない。
「ちょっと、アイシャ! ねえ、あの二人はどう?」
私が、早速、助っ人に聞いてみる。
助っ人アイシャは、即座に答えた。
「男性のほうは、マリオン伯爵家の嫡男。女性のほうは、最近、勢いのあるドメノ子爵家の令嬢。婚約の噂はあるけれど、まだ噂だけ。…まあ、溺愛ではないわね」
「えーっ! 判断がはやいっ! なんで、なんで?」
アイシャはフフっと意味ありげに笑った。
「まあ、見てて」
怪しまれないように、用意された飲み物をとりながら、目は二人を追う。
そして、飲み物を片手に、アイシャと談笑している風を装いながら、目はずっと二人を見ている。
すごい、完璧! まさに、今、私は溺愛探偵だよね!
「おや、新たな登場人物が!」
子爵令嬢の友人なのか、女性が一人、令嬢に笑いながら近寄ってきて、三人になった。
溺愛の場合、他の令嬢には目もむけないはず。
後できた女性は、二人の甘さに居づらくなって、すぐに立ち去ってしまうよね。
…って、あれ?
男性は、後で来た令嬢の方に、前のめり気味に話しかけている。すごい笑顔だ。
これは、どうみても溺愛ではない…。
「あー、残念! 違った」
と、私が言うと、アイシャは、うなずいた。
「後できた令嬢は、ムイトー家の令嬢。資産家の男爵家よ。実は、マリオン伯爵家は、事業に失敗してね。それで、息子は、裕福な家の令嬢との結婚を狙ってるんですって」
「なーんだ、貴族によくある話かあ」
と、私は、がっくりと肩をおとす。
アイシャは、
「ねえ、リリーって、自分が溺愛されたいとは思わないの?」
と、私に聞いてきた。
私は一瞬きょとんとしたが、思いっきり首を横にふった。
「いやいやいやいや、違うんだよね。だって、私の好みの溺愛は、寡黙で素敵なヒーローが、純粋で天使のように可憐なヒロインを愛するパターンだよ。私だと、おおいにずれるじゃない。そうなると、それは、もはや、物語で憧れた私の見たい溺愛ではないんだよね。まあ、それに、自分が溺愛されるなんて…うん、まったく想像できない」
すると、アイシャは、怪しげな微笑みをうかべた。
「なるほどね。寡黙で素敵なヒーローか。うんうん、まるで違うわね。…ざまあみろ」
ん? 不穏なつぶやきが聞こえたような気がするけど…、気のせいよね?
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