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価値観の違い

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「さすが、イリス。鈍ってないようだね。もし、刺激が欲しくなったら、いつでも言ってよ。仕事を用意するから」
と、ユーリ。

「ありがとうございます、公爵様。ですが、より美味しいお菓子を作ることを目指して試行錯誤する日々は、明るい刺激に満ちております。昔の仕事をすることは二度とありません」
そう言って、晴れやかに笑ったイリスさん。

なんて、かっこいいのかしら、イリスさん!

すると、ユーリには珍しく、ちょっと申し訳なさそうな顔をした。
「余計なことを言ってごめんね。イリスの作る菓子が食べられるのは楽しみだよ」

え?! ユーリが素直に謝罪の言葉を言うなんて、驚いたわ!
もしかして、雨…、いえ、ひょうでも降るんじゃないのかしら?!

私は二人をじっくりと見る。
なるほど…。イリスさんも、ユーリのお友達なのね!
二人の間からは、強い信頼関係みたいなものが伝わってくるもの。

良かったわ! ユーリに、ラスさんだけでなく、イリスさんという素敵なお友達もいたなんて!

私がにこにこしながら、イリスさんにむかって、純粋な疑問をぶつけた。
「イリスさん! ユーリとは、どうやって仲良くなったの?」

「は? また、変なことを考えてるね、アデルは…」
と、あきれたように言うユーリを無視して、期待に満ちた目でイリスさんの答えを待つ。

だって、ユーリは私同様、友達ができにくいタイプでしょ。なのに、こんな素敵なお友達ができるきっかけはなんだったのか、気になるもの。

あわよくば参考にして、私もお友達を増やしたいわ!

イリスさんは、少しとまどったように私を見たあと、優しく微笑んだ。

「いえ、仲良くというのは恐れ多いことでございます。…そうですね、初めて公爵様にお会いした時は、衝撃を受けました。絵画からぬけだしたような美少年が微笑みを浮かべているだけでも、現実感がないのに、目には全く感情がなかったので。失礼ながら人ではない生きものかと思いました」

まあ、確かに魔王だものね…。

「しかも、更に驚いたのは、その資質。まだ少年といえる年齢ながら、どこまでも冷静に判断をくだし、舌をまくような腹黒い策略もお持ちでした。そして、必要とあらば、容赦なく冷酷になれるところもございましたね」

イリスさん、わかるわ…。ユーリの色々を思い出しながら、つい、うなずいてしまう私。

だけど、待って! それだと、仲良くなりたい要素がまるでないのだけれど?
もしや、友達と思っているのはユーリのほうだけ? 
一方通行なのかしら?

心配になって、イリスさんにこそっと聞いてみた。
「あの…、それって、つまり、ユーリのことが嫌いってこと?」

イリスさんは、すぐさま首を横にふって、懐かしそうに言った。

「とんでもない! 私は、そのような公爵様を見て、大変感銘を受け、信用できるお方だと判断いたしました。その思いは今も変わることはなく、それ以降、大変尊敬しております」

…ええと、イリスさん? 全く意味がわからないわ…。
私と価値観が違いすぎるのね。



※ 更新が遅くなり、すみません!
  読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
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