134 / 158
大人気ない
しおりを挟む
ユーリは、私に見えやすいように、袖口の通信機を近づけてくれた。
小さくて、透明で、ひらべったくて丸い。
近くで見てもボタンにしかみえない。
そして、若干、うすーく点滅しているが、それも、透明の宝石が光っているような、自然な感じだ。
なんにせよ、通信機とは到底思えない。
「ねえ、アデル。触ってみて?」
と、ユーリ。
「え? 通信機を?!」
「そう。ほら、触ってよ。アデル」
と、やけに甘ったるい声をだすユーリ。
甘い言葉に気をつけろ…。
ふと頭に浮かんできたわ。
もしや、天啓かしら?!
そうね、魔王だものね。油断させておいて、触ったら爆発するとか?
そうなると、ユーリの手も吹き飛ばされるから、違うわね…。
なら、触ったら、指がしびれて動けなくなるとか?
でも、そうなると、ユーリも触れないから、一番困るのはユーリよね…。
なんて考えていたら、私の手が持ち上がる感覚がして、指先が何かに触れた。
あ、ユーリが、私の指を通信機に押し当てているわ!
「アデルが、また変な妄想してるみたいだから。ぼくが勝手にするね」
と、ユーリが言った時、指の先がひんやりしてきた。
「冷たい!」
あわてて、指を離そうとするけれど、ユーリががっしり押さえているから、離せない。
「ダメだよ、アデル。もうちょっとこのままでいて」
と、優しい声で言うユーリ。
「でも、このままひっつけてたら、私の指、凍りついて、離れなくなるのじゃない?!」
「そうだね。離れなくなったら、ずーっとぼくとひっついていないとね? それも楽しそうだよね。ねえ、アデル」
ユーリが妖しく微笑みながら、焦る私の顔をのぞきこむ。
でたわね、魔王!
「ちっとも楽しくないわよ? 私の指が通信機にひっついたままで、ユーリとずっと一緒にいないといけないのなら、ユーリだって不便よ? …あ、でも、通信機だけシャツから外してもらえれば、私の指に通信機がひっついた状態ってことよね。とういうことは、ユーリからは離れていられるし、私の指の先が通信機付きになるだけで、被害は最小限…」
「やっぱり、アデルはばかかわいいな。でも、指に通信機がつくよりも、ぼくと離れたがっているところは気に食わないよね。うーん、どうしようかな」
そう言って、ククッと笑うユーリ。
「どうしようではなくて、すぐに私の指を通信機から放しなさい!」
と、王女らしい威厳を持って、命令する。
「はあー。本当、ばかかわいくて、たまらないな」
そう言って、ユーリが私の胴にまわしたほうの腕でぎゅーとしめてきた。
もしや…絞め殺す気かしら?
私がおびえはじめた時、通信機にふれている指の先から、何かはいあがってくるような感覚がした。
「ユーリ?! 指が、変なんだけど?! もしや、虫がはってるの?!」
「虫って、ひどいよね、アデル。虫じゃなくて、ぼくの魔力だよ。通信機はぼくの魔力が込められてるから、冷たいでしょ? で、触っているうちに、魔力がアデルの中に流れ始めたの。もうちょっとして、なじんできたら、気持ちよくなってくるよ?」
意味ありげに微笑むユーリ。
確かに、触れている人差し指から、なにやら冷たいものが、流れ込んでくる。
気持ちいいというよりも、スースーして、違和感がすごいのだけれど…?
と、思ったら、そこで、ガンッと馬車が急停車した。
そして、すごい勢いで馬車の扉が開いた。
「大丈夫ですか、王女様? それと主、魔力で襲うのをやめてもらえますか? 大人気ないですよ?」
そう言ったのは、鋭い眼差しでユーリを見るラスさんだった。
小さくて、透明で、ひらべったくて丸い。
近くで見てもボタンにしかみえない。
そして、若干、うすーく点滅しているが、それも、透明の宝石が光っているような、自然な感じだ。
なんにせよ、通信機とは到底思えない。
「ねえ、アデル。触ってみて?」
と、ユーリ。
「え? 通信機を?!」
「そう。ほら、触ってよ。アデル」
と、やけに甘ったるい声をだすユーリ。
甘い言葉に気をつけろ…。
ふと頭に浮かんできたわ。
もしや、天啓かしら?!
そうね、魔王だものね。油断させておいて、触ったら爆発するとか?
そうなると、ユーリの手も吹き飛ばされるから、違うわね…。
なら、触ったら、指がしびれて動けなくなるとか?
でも、そうなると、ユーリも触れないから、一番困るのはユーリよね…。
なんて考えていたら、私の手が持ち上がる感覚がして、指先が何かに触れた。
あ、ユーリが、私の指を通信機に押し当てているわ!
「アデルが、また変な妄想してるみたいだから。ぼくが勝手にするね」
と、ユーリが言った時、指の先がひんやりしてきた。
「冷たい!」
あわてて、指を離そうとするけれど、ユーリががっしり押さえているから、離せない。
「ダメだよ、アデル。もうちょっとこのままでいて」
と、優しい声で言うユーリ。
「でも、このままひっつけてたら、私の指、凍りついて、離れなくなるのじゃない?!」
「そうだね。離れなくなったら、ずーっとぼくとひっついていないとね? それも楽しそうだよね。ねえ、アデル」
ユーリが妖しく微笑みながら、焦る私の顔をのぞきこむ。
でたわね、魔王!
「ちっとも楽しくないわよ? 私の指が通信機にひっついたままで、ユーリとずっと一緒にいないといけないのなら、ユーリだって不便よ? …あ、でも、通信機だけシャツから外してもらえれば、私の指に通信機がひっついた状態ってことよね。とういうことは、ユーリからは離れていられるし、私の指の先が通信機付きになるだけで、被害は最小限…」
「やっぱり、アデルはばかかわいいな。でも、指に通信機がつくよりも、ぼくと離れたがっているところは気に食わないよね。うーん、どうしようかな」
そう言って、ククッと笑うユーリ。
「どうしようではなくて、すぐに私の指を通信機から放しなさい!」
と、王女らしい威厳を持って、命令する。
「はあー。本当、ばかかわいくて、たまらないな」
そう言って、ユーリが私の胴にまわしたほうの腕でぎゅーとしめてきた。
もしや…絞め殺す気かしら?
私がおびえはじめた時、通信機にふれている指の先から、何かはいあがってくるような感覚がした。
「ユーリ?! 指が、変なんだけど?! もしや、虫がはってるの?!」
「虫って、ひどいよね、アデル。虫じゃなくて、ぼくの魔力だよ。通信機はぼくの魔力が込められてるから、冷たいでしょ? で、触っているうちに、魔力がアデルの中に流れ始めたの。もうちょっとして、なじんできたら、気持ちよくなってくるよ?」
意味ありげに微笑むユーリ。
確かに、触れている人差し指から、なにやら冷たいものが、流れ込んでくる。
気持ちいいというよりも、スースーして、違和感がすごいのだけれど…?
と、思ったら、そこで、ガンッと馬車が急停車した。
そして、すごい勢いで馬車の扉が開いた。
「大丈夫ですか、王女様? それと主、魔力で襲うのをやめてもらえますか? 大人気ないですよ?」
そう言ったのは、鋭い眼差しでユーリを見るラスさんだった。
6
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。
逃げて、追われて、捕まって (元悪役令嬢編)
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で貴族令嬢として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
*****ご報告****
「逃げて、追われて、捕まって」連載版については、2020年 1月28日 レジーナブックス 様より書籍化しております。
****************
サクサクと読める、5000字程度の短編を書いてみました!
なろうでも同じ話を投稿しております。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる