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おかしいわよね?

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私はあわてて答えた。
「いえ、結構。私にとっては、あなたは未来永劫ラスさんです! もう、しっかりと記憶されたので、変更不可よ!」

その時、急激な冷気があたりを支配した。体が震えだす。寒いわっ!
原因は、もちろん、ユーリから放出される冷気だ。

「俺のアデルに、なに勝手にベラベラしゃべってんの? 殺すよ?」

「長年見るだけだったので、嬉しくて思わず口がすべりました。その冷気、馬車が凍りつくのでやめてもらえますかね?」
ラスさんは、ユーリに全く動じず、淡々と言った。

まあ、珍しいわ! ユーリの威圧に怯えないなんて…。
ラスさんは、ただの部下じゃないのかしら?
そういえば、二人のやりとりには、不思議な絆を感じるものね。

あ、もしやお友達?! 常々、ユーリにはお友達がいないと思っていたけれど、いたのだわ! 
マルクしか友達のいない私が言うのもなんだけど、ユーリにも友達がいて良かった!

にこにこしながら二人を見ていると、ユーリが、はーっとため息をついた。

「アデル、なにか変なこと考えているみたいだけど、全然違うから…」

ユーリったら、照れなくてもいいのに…フフ。 

「ほんと、アデルは、バカかわいいなあ。でしょ?」
ユーリが、ラスさんに声をかける。

「ええ、ほんとに」
ラスさんが即答した。

ラスさん! そこは、否定して!

「おまえに肯定されると、なんか、むかつくな。…というか、馬車を早くだしてくれ」

「了解」
即座に答えるラスさんの顔は、また、特徴のない感じに戻っている。

ラスさんは、馬車の扉をあけながら、早口で説明した。
「急な連絡で間に合わず、俺が乗っていた馬車になります。せまいですが、二人は座れます。今、大きい馬車を手配してますので、それまで、がまんしてください」

「わかった」
簡単に返事を返すユーリ。

でも、待って…? ユーリがラスさんに連絡したのって、ついさっきよね? 
つまり、ラスさんは、ずっとこの建物の前にいたってことなの?! 

疑問うずまく私の頭の中を察したらしいユーリ。
「馬車の中で説明するよ、アデル」

そう言うと、馬車の中をじっと見た。すると、ユーリから、冷たい風がふきだし、馬車の中をかけぬけていった。

「俺の魔力で馬車の中を浄化したよ。こいつの匂いも消えてるから、アデル、安心して乗ってね」
と、ユーリ。

「こら、ユーリ! ラスさんに失礼すぎるわよ!」

「王女様。お気遣いなく。慣れてます」
感情のかけらもない口調で答えるラスさん。

慣れてるなんて、ラスさん…。色々、苦労されてるわね…。

そんなやりとりも完全無視のユーリは、私を横抱きにしたまま馬車に乗った。
そして、席の真ん中あたりに座り、私を膝の上にしっかりと抱えなおす。

ん? なに、この状況…?

つまり、馬車の座席にすわったユーリ。そのユーリの上にすわった私。
とっても、おかしな状況よね?!
そして、ものすごーく恥ずかしいのだけれど?!

「ちょっと、ユーリ! これ、おかしいでしょ?! 早く、おろして!」
そう言いながら、私は動こうとした。

でも、ユーリの腕が私の胴に、安全ベルトのように、がっしりとまわっているから、ユーリの膝からおりようにもおりられない。

ユーリは、もがく私の顔をのぞきこみ、冷たい美貌を甘くゆるませた。
「アデル、ちっともおかしくないよ? だから、このままでいようね。せまいから」

「いやいや、二人でゆったり座れる広さだから! それに、膝に乗せられるって、幼児みたいで恥ずかしいわ!」

「幼児じゃないから、こうしてるんだよ? あ、向きが嫌なら、横抱きじゃなくて、俺と向かい合うように抱きかかえるけど、もしかして、そっちがいい、アデル?」 
恐ろしいほどの妖艶な笑みを浮かべ、小首をかしげるユーリ。

ちょっと、それは、やめて! 今ですら瀕死の状態なのに、羞恥心で死んでしまうじゃない!!

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