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見えた!
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ドラゴンの鳴き声を聞いて、イーリンさんが、
「見えたわ!」
と、叫んだ。
「何が見えたの?!」
と、私が聞く。
「さっきのドラゴンの鳴き声から、ぼやっと紫色っぽい花が見えたの。多分、モリスだわ!」
「こっちも見えた」
と、デュラン王子も言った。
「遠いから、ぼんやりだけど、翼のあたりが炎症をおこしてる。そこが痛いんだと思う」
「もしかして、このドラゴン、モリスを欲しがってるのかしら? モリスって、なにか効能があるの?」
私が聞くと、
「栄養はあるが、薬草のような効能は、…うーん、聞いたことがないな」
と、デュラン王子は考えながら答えた。
ずっと皆の前に立ち、ドラゴンを注視していたユーリが、ドラゴンから目を離して、私の方を向いた。
「どうしたの、ユーリ?」
私が聞くと、
「もう火を吐くことはないと思う。こちらに向けていた殺気も消えたし。弱ってるみたいだね」
と、ユーリが言った。
「それと、ランディ、もういいよ! 水は使わなくて済みそうだ」
ユーリが、ランディ王子に声をかける。
「ユーリさん、ぼく、ちゃんと出来てましたか?」
期待に目を輝かせて問うランディ王子。
「そうだね…。ホースというより、糸ぐらいの細さで、湖と俺をつなげてたかな? でも、初めてなのに、よくやったね、ランディ」
と、ユーリが優雅に微笑むと、ランディ王子の顔が一気に赤くなった。
そして、その真っ赤な顔のまま、何故か、私のほうを向いて、
「うらやましいだろ」
と、自慢げな顔をする。
いやいや、全然。
ランディ王子って、最初会った時は、遅い反抗期かと思ったけど、今や小学生くらいだよね? どんどん、精神年齢が若返ってるけれど、大丈夫なのかしら?
そこで、アンドレさんが、はっとしたように言った。
「あ、思い出した! このドラゴンを保護したのは、モリスの花が群生している場所の近くでした。もしかして、そこへ向かってたのかな? この状況では飛べなかっただろうし…」
「ちょっと、ヨーカンに聞いてみます。ヨーカン!」
(なあに、かあさん)
「ヨーカンは、モリスって、食べるのかしら?」
(モリスってなに?)
「小さい紫色の花よ」
(うん、あれね。食べるよ。どっか、体が痛い時に食べたくなるから食べる)
「そうなの?! 体が痛い時に食べるって言ってるわ!」
「これは興味深いですね。早速、モリスを採ってきて、食べさせてみます」
と、ブリジットさん。
すると、ジリムさんが、
「実は、この後、まさにモリスが、沢山咲いているところに、アデル王女様をお連れしようと思っていたんです」
と、言った。
「え! そうだったの?! じゃあ、このドラゴンに、私たちでモリスを沢山採ってきましょうよ!」
私が言うと、ブリジットさんが、首をぶんぶんと横に振って、
「いえいえ、そんなことを皆様にお願いするわけにはいきません! その後のご予定もおありでしょうし申し訳ないです。私が行きます」
と、遠慮する。
「ジリムさん、他の観光はまた今度でいいので、モリスを採って、ここへ、また帰ってきてもいいですか? ドラゴンの様子も気になるし」
と、私が聞くと、
「ええ。ここから近い場所ですし、大丈夫ですよ。アデル王女様の観光ですので、アデル王女様の希望にあわせます」
と、ジリムさんが微笑んだ。
「アディーは優しいね」
と、デュラン王子が甘ったるく微笑む。
「だから、人の婚約者を、なれなれしく呼ばないでくれる?」
と、ユーリがデュラン王子を鋭い視線でにらむ。
「こら、二人ともやめて。そんなことより、ドラゴンでしょ?!」
と、私が注意すると、
「違うよ。ぼくにとっては、ドラゴンなんてどうでもいい。そんなことより、アデルが、他の男から慣れ慣れしく呼ばれているほうが気になるし、嫌だ。許せない。凍らせたい」
と、ユーリが、一気にまくしたてた。
最後が物騒なんで、やめてくださいね、ユーリ。
「見えたわ!」
と、叫んだ。
「何が見えたの?!」
と、私が聞く。
「さっきのドラゴンの鳴き声から、ぼやっと紫色っぽい花が見えたの。多分、モリスだわ!」
「こっちも見えた」
と、デュラン王子も言った。
「遠いから、ぼんやりだけど、翼のあたりが炎症をおこしてる。そこが痛いんだと思う」
「もしかして、このドラゴン、モリスを欲しがってるのかしら? モリスって、なにか効能があるの?」
私が聞くと、
「栄養はあるが、薬草のような効能は、…うーん、聞いたことがないな」
と、デュラン王子は考えながら答えた。
ずっと皆の前に立ち、ドラゴンを注視していたユーリが、ドラゴンから目を離して、私の方を向いた。
「どうしたの、ユーリ?」
私が聞くと、
「もう火を吐くことはないと思う。こちらに向けていた殺気も消えたし。弱ってるみたいだね」
と、ユーリが言った。
「それと、ランディ、もういいよ! 水は使わなくて済みそうだ」
ユーリが、ランディ王子に声をかける。
「ユーリさん、ぼく、ちゃんと出来てましたか?」
期待に目を輝かせて問うランディ王子。
「そうだね…。ホースというより、糸ぐらいの細さで、湖と俺をつなげてたかな? でも、初めてなのに、よくやったね、ランディ」
と、ユーリが優雅に微笑むと、ランディ王子の顔が一気に赤くなった。
そして、その真っ赤な顔のまま、何故か、私のほうを向いて、
「うらやましいだろ」
と、自慢げな顔をする。
いやいや、全然。
ランディ王子って、最初会った時は、遅い反抗期かと思ったけど、今や小学生くらいだよね? どんどん、精神年齢が若返ってるけれど、大丈夫なのかしら?
そこで、アンドレさんが、はっとしたように言った。
「あ、思い出した! このドラゴンを保護したのは、モリスの花が群生している場所の近くでした。もしかして、そこへ向かってたのかな? この状況では飛べなかっただろうし…」
「ちょっと、ヨーカンに聞いてみます。ヨーカン!」
(なあに、かあさん)
「ヨーカンは、モリスって、食べるのかしら?」
(モリスってなに?)
「小さい紫色の花よ」
(うん、あれね。食べるよ。どっか、体が痛い時に食べたくなるから食べる)
「そうなの?! 体が痛い時に食べるって言ってるわ!」
「これは興味深いですね。早速、モリスを採ってきて、食べさせてみます」
と、ブリジットさん。
すると、ジリムさんが、
「実は、この後、まさにモリスが、沢山咲いているところに、アデル王女様をお連れしようと思っていたんです」
と、言った。
「え! そうだったの?! じゃあ、このドラゴンに、私たちでモリスを沢山採ってきましょうよ!」
私が言うと、ブリジットさんが、首をぶんぶんと横に振って、
「いえいえ、そんなことを皆様にお願いするわけにはいきません! その後のご予定もおありでしょうし申し訳ないです。私が行きます」
と、遠慮する。
「ジリムさん、他の観光はまた今度でいいので、モリスを採って、ここへ、また帰ってきてもいいですか? ドラゴンの様子も気になるし」
と、私が聞くと、
「ええ。ここから近い場所ですし、大丈夫ですよ。アデル王女様の観光ですので、アデル王女様の希望にあわせます」
と、ジリムさんが微笑んだ。
「アディーは優しいね」
と、デュラン王子が甘ったるく微笑む。
「だから、人の婚約者を、なれなれしく呼ばないでくれる?」
と、ユーリがデュラン王子を鋭い視線でにらむ。
「こら、二人ともやめて。そんなことより、ドラゴンでしょ?!」
と、私が注意すると、
「違うよ。ぼくにとっては、ドラゴンなんてどうでもいい。そんなことより、アデルが、他の男から慣れ慣れしく呼ばれているほうが気になるし、嫌だ。許せない。凍らせたい」
と、ユーリが、一気にまくしたてた。
最後が物騒なんで、やめてくださいね、ユーリ。
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