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ちがう!
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「ちがう!」
ドラゴンの声が響いた。
え?! 何がちがうの?
「これはうまくはない! 味がちがう! 同じ花ではない!」
えええ? 一緒だよね? さっき取って来たモリスだよね?
思わず隣のアンドレさんを見た。
アンドレさんは不思議そうな顔をしながら答えた。
「いえ、同じモリスです。さっき、二袋取ってきていただいたうちの一袋です」
そうだよね…。
あ、そうか! たまたま美味しくない花を口にしたのかも?
「ドラゴンさん。同じ花なんだって。だから、もう少し食べてみて」
私がそう言うと、ドラゴンは用心深く口にいれた。
ゆっくり飲み込み、そして言った。
「本来、この花はこんな味だ。薬と思えば食べられるが、うまくはない。だが、さっき食べた花は、食べたことのないほどうまかった。比べてしまうと食べたくない」
え、そうなの?! じゃあ、たまたま美味しい花がまじっていたのかしら?
その時、背後から声がした。
「アデルちゃん! さっきみたいに、アデルちゃんが手にとって、ドラゴンさんにモリスをあげてみて!」
イーリンさんの声だ。
「え? 私が?!」
「そう、やってみて!」
イーリンさんが私にむかって、力強く言った。
私は、花を持って、ドラゴンの口に持っていく。が、ドラゴンは口をあけない。
「ドラゴンさん! さっきの味がするかもしれません! ひとくち、食べてみて!」
イーリンさんが必死な声で叫ぶ。
その熱意に負けたのか、ドラゴンが、ゆっくりと口をひらいた。
私はすかさず花を放り込む。
パクッ
「…う」
う?
「うまいっ! さっきの味だ!」
え? そうなの?!
「もっとくれ」
ドラゴンが私を見て言った。
あわてて、ドラゴンの口の中に放り込む。
ドラゴンはバクバクと美味しそうに食べていく。
「つまり、アデル王女様が触ったモリスが、ドラゴンにとって、おいしくなるということでしょうか…?」
アンドレさんが、不思議そうにつぶやいた。
「私が触ったらって? なんでかしら?」
と、アンドレさんに聞いたが、アンドレさんも、うーんとうなっているだけだ。
「よそみをせずに、もっと花をくれ」
と、ドラゴンに注意された。
あわてて、花をつかんで、口に放り込む。が、食べるスピードが速くて間に合わない。
「とりあえず、残りのモリスをアデル王女様が、一旦、全部手に抱えて、ドラゴンの目の前に置きなおしたら、どうでしょう。アデル王女様がさわったことになるので、ドラゴン自身で食べるのではないでしょうか?」
と、アンドレさんが自信なさそうに提案してきた。
あ、そういえば、さっきもそうしたわよね?
「そうね。やってみる」
私は、のこりの花全部を抱えて、ドラゴンの目の前に置きなおした。
すると、すぐに、ドラゴンは、花をがつがつと食べ始め、あっという間に食べ終わった。
「うまかった!」
そう言った瞬間、轟音がした。
「なに、今の?! なんの音?!」
アンドレさんが、興奮した様子で答えた。
「ドラゴンのげっぷです! まさか、伝説のげっぷが聞けるなんて感動です!」
「げっぷ…なの?」
「はい、まぎれもないげっぷです! あー、録音したかった!」
アンドレさんは頬を紅潮させて、身をよじって喜んでいる。
ふと、ブリジットさんの方をみると、ブリジットさんも小躍りして喜んでいた。
ドラゴンとはいえ、げっぷなんだけど? そんなに嬉しいものかしら?
ドラゴンの声が響いた。
え?! 何がちがうの?
「これはうまくはない! 味がちがう! 同じ花ではない!」
えええ? 一緒だよね? さっき取って来たモリスだよね?
思わず隣のアンドレさんを見た。
アンドレさんは不思議そうな顔をしながら答えた。
「いえ、同じモリスです。さっき、二袋取ってきていただいたうちの一袋です」
そうだよね…。
あ、そうか! たまたま美味しくない花を口にしたのかも?
「ドラゴンさん。同じ花なんだって。だから、もう少し食べてみて」
私がそう言うと、ドラゴンは用心深く口にいれた。
ゆっくり飲み込み、そして言った。
「本来、この花はこんな味だ。薬と思えば食べられるが、うまくはない。だが、さっき食べた花は、食べたことのないほどうまかった。比べてしまうと食べたくない」
え、そうなの?! じゃあ、たまたま美味しい花がまじっていたのかしら?
その時、背後から声がした。
「アデルちゃん! さっきみたいに、アデルちゃんが手にとって、ドラゴンさんにモリスをあげてみて!」
イーリンさんの声だ。
「え? 私が?!」
「そう、やってみて!」
イーリンさんが私にむかって、力強く言った。
私は、花を持って、ドラゴンの口に持っていく。が、ドラゴンは口をあけない。
「ドラゴンさん! さっきの味がするかもしれません! ひとくち、食べてみて!」
イーリンさんが必死な声で叫ぶ。
その熱意に負けたのか、ドラゴンが、ゆっくりと口をひらいた。
私はすかさず花を放り込む。
パクッ
「…う」
う?
「うまいっ! さっきの味だ!」
え? そうなの?!
「もっとくれ」
ドラゴンが私を見て言った。
あわてて、ドラゴンの口の中に放り込む。
ドラゴンはバクバクと美味しそうに食べていく。
「つまり、アデル王女様が触ったモリスが、ドラゴンにとって、おいしくなるということでしょうか…?」
アンドレさんが、不思議そうにつぶやいた。
「私が触ったらって? なんでかしら?」
と、アンドレさんに聞いたが、アンドレさんも、うーんとうなっているだけだ。
「よそみをせずに、もっと花をくれ」
と、ドラゴンに注意された。
あわてて、花をつかんで、口に放り込む。が、食べるスピードが速くて間に合わない。
「とりあえず、残りのモリスをアデル王女様が、一旦、全部手に抱えて、ドラゴンの目の前に置きなおしたら、どうでしょう。アデル王女様がさわったことになるので、ドラゴン自身で食べるのではないでしょうか?」
と、アンドレさんが自信なさそうに提案してきた。
あ、そういえば、さっきもそうしたわよね?
「そうね。やってみる」
私は、のこりの花全部を抱えて、ドラゴンの目の前に置きなおした。
すると、すぐに、ドラゴンは、花をがつがつと食べ始め、あっという間に食べ終わった。
「うまかった!」
そう言った瞬間、轟音がした。
「なに、今の?! なんの音?!」
アンドレさんが、興奮した様子で答えた。
「ドラゴンのげっぷです! まさか、伝説のげっぷが聞けるなんて感動です!」
「げっぷ…なの?」
「はい、まぎれもないげっぷです! あー、録音したかった!」
アンドレさんは頬を紅潮させて、身をよじって喜んでいる。
ふと、ブリジットさんの方をみると、ブリジットさんも小躍りして喜んでいた。
ドラゴンとはいえ、げっぷなんだけど? そんなに嬉しいものかしら?
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