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イーリンさんが、はっとしたように小さく声をあげた。
「やっぱり、虹色が鍵なんじゃない? 晩餐会でアデルちゃんの言葉に見えた虹色と、精霊のいる泉の虹色、そして、このドラゴンの声の虹色。あ、翼の裏も虹色だわ…。やっぱり、何か、つながっているのかな?」

「なるほど、アデル王女様と泉とドラゴンか…」
と、冷静に言うジリムさん。

なんか、不思議な組み合わせだけど、私以外に人間がいないわね…。

そこで、またもや、イーリンさんが、 
「ドラゴンからでた虹色の橋みたいなものが、ユーリさんの出す渦みたいなものに弾き飛ばされてるわ!! だから、ドラゴンは、アデルちゃんに近寄れないみたいよ!」
と驚いたように言った。

思わずユーリを見ると、
「ドラゴンだろうが、なんだろうが、アデルに近づこうとするなら、排除するだけだけど?」
と、美しく微笑む。

「あいかわらず、心がせまいね? アディーも窮屈で、嫌なんじゃない? ぼくなら、束縛なんかしないよ。アディーには自由にしてもらう。何をしたって応援するよ?」
と、デュラン王子が、甘ったるく微笑んできた。

途端に、冷気が漂いはじめる。

そして、その冷気製造者であるユーリが、
「そもそも、赤の他人は、束縛することすらできないもんね。妄想が激しいな。ねえ、アデル」
と、寒々とした声で、デュラン王子に言ったあと、私に向かって妖し気に笑いかけた。

またもや、この二人に何かはじまったわね…。

「本当に妄想かな? アディーとこの国の縁は、もはや運命だよね? だから、この国に住むことを考えてみて。ね、アデル」
と、デュラン王子が、私にとろけるように笑いかけてきた。

「それこそ、妄想だね。アデルのこの国への旅行は、これが最初で最後になるかな。まあ、どうしても、アデルが新婚旅行で来たいっていうのなら、考えてもいいけど?」
と、ユーリが、色気あふれる笑みを浮かべた。

一体、この人たちは、ドラゴンを前にして、何を言い争ってるの! 
はあー、頭にきた!

「ちょっと、二人とも! ドラゴンの前だよ! 失礼でしょ?!
奇跡のような存在を前に、もっと、神聖になって、もっと、ありがたがって!
もっと、ドラゴンに注目して!」
と、私が叱ると、二人とも黙った。

小さくパチパチパチと拍手をしているのは、ジリムさんだ。

私は、ブリジットさんの方を向いて、
「あの、私が、そーっと、ドラゴンに近づいていってもいいですか? 私に何か用がありそうな気がするんですよね」
と、聞いてみる。

ブリジットさんが困ったような顔をした。
「ドラゴンに、人間のほうから近づくことは、緊急事態以外は禁止しているんです。ですが、うーん…」

「ダメだよ、アデル。危ないでしょ? それに、あのドラゴンの目つき、気に入らないんだよね」
と言って、私を後ろからふわりとだきしめる。

「こら、ユーリ! ちょっと、何するの!! 離しなさい!」
私は後ろをむいて、ユーリを見上げて訴える。

何気に、最近、ユーリが接触してくる気がするんだけど…。
やはり、他国へ来て、情緒不安定なのかしら?
あ、もしや、ホームシック?! ブルージュ国に来て、まだ二日目だけど、時間は関係ないのかもね。
ユーリだけ、先に帰したほうがいいのかしら?

なんてことを考えていたら、
「嫌だね。あのドラゴン、アデルを狙ってるから」
と、ユーリは、ドラゴンをにらみつけて、更に両腕をぎゅーっときつくして、後ろから私をだきしめてきた。

やっぱり、寂しいのね…。
でも、寂しくても、ホームシックでも、恥ずかしいから、やめて!

「こら、離れなさい、ユーリ!」
と、私が、言ったのとほぼ同時に、

「こら、離れろ、アデル!」
と、ランディ王子が言った。

は? 離れるのはユーリでしょ? 何言ってるの?

と、思って、ランディ王子を見ると、
「ユーリさんに、後ろから抱きしめられるんじゃない! うらやましい!」
と、言葉を投げられた。

ランディ王子…。色々おかしすぎて、びっくりなんだけど…。

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