上 下
90 / 158

朝から

しおりを挟む
人口密度が高くなった部屋。
自己主張の激しい人たちばかりで、収集がつかなくなり、そのまま解散した。

初日から濃い一日で、疲れた。

が、すっきり眠ったら、元気いっぱい二日目の朝をむかえました!
はあ、お天気も良くて、窓から見える、朝の景色が最高!

アンもやってきて、髪を結ってくれ、身支度を手伝ってくれた。

あとは、朝食を待つのみ。しかも、朝食は、お部屋に運んできてくれるらしい。
なんという快適さ!

これで、好きな本があれば、まさに天国。 
今日は、絶対、デュラン王子の図書室に行って、本を借りてこよう!

そう思った時、部屋をノックする音が。
あ、朝食だ! おなかすいた! 

アンが、ドアを開けに行く。

「アディー、おはよう」
そう言いながら、カートを押して入ってきたのは、まさかのデュラン王子だ。

え?! なにしてるの?!

「アディーと一緒に朝食を食べようと思ってね」

いやいや、それは、メイドさんのお仕事でしょ? 
…と、思ったら、ちゃんと後ろで控えていてたメイドさんたちが、テキパキと朝食のセッティングをしはじめた。

そこへ、また、ノックの音。アンがでむかえにいく。

「おはよう、アデル。よく眠れた?」
と、言いながら入ってきたのは、もう一人の魔王、ユーリ。

朝から、魔王同士が、私の部屋でかちあった…。

「ねえ、なんで、朝から、人の婚約者の部屋にいるの? 常識がないんじゃない?」
と、ユーリ。

一気にご機嫌ナナメになった、魔王様。

「せっかくだし、朝食を一緒に食べたいと思ってね。君こそ、まだ、部屋でゆっくりしてたら? 朝食も、君の部屋に運ぶように言ってあるしね」
そう言って、デュラン王子が不敵な笑みをうかべた。

「アデルの部屋は、ぼくの部屋みたいなもんだから。朝食もここで食べるのは当然。そっちこそ、邪魔しないで?」
と、ユーリは、デュラン王子を、冷え冷えとした目で見据える。

さわやかな朝とはかけはなれた、殺伐とした空気が流れる。

あのー、朝からやめて?! 
大人しく朝食を食べられないなら、二人とも追い出すよ!

と、そこへ、またノックの音。

次はだれかしら? 
アンがドアのところに急いで行く。忙しいわね、アン…。

「おはよう、アデルちゃん」
そう言って、入ってきたのは、なんと、イーリンさんだった。

…が、見た瞬間、思わず息をのんだ。

デュラン王子は固まっている。

はっとして、
「イーリンさん、髪、どうしたの? …すごい、…かわいいっ!!」
私は声をあげて、思わず身もだえた。

というのも、長かった前髪が、眉毛の上で、パッツンと切りそろえられている。
きれいな琥珀色の瞳が、はっきりと見えるようになっていた。

「昨日、あれからね、おもいきって、私の魔力のことを、家族に全部話したの。
どんな反応されるか、ドキドキしたけど、デュラン兄様の言うように、皆、驚いてはいたけど、優しく受け入れてくれた。そしたら、すごく安心してしまって…。
もう、今までのこと、すっきり手放そうと思って。それで、いつも髪を整えてくれるメイドに頼んで、前髪を切ってもらったの。早く、アデルちゃんに見せたくて来ちゃった」
と、頬を染め、恥ずかしそうに話してくれる、イーリンさん。

見違えしまうほど、明るい表情だ。本来は、こっちが本当のイーリンさんだったんだろうね。
長い間、一人で大変だったね…。

でも、良かった! 
そして、本当に、かわいすぎる!

私は、
「すごい似合ってるよ、イーリンさん!」
そう言って、笑いかけると、

「ありがとう。アデルちゃんのおかげで、視界がひらけたわ!」
と、楽しそうに笑い返してくれた。

私は首を横にふり、
「イーリンさん自身が、自分で変わったんだよ! 私はただのきっかけ。ねえ、イーリンさんは、朝食、食べた?」
と聞く。

「いえ、まだ。アデルちゃんに、すぐに見せたかったから、食べずに来ちゃった」
と、イーリンさん。

「じゃあ、一緒に食べよう!」
と、テーブルのほうに連れて行く。

デュラン王子が、
「イーリンが、一番、歓迎されてるね? 婚約者が来た時は、普通だったのにね」
と言って、クスっと笑った。

うん、ひとこと多いタイプだね。

そして、もちろん、だまってないユーリが、すぐさま受けてたつ。

「俺とアデルは、いちいち言葉にしなくても、心でつながってるからいいの。そんなこともわからないなんて、かわいそうだよね?」

あのね、二人とも本当に追い出すよ!

手際のよいメイドさんたちのおかげで、大きなテーブルに、どんどん追加されていく人の分も含め、四人分の豪華な朝食が用意された。

うわあ、美味しそう! 

と思ったら、また、ノックの音。
今度はだれ…? 早く食べたいんだけど…。 

そして、アンがでむかえたのは、ジリムさんだった。

ジリムさんは、私たちを見た瞬間、目をむいたが、すぐに、淡々として、
「アデル王女様、おはようございます。お疲れはとれましたでしょうか?」
と、聞いてきた。

「ええ、ぐっすり眠れて、すっきりです。…って、ジリムさん。もしや眠れなかったの?」

だって、目の下のクマが、また濃くなっているような気がするんだけど…。

すると、ジリムさんは、
「それが自由すぎるせいで、仕事がたまっていましてね。なのに、まさか、その当人が仕事もせずに、朝から、アデル王女様の部屋にやってきて、のんきに朝食を食べようとしているなんて驚きです」
そう一気に言うと、デュラン王子をにらみつけた。

「でも、ほら。朝食ぐらい、好きな人と食べたいじゃない?」
と、デュラン王子が言うと、

「好きな人? 人の婚約者に、なにふざけたこと言ってんの?」
と、冷気を放ちだすユーリ。

ちょっと、やめて! 
私の朝食を邪魔するなら、魔王たちといえど、許しません!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!

高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

処理中です...