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「私もすぐに泣きますから、そのお気持ちわかります、王太子様! というか、この国にきたばかりなのに、私は、すでに、何回も号泣しています! ということで、私たちは、もう、仲間です。名づけると、そうね……号泣仲間だわ。しかも、私は涙の量では王太子様に負けません。自慢じゃないですが、滝のように流れますから。だから、それくらいの量なら、ちっとも気にすることなんてないですよ!」

共感しすぎて、思わず力いっぱい声をかけてしまった私。

王太子様が、大きなハンカチを顔にあてたまま、驚いたように私をみたあと、力が抜けたように笑った。

「泣いた時に、そんな風に言ってもらえたのは初めてだ。号泣仲間か……。すぐ泣いてしまうのが恥ずかしかったけれど、仲間がいると思うと、なんだか、心強いよ……。ありがとう、アデル王女。イーリンやデュランが、アデル王女になついた気持ちがよくわかるな」

「兄上。僕の場合はアディーになついているのではなく、ひかれてるんですよ。わが国から、ずっと帰らないでもらいたいくらいにね」

デュラン王子はそう言うと、私の方をむいて、軽くウインクをした。

「人の婚約者に何してんの? 目、つぶすよ」

すぐさま、ユーリが冷たい声で言い放った。

ちょっと、ユーリ! 
なに、物騒なことを言ってるの!?

いくら魔王といえど、外面は完璧に装えるユーリなのに、どうしたのかしら?

他国の王宮にお邪魔した状況で、しかも会ったばかりの王太子様の前で、その弟王子にむかって、口にすることじゃないもんね。

あ、そうだわ……! 
ユーリは、デュラン王子に心を許してるのね……。
面と向かって毒を吐く感じが、ユーリのお友達のラスさんへの態度に似ているもの。

そう考えると、すぐに言い争うのも、魔王同士、ライバルとして認め合っている感じがにじみでているわね……。

では、ここは、私がしっかりとユーリの気持ちを王太子様にフォローしておこう!

「王太子様、ユーリが失礼なことを言ってごめんなさい。でも、それだけ、デュラン王子にユーリが心をゆるしてるんです。ふたりは、言いたいことをいいあえる仲なんです!」

「は? 全然違うけど?」
「いや、全然違うんだけど?」

ユーリとデュラン王子の言葉が重なった。

「ほら、王太子様。ふたりは息ぴったりでしょう?」

「そうだね」

そう言って、にこやかに微笑んだ王太子様。
涙の乾いたお顔は、すっきりしているみたい。

わかるわ……。
号泣すると、すっきりするものね!

そばに控えていた執事さんみたいな方が、王太子様の涙をすいとり、役目を終えた大きなハンカチを、これまた、慣れた様子でひきとっていった。

号泣仲間として、無事、涙のゆくえを見守った私。
満足した気持ちでお茶の席につこうとしたら、「アデル」と、ユーリが声をかけてきた。

「そこの王子との間違った認識は、色々言いたいことだらけだけど、それよりも、号泣仲間って、なに? これ以上、変な仲間を作らないで」

ん? これ以上って、どういう意味? 
私に変な仲間なんかひとりもいないけど……。

疑問に思いつつ、とりあえず、思ったことをユーリに言った。

「大丈夫よ、ユーリ。ユーリは間違っても、号泣仲間には入れないから」

「いや、入りたくもないし。というか、この国にきて、2日しかたっていないのに、人やドラゴンやら、いろいろたらしこむのやめてくれる? とういうことで、号泣仲間は即、解散ね」

「え? 解散!?」

そこで、私のそばに立っていたジリムさんが、ユーリに向かって小声で言った。

「お話し中、口をはさんで申し訳ありません。ですが、少しだけ説明させてください、次期公爵様」

「なに?」

「王太子様にそのような警戒は無用です。恋愛関係において、人畜無害ですから。というか、無害すぎることが原因で、一度、婚約が平和的に解消されております。デュラン王子のように、アデル王女様をあわよくば的な目でみることなど、ありえません。純粋な号泣仲間として、アデル王女様と友好関係がきずけると思います。そういう点では、あざとい、ちびドラゴンよりも安全といえます」

ちょっと、ジリムさん? 何言ってるの……?

「それ、誓える?」

ちょっと、ユーリも! 誓うって、何、おかしなことを言ってるの!?

「はい、誓えます、次期公爵様」

え? 誓うの、ジリムさん!?

「そう、わかった。じゃあ、号泣仲間は見逃す」

「助かります、次期公爵様」

ということで、ユーリとジリムさんの間で、なんだか、よくわからない会話が成立した。 




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