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なんて勇気!
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いくらランディ王子本人が気に入っていようとも、このままでは移動できないため、氷の柱を撤去することに。
「まあ、氷だから、待てば溶けてくるけどね?」
と、ユーリ。
あの量の氷の柱が溶けてきたら、全身びしょぬれになるけど?
ということで、ユーリに外してもらおうとしたら、ランディ王子が、
「せっかく、ユーリさんの魔力でつけてもらったのに、もったいない! もうちょっと、こうしてたい!」
などと言いだした。
自分の今の姿を、ちゃんと認識してるのかしら?
決して、喜ぶような状態ではないんだけど?
と思ったら、ユーリが、ランディ王子のそばによると、頭の上に手をかざす。
その瞬間、バキッと音がして、氷の柱が折れた。
が、ランディ王子の頭の上に、氷の柱が15センチくらいは残っている。
「ほら、これでいいでしょ? 残りは、溶けるまで、そのままにしといたら?」
「うわあ! やっぱり、ユーリさんって、すごいね!」
と、あこがれの眼差しで、ユーリを見ている。
いやいや、変でしょ?
というのも、15センチだけ残された氷の柱が、ツノに見える。
これは、前世で言うところの、まさに鬼だよね?
しかも、15センチとはいえ、溶けてくると、頭がぬれるよ?
と思ったけど、頬を染め、ユーリをきらきらした目で見ているランディ王子には、何も言えないわ…。
「では、興味深い体験もできたことですし、次の場所に移動しましょう」
と、冷静に仕切るジリムさん。
こうして、私たちは馬車へ戻り始めた。
ユーリの横には、ユーリのバッグを持って、ツノがはえた小鬼がつき従っている。
ユーリの魔王感が増したわね…。
感慨深く見ていると、イーリンさんが、横から話しかけてきた。
「あのね、ランディ兄様が、ユーリさんに話しかけるたび、花が舞い散ってるの。
でもね、ユーリさんの言葉って、いいか悪いかわからないけど、すごい渦をまいていて、ランディ兄様から飛んできた花を、ガンガンはじきとばしてるんだよね…」
え? そんなものが見えてたの?!
「なんか、すごい攻防だね…」
と、私が言うと、
「でもね、アデルちゃんと話すときだけ、ユーリさんの言葉の渦が逆にまわりはじめるの。アデルちゃんからでるものを全部、自分のほうへ、すいこんでいくんだよ」
「ええ?! そうなの?! なんか、それも、怖いような…」
「まあ、すごい愛情なんだろうね…。でも、負けない! 目指すは、アデルちゃんと姉妹になること。そして、一緒に住むことだから。この国を絶対好きになってもらうからね」
イーリンさんの迫力に押されて、
「ハハハ…」
と、笑って受け流す私。
いきなり、私の前を歩いていたユーリが、ふりかえった。
「ねえ、アデル。なーんか、縁起でもないことが聞こえた気がしたんだけど?」
と、冷気をにじませた声で言った。
きらびやかな美貌はまぶしいが、目が笑ってない。怖い…。
「…何も言ってないよ? 気のせいじゃない?」
と、平気な顔をして答える。
さっきの内容がばれたら、イーリンさんが危険だもの! 守らないと!
私は、横を歩いている、イーリンさんの前に飛び出て、ユーリとの間に入る。
不自然だけど、仕方がない。
「ふーん、それならいいけど。でも、アデルとぼくを引き離そうとする、ろくでもない考えは、すぐさま、捨てたほうがいいよね」
と、私を通り越して、私の後ろに、氷のような視線をなげた。
イーリンさん! 私のうしろに隠れてて!
心の中で、念じていると、さっと横に気配があった。
イーリンさん! なんで、横にでてきてるの!! ダメじゃない、隠れてて!
が、イーリンさんは、ユーリのほうをまっすぐに見ている。
そして、言った。
「アデルちゃん自身が希望したら、とめられないですよね?
私は、この国を好きになってもらって、この国に住んでほしいなって考えてるんです! だから、がんばりますね」
と、にっこりと微笑んだ。
イーリンさん、なんて勇気なの!
ジリムさんが、
「短い間に、変われば変わるもんだな…。ランディ王子もだけど、変わりすぎだろ…」
と、つぶやいた。
そして、琥珀色の瞳を、きらきら輝かせながら、はっきりと主張する姿は、まさにリッカ先生の小説のヒロイン。
こんな時だけど、萌えてしまう…。
それにひきかえ、凍てつくほどの冷気を放ちだしたユーリ。隣で、小鬼が歓喜の表情でふるえてる。
それなのに、おびえることなく、堂々と受けて立つ、イーリンさん。
ヒロイン VS 魔王。どうなる?
「まあ、氷だから、待てば溶けてくるけどね?」
と、ユーリ。
あの量の氷の柱が溶けてきたら、全身びしょぬれになるけど?
ということで、ユーリに外してもらおうとしたら、ランディ王子が、
「せっかく、ユーリさんの魔力でつけてもらったのに、もったいない! もうちょっと、こうしてたい!」
などと言いだした。
自分の今の姿を、ちゃんと認識してるのかしら?
決して、喜ぶような状態ではないんだけど?
と思ったら、ユーリが、ランディ王子のそばによると、頭の上に手をかざす。
その瞬間、バキッと音がして、氷の柱が折れた。
が、ランディ王子の頭の上に、氷の柱が15センチくらいは残っている。
「ほら、これでいいでしょ? 残りは、溶けるまで、そのままにしといたら?」
「うわあ! やっぱり、ユーリさんって、すごいね!」
と、あこがれの眼差しで、ユーリを見ている。
いやいや、変でしょ?
というのも、15センチだけ残された氷の柱が、ツノに見える。
これは、前世で言うところの、まさに鬼だよね?
しかも、15センチとはいえ、溶けてくると、頭がぬれるよ?
と思ったけど、頬を染め、ユーリをきらきらした目で見ているランディ王子には、何も言えないわ…。
「では、興味深い体験もできたことですし、次の場所に移動しましょう」
と、冷静に仕切るジリムさん。
こうして、私たちは馬車へ戻り始めた。
ユーリの横には、ユーリのバッグを持って、ツノがはえた小鬼がつき従っている。
ユーリの魔王感が増したわね…。
感慨深く見ていると、イーリンさんが、横から話しかけてきた。
「あのね、ランディ兄様が、ユーリさんに話しかけるたび、花が舞い散ってるの。
でもね、ユーリさんの言葉って、いいか悪いかわからないけど、すごい渦をまいていて、ランディ兄様から飛んできた花を、ガンガンはじきとばしてるんだよね…」
え? そんなものが見えてたの?!
「なんか、すごい攻防だね…」
と、私が言うと、
「でもね、アデルちゃんと話すときだけ、ユーリさんの言葉の渦が逆にまわりはじめるの。アデルちゃんからでるものを全部、自分のほうへ、すいこんでいくんだよ」
「ええ?! そうなの?! なんか、それも、怖いような…」
「まあ、すごい愛情なんだろうね…。でも、負けない! 目指すは、アデルちゃんと姉妹になること。そして、一緒に住むことだから。この国を絶対好きになってもらうからね」
イーリンさんの迫力に押されて、
「ハハハ…」
と、笑って受け流す私。
いきなり、私の前を歩いていたユーリが、ふりかえった。
「ねえ、アデル。なーんか、縁起でもないことが聞こえた気がしたんだけど?」
と、冷気をにじませた声で言った。
きらびやかな美貌はまぶしいが、目が笑ってない。怖い…。
「…何も言ってないよ? 気のせいじゃない?」
と、平気な顔をして答える。
さっきの内容がばれたら、イーリンさんが危険だもの! 守らないと!
私は、横を歩いている、イーリンさんの前に飛び出て、ユーリとの間に入る。
不自然だけど、仕方がない。
「ふーん、それならいいけど。でも、アデルとぼくを引き離そうとする、ろくでもない考えは、すぐさま、捨てたほうがいいよね」
と、私を通り越して、私の後ろに、氷のような視線をなげた。
イーリンさん! 私のうしろに隠れてて!
心の中で、念じていると、さっと横に気配があった。
イーリンさん! なんで、横にでてきてるの!! ダメじゃない、隠れてて!
が、イーリンさんは、ユーリのほうをまっすぐに見ている。
そして、言った。
「アデルちゃん自身が希望したら、とめられないですよね?
私は、この国を好きになってもらって、この国に住んでほしいなって考えてるんです! だから、がんばりますね」
と、にっこりと微笑んだ。
イーリンさん、なんて勇気なの!
ジリムさんが、
「短い間に、変われば変わるもんだな…。ランディ王子もだけど、変わりすぎだろ…」
と、つぶやいた。
そして、琥珀色の瞳を、きらきら輝かせながら、はっきりと主張する姿は、まさにリッカ先生の小説のヒロイン。
こんな時だけど、萌えてしまう…。
それにひきかえ、凍てつくほどの冷気を放ちだしたユーリ。隣で、小鬼が歓喜の表情でふるえてる。
それなのに、おびえることなく、堂々と受けて立つ、イーリンさん。
ヒロイン VS 魔王。どうなる?
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