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部屋で
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デュラン王子とジリムさんは、晩餐会の前に、部屋まで迎えに来てくれるということで、いったん別れた。
アンもやってきて、手際よく、持ってきた荷物を片づけてくれている。
あと3時間もないものね。ちょっと、ゆっくりしてから、晩餐会のため着替えないといけない。
「あんまり時間がないし、ユーリも、自分の部屋で休んできたら?」
と、私が、ユーリに声をかける。
すると、
「ここで、アデルを補充したほうが休まる。着替える前に出ていくから、それまでいさせて?」
そう言いながらも、すでに、ジャケットをぬぎ、くつろぎ体制に入っている。
「私を補充って、なに? 意味がわからないわね」
と、私がつぶやくと、
「アデルのそばで、アデルと同じ空気をすいながら、アデルを見て、アデルの存在を感じることだよ。残念ながら、まだ、ふれられないけどね」
妖しい何かをふりまきながら、ユーリが、甘ったるく微笑んだ。
近くにいたアンが、片づけながら、「こわっ」と、つぶやき、身震いしている。
確かに、なんだか、ぞくっとしたわね。
ちょっと、離れていようかしら…。
「ねえ、アデル。アンも忙しそうだし、今日は、ぼくがお茶を淹れるね?」
と、ユーリが立ちあがって、ティーセットに近づいていく。
「え? ユーリって、お茶を淹れられるの?」
「まあね。ほら、次期公爵の仕事柄、色んな領地をまわるでしょ。あまり知らない場所で滞在する時もたまにあってね。そんな時は、口にいれるものは気をつけてるから、茶葉も自分で持参して淹れるよ。毒とか、媚薬とか入れられたこともあったからね」
「ええええっ?! ユーリって、狙われてるの?!」
思わず、驚きすぎて、大声をあげてしまった。
確かに、王族には毒味係がいるけれど、実際、毒がでたなどと聞いたことはない。
それなのに、まさか、こんな身近で、毒とか媚薬とか、物語の中で起きるようなことが、現実にあるなんて!
すると、ユーリは、
「筆頭公爵家の嫡男で、王女の婚約者で、魔力が膨大なぼくをコントロールしようとするバカがいるんだよ。まあ、その都度、二度と、そんな気になれないようにしたから、最近はないけどね」
と、不敵な笑みを浮かべた。
なんでかしら?
襲われたユーリよりも、加害者のほうに少し同情してしまったわ…。
それにしても、ユーリにそんなことするなんて、なんて、命知らずな…。
「もし、アデルにそんなことをしようとする奴がいたら、ぼくが、完璧に根絶やしにするから、安心してね」
と、艶やかに笑った。
「それは、とっても安心だわ。ハハハハハ…」
かわいた笑いが口からでた。
悪いことを考えている、みなさん。ユーリは敵にまわさないほうが、身のためですよ…。
「あ、そうだ。この部屋の中も、用意されたお茶の葉も、すべて、ぼくの部下が先に確認してるから、大丈夫だよ」
と、ユーリは優雅にお茶を淹れながら、説明してくれた。
ほんと、ユーリは有能なんだよね。そういう点では、絶対的に信頼している。
ただ、私にかかわると、なんだかおかしくなるけれど…。
あ、そんな人が、もう一人いた。ロイドだ!
そういえば、ロイドって、帰りに迎えにくるんだったわよね。
私に異常に過保護だから、初めて、一人で、外国訪問している私を、今頃、それはそれは心配しているでしょうね。
あんまり、気にしすぎないといいけど…。
なんて、考えてたら…、
「ひゃああ! なになになに?!」
思わず、叫びながら、飛び上がってしまった。
だって、いきなり、首の後ろに、ひやっとしたものが、ひっついてきたんだもの!
ふと見ると、ユーリが、片手におしぼりを持っている。
あっ、それを、私のうなじにひっつけたわね!
「ちょっと、ユーリ! 急に何するのよ! びっくりするじゃない!」
私が、うなじを手でさわりながら、ユーリに抗議する。
「だって、アデル。さっき、他の男のこと、考えてたでしょ?」
と、ユーリ。
他の男? …あっ、ロイドのこと?!
確かに考えてたけど…、なんで、わかるの?!
そうか、ロイドはユーリの天敵だものね。
私の頭の中で考えてても察知するなんて、おそろしいわ…。
アンが、片づけの手をとめて、生暖かい目で私たちを見ている。
いやいや、王女らしからぬ声で叫んだのは、不可抗力だから。
だって、ユーリが驚かすから、びっくりしたんだもの!
きりっと、ユーリをにらむと、なぜか、とても嬉しそうに笑った。
久々に見た、邪気のない天使みたいな笑顔に、思わず見とれてしまう。
もう、ほんと、美形はずるいわよね。
アンもやってきて、手際よく、持ってきた荷物を片づけてくれている。
あと3時間もないものね。ちょっと、ゆっくりしてから、晩餐会のため着替えないといけない。
「あんまり時間がないし、ユーリも、自分の部屋で休んできたら?」
と、私が、ユーリに声をかける。
すると、
「ここで、アデルを補充したほうが休まる。着替える前に出ていくから、それまでいさせて?」
そう言いながらも、すでに、ジャケットをぬぎ、くつろぎ体制に入っている。
「私を補充って、なに? 意味がわからないわね」
と、私がつぶやくと、
「アデルのそばで、アデルと同じ空気をすいながら、アデルを見て、アデルの存在を感じることだよ。残念ながら、まだ、ふれられないけどね」
妖しい何かをふりまきながら、ユーリが、甘ったるく微笑んだ。
近くにいたアンが、片づけながら、「こわっ」と、つぶやき、身震いしている。
確かに、なんだか、ぞくっとしたわね。
ちょっと、離れていようかしら…。
「ねえ、アデル。アンも忙しそうだし、今日は、ぼくがお茶を淹れるね?」
と、ユーリが立ちあがって、ティーセットに近づいていく。
「え? ユーリって、お茶を淹れられるの?」
「まあね。ほら、次期公爵の仕事柄、色んな領地をまわるでしょ。あまり知らない場所で滞在する時もたまにあってね。そんな時は、口にいれるものは気をつけてるから、茶葉も自分で持参して淹れるよ。毒とか、媚薬とか入れられたこともあったからね」
「ええええっ?! ユーリって、狙われてるの?!」
思わず、驚きすぎて、大声をあげてしまった。
確かに、王族には毒味係がいるけれど、実際、毒がでたなどと聞いたことはない。
それなのに、まさか、こんな身近で、毒とか媚薬とか、物語の中で起きるようなことが、現実にあるなんて!
すると、ユーリは、
「筆頭公爵家の嫡男で、王女の婚約者で、魔力が膨大なぼくをコントロールしようとするバカがいるんだよ。まあ、その都度、二度と、そんな気になれないようにしたから、最近はないけどね」
と、不敵な笑みを浮かべた。
なんでかしら?
襲われたユーリよりも、加害者のほうに少し同情してしまったわ…。
それにしても、ユーリにそんなことするなんて、なんて、命知らずな…。
「もし、アデルにそんなことをしようとする奴がいたら、ぼくが、完璧に根絶やしにするから、安心してね」
と、艶やかに笑った。
「それは、とっても安心だわ。ハハハハハ…」
かわいた笑いが口からでた。
悪いことを考えている、みなさん。ユーリは敵にまわさないほうが、身のためですよ…。
「あ、そうだ。この部屋の中も、用意されたお茶の葉も、すべて、ぼくの部下が先に確認してるから、大丈夫だよ」
と、ユーリは優雅にお茶を淹れながら、説明してくれた。
ほんと、ユーリは有能なんだよね。そういう点では、絶対的に信頼している。
ただ、私にかかわると、なんだかおかしくなるけれど…。
あ、そんな人が、もう一人いた。ロイドだ!
そういえば、ロイドって、帰りに迎えにくるんだったわよね。
私に異常に過保護だから、初めて、一人で、外国訪問している私を、今頃、それはそれは心配しているでしょうね。
あんまり、気にしすぎないといいけど…。
なんて、考えてたら…、
「ひゃああ! なになになに?!」
思わず、叫びながら、飛び上がってしまった。
だって、いきなり、首の後ろに、ひやっとしたものが、ひっついてきたんだもの!
ふと見ると、ユーリが、片手におしぼりを持っている。
あっ、それを、私のうなじにひっつけたわね!
「ちょっと、ユーリ! 急に何するのよ! びっくりするじゃない!」
私が、うなじを手でさわりながら、ユーリに抗議する。
「だって、アデル。さっき、他の男のこと、考えてたでしょ?」
と、ユーリ。
他の男? …あっ、ロイドのこと?!
確かに考えてたけど…、なんで、わかるの?!
そうか、ロイドはユーリの天敵だものね。
私の頭の中で考えてても察知するなんて、おそろしいわ…。
アンが、片づけの手をとめて、生暖かい目で私たちを見ている。
いやいや、王女らしからぬ声で叫んだのは、不可抗力だから。
だって、ユーリが驚かすから、びっくりしたんだもの!
きりっと、ユーリをにらむと、なぜか、とても嬉しそうに笑った。
久々に見た、邪気のない天使みたいな笑顔に、思わず見とれてしまう。
もう、ほんと、美形はずるいわよね。
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