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王宮へ戻ると
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その後、私たちは、王宮へ向かう馬車に乗った。
その間も、私の心の中は、リッカ先生にお会いした衝撃と、リッカ先生に気づけなかった後悔、ユーリへの嫉妬でごちゃごちゃに荒れている。
「アデル! そんなにユーリさんを見るな。減るだろう!」
と、ランディ王子が文句を言ってくる。
「だって、リッカ先生はユーリを見ると、創作意欲がわくっておっしゃったのよ! すごいし、うらやましいし、悔しいじゃない! やっぱり、顔なの? この人並み外れた美貌なの!?」
嫉妬心が漏れだした声で私が言うと、何故か、ユーリが嬉しそうに笑った。
「アデルにほめられると嬉しい」
「いや、ほめてるんじゃないわ、ユーリ! 妬んでるのよ!」
吠えるように否定する私に、かみつくように言ってきたランディ王子。
「おい、アデル! ユーリさんを妬むなんて、おこがましいぞ! ユーリさんは特別な存在なんだ! 容姿も完璧だが、もちろん、見た目だけじゃない。最高の魔力をお持ちなのに、それを自慢するでもなく、颯爽としてかっこいいだろう! この世の魅力を全部集めて固めたみたいな方なんだ。ユーリさんを見て創作意欲がわくなんて、当たり前だ。むしろ、創作意欲がわかなかったら、そんなの作家じゃない!」
馬車の中は、ユーリを絶賛するランディ王子の声が響いた。
微妙な沈黙が流れる……。
ジリムさんは資料に目をおとし、デュラン王子は窓の外を見て、イーリンさんは宙を見ている。
みんな聞かなかったことにするつもりなのかしら……と思ったら、絶賛されたユーリが沈黙をやぶった。
「ランディ、ほめてくれてありがと。そんなにほめられたら照れるね」
と、全く照れていない顔で、淡々と言ったユーリ。
そう、生まれてこのかた、ユーリは褒められ続けている。
だから、褒められることには慣れているんだと思う。
しかも、リッカ先生にまで興味を持たれるなんて、どれだけ、前世でいいことしたのよ!
あー、うらやましい!
こうして、私の心は荒れ狂ったまま、馬車は王宮に到着した。
◇ ◇ ◇
案内されたお部屋には、大きな長方形のテーブルがあり、お茶の用意が整っていた。
そこに、王太子様がおひとりで座って待っている。
私たち一行を見るなり、驚いたような顔をした王太子様。
気を取り直したように、立ち上がると、私に向かって微笑んだ。
「アデル王女。今日の観光に、弟や妹がついていったみたいで世話をかけたね」
「いえ、イーリンさんとご一緒できて、とても楽しかったです。……あ、ランディ王子も」
と、あわててランディ王子をつけたした。
幸い、ランディ王子はユーリのバッグを持ち、ユーリの背後に立ち、ユーリの背中をじっと見つめているので、聞いていないみたい。良かった……。
「そう言っていただけると、ありがたい……というか、正直言うと、今、目の前の状況に、私は動揺してしまっているのだが……」
「動揺ですか……?」
「ああ……」
そう言って、イーリンさんをまじまじと見る王太子様。
「昨日、晩餐会のあと、アデル王女のおかげで、妹が私たちに魔力のことを打ち明けてくれた時も驚いたが、妹の目をこんなにはっきり見たのは、一体、どれぐらいぶりだろうか……」
あ、そうよね。
イーリンさんはあのあと、前髪をすっぱり切ったんだものね。
しかも、昨日まではうつむいて過ごしていたし……。
今日一日で、明るく、かわいいイーリンさんを沢山見たので、昨日のイーリンさんとは別人のように思ってしまうわね……。
「アデルちゃんのおかげで、モリス色じゃない瞳もいいなと思えるようになったの。私はもう大丈夫よ、ランサム兄様」
王太子様に向かって、晴れやかな笑顔を見せたイーリンさん。
すると、いきなり、王太子様が大粒の涙を流して泣き出した。
え……?
しかも、すごい号泣しているように見えるのだけれど、誰も驚いていない。
そばにひかえる執事さんのような方は、慣れた様子で、吸い取りのよさそうな大きなハンカチをさしだしている。
「昨日、私が話をした時も散々泣いてたけど、また、泣くの?」
と、若干あきれたようにつぶやいたイーリンさん。
あ、もしや、王太子様は私と同じで、すぐに泣いてしまう方なのかしら……?
すると、涙を流したまま、王太子様が私に言った。
「アデル王女、驚かせて、すまないね……。私は昔から、すぐ泣いてしまうんだよ。涙がでそうになったら、笑い話を思い出したり、手をつねったり、色々涙をせきとめるべく努力をしてきたんだが、効果がまるでなくてね。しかも、最近は、ますます涙腺がゆるくなってしまったようで、お恥ずかしい……」
そう言って、まだ止まらない涙を大きなハンカチでふく王太子様。
王太子様のことはお優しそうな方だな、くらいにしか思っていなかったけれど、一気に親近感がわいたわ!
その間も、私の心の中は、リッカ先生にお会いした衝撃と、リッカ先生に気づけなかった後悔、ユーリへの嫉妬でごちゃごちゃに荒れている。
「アデル! そんなにユーリさんを見るな。減るだろう!」
と、ランディ王子が文句を言ってくる。
「だって、リッカ先生はユーリを見ると、創作意欲がわくっておっしゃったのよ! すごいし、うらやましいし、悔しいじゃない! やっぱり、顔なの? この人並み外れた美貌なの!?」
嫉妬心が漏れだした声で私が言うと、何故か、ユーリが嬉しそうに笑った。
「アデルにほめられると嬉しい」
「いや、ほめてるんじゃないわ、ユーリ! 妬んでるのよ!」
吠えるように否定する私に、かみつくように言ってきたランディ王子。
「おい、アデル! ユーリさんを妬むなんて、おこがましいぞ! ユーリさんは特別な存在なんだ! 容姿も完璧だが、もちろん、見た目だけじゃない。最高の魔力をお持ちなのに、それを自慢するでもなく、颯爽としてかっこいいだろう! この世の魅力を全部集めて固めたみたいな方なんだ。ユーリさんを見て創作意欲がわくなんて、当たり前だ。むしろ、創作意欲がわかなかったら、そんなの作家じゃない!」
馬車の中は、ユーリを絶賛するランディ王子の声が響いた。
微妙な沈黙が流れる……。
ジリムさんは資料に目をおとし、デュラン王子は窓の外を見て、イーリンさんは宙を見ている。
みんな聞かなかったことにするつもりなのかしら……と思ったら、絶賛されたユーリが沈黙をやぶった。
「ランディ、ほめてくれてありがと。そんなにほめられたら照れるね」
と、全く照れていない顔で、淡々と言ったユーリ。
そう、生まれてこのかた、ユーリは褒められ続けている。
だから、褒められることには慣れているんだと思う。
しかも、リッカ先生にまで興味を持たれるなんて、どれだけ、前世でいいことしたのよ!
あー、うらやましい!
こうして、私の心は荒れ狂ったまま、馬車は王宮に到着した。
◇ ◇ ◇
案内されたお部屋には、大きな長方形のテーブルがあり、お茶の用意が整っていた。
そこに、王太子様がおひとりで座って待っている。
私たち一行を見るなり、驚いたような顔をした王太子様。
気を取り直したように、立ち上がると、私に向かって微笑んだ。
「アデル王女。今日の観光に、弟や妹がついていったみたいで世話をかけたね」
「いえ、イーリンさんとご一緒できて、とても楽しかったです。……あ、ランディ王子も」
と、あわててランディ王子をつけたした。
幸い、ランディ王子はユーリのバッグを持ち、ユーリの背後に立ち、ユーリの背中をじっと見つめているので、聞いていないみたい。良かった……。
「そう言っていただけると、ありがたい……というか、正直言うと、今、目の前の状況に、私は動揺してしまっているのだが……」
「動揺ですか……?」
「ああ……」
そう言って、イーリンさんをまじまじと見る王太子様。
「昨日、晩餐会のあと、アデル王女のおかげで、妹が私たちに魔力のことを打ち明けてくれた時も驚いたが、妹の目をこんなにはっきり見たのは、一体、どれぐらいぶりだろうか……」
あ、そうよね。
イーリンさんはあのあと、前髪をすっぱり切ったんだものね。
しかも、昨日まではうつむいて過ごしていたし……。
今日一日で、明るく、かわいいイーリンさんを沢山見たので、昨日のイーリンさんとは別人のように思ってしまうわね……。
「アデルちゃんのおかげで、モリス色じゃない瞳もいいなと思えるようになったの。私はもう大丈夫よ、ランサム兄様」
王太子様に向かって、晴れやかな笑顔を見せたイーリンさん。
すると、いきなり、王太子様が大粒の涙を流して泣き出した。
え……?
しかも、すごい号泣しているように見えるのだけれど、誰も驚いていない。
そばにひかえる執事さんのような方は、慣れた様子で、吸い取りのよさそうな大きなハンカチをさしだしている。
「昨日、私が話をした時も散々泣いてたけど、また、泣くの?」
と、若干あきれたようにつぶやいたイーリンさん。
あ、もしや、王太子様は私と同じで、すぐに泣いてしまう方なのかしら……?
すると、涙を流したまま、王太子様が私に言った。
「アデル王女、驚かせて、すまないね……。私は昔から、すぐ泣いてしまうんだよ。涙がでそうになったら、笑い話を思い出したり、手をつねったり、色々涙をせきとめるべく努力をしてきたんだが、効果がまるでなくてね。しかも、最近は、ますます涙腺がゆるくなってしまったようで、お恥ずかしい……」
そう言って、まだ止まらない涙を大きなハンカチでふく王太子様。
王太子様のことはお優しそうな方だな、くらいにしか思っていなかったけれど、一気に親近感がわいたわ!
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