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ドラゴン保護センター

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幸運のマカロンを胸につけたとたん、元気になったランディ王子は、意気揚々と馬車から降りた。

わたしも続いて降りようとしたら、ユーリにとめられて、
「さっき泉に着いた時のこと、もう忘れたの?」
と、顔をのぞきこまれた。

「あの時と同じように再現しようか?」
と、顔を近づけて、耳元にささやいた。

いえ、結構です! 思い出しました! 顔が真っ赤になったことも!

「どうぞ、ユーリ、先降りて! それで、ユーリの手をとって、私が降りればいいんだよね?!」
あわてた私が、叫ぶように言うと、ユーリは、
「残念。忘れてたなら、もっと、刺激を強くしてもいいかな、って思ってたのに」
と、色気をふりまきながら、微笑んだ。

もっと、刺激って。怖いことを言うわね…。

たかが、馬車を降りるだけで、私の体温を一気にあげようとするなんて、さすが魔王。恐るべし…。 
はあ、なんか、降りるまでに疲労が…。

馬車を降りると、イーリンさんが、私のそばによってきて、
「ねえ、ランディ兄様の胸についてる、ピンクのものって何? 確か、アデルちゃんのポシェットについてたよね?」
と、聞いてきた。

確かに、気になるよね?

「あれは、マカロンだよ。私の甘いものが好きな友達、あ、ユーリの弟で、私の親友でマルクって言うんだけど、マルクがくれたの。幸運をもたらしてくれるんだって。
私、マカロンは大好きだし、かわいいから気に入ってたんだけど、…まあ、色々あって、あのマカロンに、ユーリの魔力をいれて、ランディ王子にあげたの」
私が説明すると、イーリンさんが、うなずいた。

「ランディ兄様にとったら、すでに幸運がもたらされてるよね…。
ほら、ランディ兄様が、今、ユーリさんになにか話しかけたでしょ? ランディ兄様の言葉から、あのマカロンのピンク色が噴出してるのが見える…」
と、イーリンさんが、言った。

ピンク色が噴出? うーん、不思議な感じだね?

「まあ、ランディ王子が幸せそうでよかったわ。マカロンを手放したかいがあったというものよ」
と、私は答えた。

それより、今は、マカロンよりドラゴンよ!
なんか、ワクワクしてきたわ!

目の前には、大きな建物がそびえたっていた。近くに家はなく、背後には山。
入り口にくると、メガネをかけた40代くらいの女性と、若い男性が待っていた。

そして、わたしたちを見ると、まず、女性の方が、
「ようこそ、いらっしゃいました。私が、センター長のブリジット・モナミと申します」
と、ご挨拶してくれた。

グリーンのシンプルなワンピースを着て、茶色い髪の毛を、結いあげている。
全くドラゴンと結びつかないくらい、やわらかい印象のかわいらしい女性だ。

そして、次に、もう一人の若い男性が、
「私は、センター長の補助をしています、アンドレ・グリットと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
と、少し緊張したような顔で挨拶をしてくれた。

こちらの男性も、ドラゴンのイメージとは全く結びつかない。
細身で、金髪の巻き毛がふわふわして、グリーンの大きな目。
かわいらしい印象の美形で、ドラゴンに会ったら、倒れてしまいそうな印象なんだけど…。

変なイメージで、ごめんなさい。

でも、勝手に、ドラゴンに関わる人は、ドラゴンを御せるほど強そうな人だと思っていたので、不思議な感じだわ…。

そして、ジリムさんが、私たちを順に紹介してくれた。

「アデル王女様は、ドラゴンは初めて見られるのですか?」
と、ブリジットさんが聞いてきた。

私は、
「そうなんです! お恥ずかしいことに、さっきまで、まさか、ドラゴンが実在しているとは思わなかったので、衝撃をうけていますす! が、私は本がすきなので、物語でしか知らなかったけれど、ドラゴンには憧れてるんです! だから、今、本物に会えると思うと、非常にドキドキしています! 早く、会ってみたいです!」
と、前のめりで、しかも、すごい勢いで答えてしまった。

王女らしさはかけらもないけど、お許し下さい。興奮してますので!

笑い上戸のデュラン王子が、プハッとふきだした。

そして、ランディ王子が、「変な奴」と、つぶやいたのが、聞こえる。
マカロンを胸につけている君には言われたくないよね?
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