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なんで、ユーリが決めるの?
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ユーリが、淹れてくれたお茶を飲む。
「とっても、美味しいよ! すごいね、ユーリ」
と、私が感心して言うと、ユーリは嬉しそうに微笑んだ。
「良かった。結婚したら、ずーっと一緒だから、毎日、ぼくがアデルのために、お茶を淹れようかな。
アデルは、ぼくの淹れたお茶しか飲めないの。いいと思わない?」
楽しそうに話すユーリ。青い瞳が、きらきらと輝いて、きれいだわ。
…が、ちょっと待って?
「ん? つまり、私は、ユーリ以外の人が淹れたお茶が飲めないってこと?」
「もちろんだよ。素敵でしょ」
ユーリは、当たり前のように言って、爽やかに微笑んだ。
いやいやいや、それって、おかしいわよね?!
素敵じゃないわよね?!
それどころか、怖いわよね?!
美味しいお茶で、ほだされてはいけないわ。気をしっかりもって、私!
やはり、ユーリとの結婚は、絶対阻止しないと!
だって、お茶もユーリからしか飲めなくなるなんて、ユーリが留守なら、私、ひからびるじゃない?!
命の危機じゃない?!
ほんとに、魔王の考えることは理解できないわ…。
「ところで、アン」
いきなり、ユーリに話しかけられて、見てるほうが驚くほどに、びくっとしたアン。
やっぱり、さっきの話を聞いて、アンも怖がってたのね…。
「…なにかご用でしょうか? ユーリ様…」
と、答えながらも、目をそらしたままだ。
が、ユーリは気にすることもなく、
「アデルの今日の晩餐会用のドレスを見せて」
と、言った。
アンは、すぐにドレスを二着持ってきて、
「どちらも、アデル様にお似合いになられるので、アデル様ご本人に選んでいただこうと思いまして…」
そう言いながら、ユーリに見やすいようにして、衣装かけに掛けた。
ひとつは、繊細で美しいレースがふんだんに使われた、大人びた雰囲気のライラック色のドレス。
もうひとつは、パールが刺繍された、甘くて、かわいらしい雰囲気の水色のドレスだ。
ユーリは、二着のドレスを見て、即座に、
「水色のドレスにして」
そう言った。
即決すぎるんだけど…。
「でも、なんでユーリが決めるの? いつも、私の衣装に何も言わないじゃない? どうしたの?」
と、私が聞くと、
「今回の訪問は、ぼくが責任者だから。アデルのすみずみまで、全部を管理させてもらうからね」
そう言うと、ユーリは満足げに微笑んだ。
その言い方、なんだか、ぞわっとするんだけど…。
私のすみずみまで全部を管理?
表現がおかしすぎて、文の意味がわからないわね。
ほら、アンの顔を見て! 表情がぬけおちてるわ…。
ま、怖いから、深く考えないようにして、
「なんで、水色のドレスがいいの?」
と、ユーリに聞いてみた。
「この国で、アデルの初のお披露目だから、色々、有象無象に、わからせとかないとね」
ん? わからせる? 何を?
ユーリの言ってることが、まるで、わからない…。
まずは、私にわからせてほしいわね。
「あ、それと、ぼくのプレゼントしたチョーカーは持ってきたよね?」
と、アンの方を見て聞いた。
ああ、あの首輪ね。
持ってきてるわよ。ユーリに言われたから。
アンは、ユーリにむかって、すごい勢いでうなずいている。
完全に、おびえてるわね…。
「今日は、それをつけてね」
と、ユーリ。
ここで、アンが、おびえながらも、
「一応、このドレスにあわせて作った、パールのネックレスも持ってきていますが…」
と、言いかけて、ひっと、息をのんだ。
ユーリが、それはそれは美しい笑みを浮かべたからだ。
こういう時、怖いわよね…。
わかるわよ、アン。
大丈夫、私、こんな状態のユーリに慣れてるから。守るわね、アン!
「ちょっと、ユーリ! アンを威圧したらダメでしょ!」
と、私は、ユーリの前に立ちはだかった。
すると、ユーリは、にっこりと微笑んで言った。
「やだなあ、アデル。威圧なんかしてないよ。ただ、ぼくの贈った最高級のアクセサリーより、パールのネックレスがいいなんて、どの口が言ってるんだろうと思ってね?」
怖い、怖い、怖いよ!
アンが震えてる。
ごめんね、アン。これが通常運転なの。魔王だから。
「そんなこと、誰も言ってないでしょ? わかった、ユーリのチョーカーをつけるから」
はっきり言って、私としては、チョーカーだろうが、首輪だろうが、アクセサリーはなんでもいい。
とにかく、この場を無事におさめることのほうが大事だ。
「あ、それとね。そのライラック色のドレスは、今回の旅では絶対に着ないでね」
と、ユーリが付けくわえてきた。
「えっと、なんで?! 私、このドレス、好きなんだけど。あ、もしかして、あんまり似合ってないかしら?」
と、私が聞くと、
「まさか、ちがうよ! 似合いすぎてて、他のやつに見せたくないくらいだよ。でも、そんなことじゃなくて、今回は、その色がダメ」
と、ユーリが答えた。
色? このきれいなライラック色が? どこがダメなんだろう…。
「なんで、この色がダメなの? 理由がわからないんだけど」
と、納得がいかない私は、さらに、ユーリに聞いてみる。
「だって、そのライラックの色、誰かの瞳の色に似てるよね。アデルが、そのドレスを着て、あの王子と並んだりしたら、思わず、魔力が暴走して、この王宮を破壊してしまうかもしれないでしょ? だから、着ないでね?」
そう言って、甘やかに微笑んだ。
いやいやいや、甘く微笑まれてもね…。
表情と会話の中身が、まるであってないんですが!
ドレスの色は、確かに、デュラン王子の瞳の色と、同じ系統の色ではあるけれど、でも、王宮を破壊?
どうして、ドレスの話なのに、そんな物騒な話になるの?!
「とっても、美味しいよ! すごいね、ユーリ」
と、私が感心して言うと、ユーリは嬉しそうに微笑んだ。
「良かった。結婚したら、ずーっと一緒だから、毎日、ぼくがアデルのために、お茶を淹れようかな。
アデルは、ぼくの淹れたお茶しか飲めないの。いいと思わない?」
楽しそうに話すユーリ。青い瞳が、きらきらと輝いて、きれいだわ。
…が、ちょっと待って?
「ん? つまり、私は、ユーリ以外の人が淹れたお茶が飲めないってこと?」
「もちろんだよ。素敵でしょ」
ユーリは、当たり前のように言って、爽やかに微笑んだ。
いやいやいや、それって、おかしいわよね?!
素敵じゃないわよね?!
それどころか、怖いわよね?!
美味しいお茶で、ほだされてはいけないわ。気をしっかりもって、私!
やはり、ユーリとの結婚は、絶対阻止しないと!
だって、お茶もユーリからしか飲めなくなるなんて、ユーリが留守なら、私、ひからびるじゃない?!
命の危機じゃない?!
ほんとに、魔王の考えることは理解できないわ…。
「ところで、アン」
いきなり、ユーリに話しかけられて、見てるほうが驚くほどに、びくっとしたアン。
やっぱり、さっきの話を聞いて、アンも怖がってたのね…。
「…なにかご用でしょうか? ユーリ様…」
と、答えながらも、目をそらしたままだ。
が、ユーリは気にすることもなく、
「アデルの今日の晩餐会用のドレスを見せて」
と、言った。
アンは、すぐにドレスを二着持ってきて、
「どちらも、アデル様にお似合いになられるので、アデル様ご本人に選んでいただこうと思いまして…」
そう言いながら、ユーリに見やすいようにして、衣装かけに掛けた。
ひとつは、繊細で美しいレースがふんだんに使われた、大人びた雰囲気のライラック色のドレス。
もうひとつは、パールが刺繍された、甘くて、かわいらしい雰囲気の水色のドレスだ。
ユーリは、二着のドレスを見て、即座に、
「水色のドレスにして」
そう言った。
即決すぎるんだけど…。
「でも、なんでユーリが決めるの? いつも、私の衣装に何も言わないじゃない? どうしたの?」
と、私が聞くと、
「今回の訪問は、ぼくが責任者だから。アデルのすみずみまで、全部を管理させてもらうからね」
そう言うと、ユーリは満足げに微笑んだ。
その言い方、なんだか、ぞわっとするんだけど…。
私のすみずみまで全部を管理?
表現がおかしすぎて、文の意味がわからないわね。
ほら、アンの顔を見て! 表情がぬけおちてるわ…。
ま、怖いから、深く考えないようにして、
「なんで、水色のドレスがいいの?」
と、ユーリに聞いてみた。
「この国で、アデルの初のお披露目だから、色々、有象無象に、わからせとかないとね」
ん? わからせる? 何を?
ユーリの言ってることが、まるで、わからない…。
まずは、私にわからせてほしいわね。
「あ、それと、ぼくのプレゼントしたチョーカーは持ってきたよね?」
と、アンの方を見て聞いた。
ああ、あの首輪ね。
持ってきてるわよ。ユーリに言われたから。
アンは、ユーリにむかって、すごい勢いでうなずいている。
完全に、おびえてるわね…。
「今日は、それをつけてね」
と、ユーリ。
ここで、アンが、おびえながらも、
「一応、このドレスにあわせて作った、パールのネックレスも持ってきていますが…」
と、言いかけて、ひっと、息をのんだ。
ユーリが、それはそれは美しい笑みを浮かべたからだ。
こういう時、怖いわよね…。
わかるわよ、アン。
大丈夫、私、こんな状態のユーリに慣れてるから。守るわね、アン!
「ちょっと、ユーリ! アンを威圧したらダメでしょ!」
と、私は、ユーリの前に立ちはだかった。
すると、ユーリは、にっこりと微笑んで言った。
「やだなあ、アデル。威圧なんかしてないよ。ただ、ぼくの贈った最高級のアクセサリーより、パールのネックレスがいいなんて、どの口が言ってるんだろうと思ってね?」
怖い、怖い、怖いよ!
アンが震えてる。
ごめんね、アン。これが通常運転なの。魔王だから。
「そんなこと、誰も言ってないでしょ? わかった、ユーリのチョーカーをつけるから」
はっきり言って、私としては、チョーカーだろうが、首輪だろうが、アクセサリーはなんでもいい。
とにかく、この場を無事におさめることのほうが大事だ。
「あ、それとね。そのライラック色のドレスは、今回の旅では絶対に着ないでね」
と、ユーリが付けくわえてきた。
「えっと、なんで?! 私、このドレス、好きなんだけど。あ、もしかして、あんまり似合ってないかしら?」
と、私が聞くと、
「まさか、ちがうよ! 似合いすぎてて、他のやつに見せたくないくらいだよ。でも、そんなことじゃなくて、今回は、その色がダメ」
と、ユーリが答えた。
色? このきれいなライラック色が? どこがダメなんだろう…。
「なんで、この色がダメなの? 理由がわからないんだけど」
と、納得がいかない私は、さらに、ユーリに聞いてみる。
「だって、そのライラックの色、誰かの瞳の色に似てるよね。アデルが、そのドレスを着て、あの王子と並んだりしたら、思わず、魔力が暴走して、この王宮を破壊してしまうかもしれないでしょ? だから、着ないでね?」
そう言って、甘やかに微笑んだ。
いやいやいや、甘く微笑まれてもね…。
表情と会話の中身が、まるであってないんですが!
ドレスの色は、確かに、デュラン王子の瞳の色と、同じ系統の色ではあるけれど、でも、王宮を破壊?
どうして、ドレスの話なのに、そんな物騒な話になるの?!
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