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失礼でしょ!

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(じゃあ、かあさんがいて、あなたがとうさん…?)
ヨーカンが恥ずかしそうに虹竜を見上げた。

えっと、なんですって…? 思わず、相関図を頭に思いうかべる。

「…つまり、私の子がドラゴンで、その父親がドラゴン? …っていうことは、私の夫もドラゴンになるのかしら…?」
私がつぶやくと、デュラン王子が首をかしげた。

「小さなドラゴンが何を言っているかは、ぼくたちにはわからないから…」

ああ、そうだったわ。
虹竜は、私たちが耳から聞いて、理解できる言葉を話すけど、ヨーカンの話す内容は、私の頭の中に直接伝わってくるのよね。なぜかしら…。

私が思った疑問をすぐにくみとり、虹竜が言った。
「小さき竜は、人間の言葉を習得してはいない。虹の子に意志が伝わるのは、虹で、つながってるからだ。でも、そうだな…。これくらいの範囲なら、小さき竜と人間たちの間を一時的につなぐことも可能だ」

そう言うや否や、虹竜から、強烈な虹の光がヨーカンにむけて放たれた。

「小さき竜よ。何か、しゃべってみろ」
虹竜が言った。

(ええと、…みんな、ぼくの言ってることがわかる?)
ヨーカンの声が頭に響いてきた。今までと同じね。

と思って、まわりを見回すと、アンドレさんとブリジットさんが顔を見合わせて驚愕している。
どうやらみんなにもヨーカンの声が伝わったみたい。

「虹竜さん、一体、どうやったの?」
と、聞いてみる。

「簡単なことだ。小さき竜から放たれる虹に、わたしの虹の光を強くあてて、穴をあけた。そのため、人の言葉を話さずとも、小さき竜の思いが近くに漏れるようにした。まあ、穴がふさがれるまでの一時的な間だがな」

…まったく、意味がわからないのだけれど?

すると、デュラン王子がうなずいた。
「アディーや虹竜とだけつながっていたラインを、スピーカーのようにしたんだね」

「なるほど。ほんとに、虹竜はすごいな…」
アンドレさんが尊敬のまなざしで、虹竜を見上げる。

…うーん、やっぱり、全然わからないわね。でも、まあ、いいわ。
だって、ヨーカンが私だけでなく、他のみんなとも意思疎通ができるのは素敵なことだもの。

「良かったわね、ヨーカン!」
にっこりわらって、ヨーカンに声をかけると、ヨーカンが嬉しそうに飛び跳ねた。

(すごいね、ぼくのとーさんは! かーさんもそう思うでしょ?)

「小さき竜よ。虹の子も、わたしの子のようなものだ。つまり、おまえたちは姉弟になるのかな」

(え? じゃあ、かあさんは、ぼくのねえさんってこと?!)

だんだん、わからなくなってきたわ…。
つまり、私にはドラゴンの弟と父ができたってことでいいのかしら?

混乱していると、背後から冷え冷えとした気が流れてきた。

「なに、寝ぼけたこと言ってんの。アデルとドラゴンが家族なわけないだろ? バカなの?」
そう言い放ったのは、もちろん、ユーリ様だ。

「バカッって…。虹竜になんてことを?! どれだけ長く生きてるかわからないほど、尊い存在なんですよ!!」
アンドレさんが、悲壮な声でユーリに抗議した。

「ふーん。長く生きてても、バカはバカなんだね?」

シーン…。

アンドレさんの顔が怒りで真っ赤になった。
そして、言った本人は、涼しい顔をしている。

「こらっ、ユーリっ! なんてこと言うの! 失礼でしょ!」
私がみんなの気持ちを代弁すると、ユーリが美貌の顔をかたむけた。

「だって、本当のことでしょ?」

ほんと、やめてよね…。

アンドレさんの頭から、比喩ではなく湯気が見えた気がする。

そこで、デュラン王子が、虹竜に歩み寄った。
「あらためて、尊き存在の虹竜様にご挨拶申し上げます。わたしは、この国の王子で、デュランと申します。虹の子、アデルさんと家族になりたいと思っておりますので、末永く、よろしくお願いいたします。お父様」
そう言って、華やかな笑みを浮かべた。

…はああ?! ちょっと、デュラン王子、何言ってるの?!

「ブッ、兄貴、何言ってんだ…」
私の気持ちを代弁したのは、まさかのランディ王子。

「虹竜の家族がいる王子妃…。いいな…。いっそのこと、デューを王にして、アデル様に王妃になってもらうか…」
ジリムさんがぶつぶつ言いながら、欲にまみれた笑みを浮かべる。

その時、私の背後からは、暴風がふきはじめた。
一気に真冬の寒さになり、雪がちらつきはじめる。

寒いわ…!

ちょっと、ユーリさん! 
後ろから私をだきしめて、風から守ってくれているみたいだけれど、それより、その風をとめてくれるかしら?!
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