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朝から
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人口密度が高くなった部屋。
自己主張の激しい人たちばかりで、収集がつかなくなり、そのまま解散した。
初日から濃い一日で、疲れた。
が、すっきり眠ったら、元気いっぱい二日目の朝をむかえました!
はあ、お天気も良くて、窓から見える、朝の景色が最高!
アンもやってきて、髪を結ってくれ、身支度を手伝ってくれた。
あとは、朝食を待つのみ。しかも、朝食は、お部屋に運んできてくれるらしい。
なんという快適さ!
これで、好きな本があれば、まさに天国。
今日は、絶対、デュラン王子の図書室に行って、本を借りてこよう!
そう思った時、部屋をノックする音が。
あ、朝食だ! おなかすいた!
アンが、ドアを開けに行く。
「アディー、おはよう」
そう言いながら、カートを押して入ってきたのは、まさかのデュラン王子だ。
え?! なにしてるの?!
「アディーと一緒に朝食を食べようと思ってね」
いやいや、それは、メイドさんのお仕事でしょ?
…と、思ったら、ちゃんと後ろで控えていてたメイドさんたちが、テキパキと朝食のセッティングをしはじめた。
そこへ、また、ノックの音。アンがでむかえにいく。
「おはよう、アデル。よく眠れた?」
と、言いながら入ってきたのは、もう一人の魔王、ユーリ。
朝から、魔王同士が、私の部屋でかちあった…。
「ねえ、なんで、朝から、人の婚約者の部屋にいるの? 常識がないんじゃない?」
と、ユーリ。
一気にご機嫌ナナメになった、魔王様。
「せっかくだし、朝食を一緒に食べたいと思ってね。君こそ、まだ、部屋でゆっくりしてたら? 朝食も、君の部屋に運ぶように言ってあるしね」
そう言って、デュラン王子が不敵な笑みをうかべた。
「アデルの部屋は、ぼくの部屋みたいなもんだから。朝食もここで食べるのは当然。そっちこそ、邪魔しないで?」
と、ユーリは、デュラン王子を、冷え冷えとした目で見据える。
さわやかな朝とはかけはなれた、殺伐とした空気が流れる。
あのー、朝からやめて?!
大人しく朝食を食べられないなら、二人とも追い出すよ!
と、そこへ、またノックの音。
次はだれかしら?
アンがドアのところに急いで行く。忙しいわね、アン…。
「おはよう、アデルちゃん」
そう言って、入ってきたのは、なんと、イーリンさんだった。
…が、見た瞬間、思わず息をのんだ。
デュラン王子は固まっている。
はっとして、
「イーリンさん、髪、どうしたの? …すごい、…かわいいっ!!」
私は声をあげて、思わず身もだえた。
というのも、長かった前髪が、眉毛の上で、パッツンと切りそろえられている。
きれいな琥珀色の瞳が、はっきりと見えるようになっていた。
「昨日、あれからね、おもいきって、私の魔力のことを、家族に全部話したの。
どんな反応されるか、ドキドキしたけど、デュラン兄様の言うように、皆、驚いてはいたけど、優しく受け入れてくれた。そしたら、すごく安心してしまって…。
もう、今までのこと、すっきり手放そうと思って。それで、いつも髪を整えてくれるメイドに頼んで、前髪を切ってもらったの。早く、アデルちゃんに見せたくて来ちゃった」
と、頬を染め、恥ずかしそうに話してくれる、イーリンさん。
見違えしまうほど、明るい表情だ。本来は、こっちが本当のイーリンさんだったんだろうね。
長い間、一人で大変だったね…。
でも、良かった!
そして、本当に、かわいすぎる!
私は、
「すごい似合ってるよ、イーリンさん!」
そう言って、笑いかけると、
「ありがとう。アデルちゃんのおかげで、視界がひらけたわ!」
と、楽しそうに笑い返してくれた。
私は首を横にふり、
「イーリンさん自身が、自分で変わったんだよ! 私はただのきっかけ。ねえ、イーリンさんは、朝食、食べた?」
と聞く。
「いえ、まだ。アデルちゃんに、すぐに見せたかったから、食べずに来ちゃった」
と、イーリンさん。
「じゃあ、一緒に食べよう!」
と、テーブルのほうに連れて行く。
デュラン王子が、
「イーリンが、一番、歓迎されてるね? 婚約者が来た時は、普通だったのにね」
と言って、クスっと笑った。
うん、ひとこと多いタイプだね。
そして、もちろん、だまってないユーリが、すぐさま受けてたつ。
「俺とアデルは、いちいち言葉にしなくても、心でつながってるからいいの。そんなこともわからないなんて、かわいそうだよね?」
あのね、二人とも本当に追い出すよ!
手際のよいメイドさんたちのおかげで、大きなテーブルに、どんどん追加されていく人の分も含め、四人分の豪華な朝食が用意された。
うわあ、美味しそう!
と思ったら、また、ノックの音。
今度はだれ…? 早く食べたいんだけど…。
そして、アンがでむかえたのは、ジリムさんだった。
ジリムさんは、私たちを見た瞬間、目をむいたが、すぐに、淡々として、
「アデル王女様、おはようございます。お疲れはとれましたでしょうか?」
と、聞いてきた。
「ええ、ぐっすり眠れて、すっきりです。…って、ジリムさん。もしや眠れなかったの?」
だって、目の下のクマが、また濃くなっているような気がするんだけど…。
すると、ジリムさんは、
「それが自由すぎるせいで、仕事がたまっていましてね。なのに、まさか、その当人が仕事もせずに、朝から、アデル王女様の部屋にやってきて、のんきに朝食を食べようとしているなんて驚きです」
そう一気に言うと、デュラン王子をにらみつけた。
「でも、ほら。朝食ぐらい、好きな人と食べたいじゃない?」
と、デュラン王子が言うと、
「好きな人? 人の婚約者に、なにふざけたこと言ってんの?」
と、冷気を放ちだすユーリ。
ちょっと、やめて!
私の朝食を邪魔するなら、魔王たちといえど、許しません!
自己主張の激しい人たちばかりで、収集がつかなくなり、そのまま解散した。
初日から濃い一日で、疲れた。
が、すっきり眠ったら、元気いっぱい二日目の朝をむかえました!
はあ、お天気も良くて、窓から見える、朝の景色が最高!
アンもやってきて、髪を結ってくれ、身支度を手伝ってくれた。
あとは、朝食を待つのみ。しかも、朝食は、お部屋に運んできてくれるらしい。
なんという快適さ!
これで、好きな本があれば、まさに天国。
今日は、絶対、デュラン王子の図書室に行って、本を借りてこよう!
そう思った時、部屋をノックする音が。
あ、朝食だ! おなかすいた!
アンが、ドアを開けに行く。
「アディー、おはよう」
そう言いながら、カートを押して入ってきたのは、まさかのデュラン王子だ。
え?! なにしてるの?!
「アディーと一緒に朝食を食べようと思ってね」
いやいや、それは、メイドさんのお仕事でしょ?
…と、思ったら、ちゃんと後ろで控えていてたメイドさんたちが、テキパキと朝食のセッティングをしはじめた。
そこへ、また、ノックの音。アンがでむかえにいく。
「おはよう、アデル。よく眠れた?」
と、言いながら入ってきたのは、もう一人の魔王、ユーリ。
朝から、魔王同士が、私の部屋でかちあった…。
「ねえ、なんで、朝から、人の婚約者の部屋にいるの? 常識がないんじゃない?」
と、ユーリ。
一気にご機嫌ナナメになった、魔王様。
「せっかくだし、朝食を一緒に食べたいと思ってね。君こそ、まだ、部屋でゆっくりしてたら? 朝食も、君の部屋に運ぶように言ってあるしね」
そう言って、デュラン王子が不敵な笑みをうかべた。
「アデルの部屋は、ぼくの部屋みたいなもんだから。朝食もここで食べるのは当然。そっちこそ、邪魔しないで?」
と、ユーリは、デュラン王子を、冷え冷えとした目で見据える。
さわやかな朝とはかけはなれた、殺伐とした空気が流れる。
あのー、朝からやめて?!
大人しく朝食を食べられないなら、二人とも追い出すよ!
と、そこへ、またノックの音。
次はだれかしら?
アンがドアのところに急いで行く。忙しいわね、アン…。
「おはよう、アデルちゃん」
そう言って、入ってきたのは、なんと、イーリンさんだった。
…が、見た瞬間、思わず息をのんだ。
デュラン王子は固まっている。
はっとして、
「イーリンさん、髪、どうしたの? …すごい、…かわいいっ!!」
私は声をあげて、思わず身もだえた。
というのも、長かった前髪が、眉毛の上で、パッツンと切りそろえられている。
きれいな琥珀色の瞳が、はっきりと見えるようになっていた。
「昨日、あれからね、おもいきって、私の魔力のことを、家族に全部話したの。
どんな反応されるか、ドキドキしたけど、デュラン兄様の言うように、皆、驚いてはいたけど、優しく受け入れてくれた。そしたら、すごく安心してしまって…。
もう、今までのこと、すっきり手放そうと思って。それで、いつも髪を整えてくれるメイドに頼んで、前髪を切ってもらったの。早く、アデルちゃんに見せたくて来ちゃった」
と、頬を染め、恥ずかしそうに話してくれる、イーリンさん。
見違えしまうほど、明るい表情だ。本来は、こっちが本当のイーリンさんだったんだろうね。
長い間、一人で大変だったね…。
でも、良かった!
そして、本当に、かわいすぎる!
私は、
「すごい似合ってるよ、イーリンさん!」
そう言って、笑いかけると、
「ありがとう。アデルちゃんのおかげで、視界がひらけたわ!」
と、楽しそうに笑い返してくれた。
私は首を横にふり、
「イーリンさん自身が、自分で変わったんだよ! 私はただのきっかけ。ねえ、イーリンさんは、朝食、食べた?」
と聞く。
「いえ、まだ。アデルちゃんに、すぐに見せたかったから、食べずに来ちゃった」
と、イーリンさん。
「じゃあ、一緒に食べよう!」
と、テーブルのほうに連れて行く。
デュラン王子が、
「イーリンが、一番、歓迎されてるね? 婚約者が来た時は、普通だったのにね」
と言って、クスっと笑った。
うん、ひとこと多いタイプだね。
そして、もちろん、だまってないユーリが、すぐさま受けてたつ。
「俺とアデルは、いちいち言葉にしなくても、心でつながってるからいいの。そんなこともわからないなんて、かわいそうだよね?」
あのね、二人とも本当に追い出すよ!
手際のよいメイドさんたちのおかげで、大きなテーブルに、どんどん追加されていく人の分も含め、四人分の豪華な朝食が用意された。
うわあ、美味しそう!
と思ったら、また、ノックの音。
今度はだれ…? 早く食べたいんだけど…。
そして、アンがでむかえたのは、ジリムさんだった。
ジリムさんは、私たちを見た瞬間、目をむいたが、すぐに、淡々として、
「アデル王女様、おはようございます。お疲れはとれましたでしょうか?」
と、聞いてきた。
「ええ、ぐっすり眠れて、すっきりです。…って、ジリムさん。もしや眠れなかったの?」
だって、目の下のクマが、また濃くなっているような気がするんだけど…。
すると、ジリムさんは、
「それが自由すぎるせいで、仕事がたまっていましてね。なのに、まさか、その当人が仕事もせずに、朝から、アデル王女様の部屋にやってきて、のんきに朝食を食べようとしているなんて驚きです」
そう一気に言うと、デュラン王子をにらみつけた。
「でも、ほら。朝食ぐらい、好きな人と食べたいじゃない?」
と、デュラン王子が言うと、
「好きな人? 人の婚約者に、なにふざけたこと言ってんの?」
と、冷気を放ちだすユーリ。
ちょっと、やめて!
私の朝食を邪魔するなら、魔王たちといえど、許しません!
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