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王宮へ
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レストランから、10分たらずで王宮に到着。
馬車から降りると、沢山のお出迎えの方々が並んでくださっている。
まずい…。
早く、王女モードを取り戻さないと!
先に降りたユーリに手をそえられて、馬車から降りると、急いで、全身から、なにかしらの王女らしさをかき集めて、にこやかに微笑んだ。
なんとか、王女に見えるかしら?
まあ、見えなくても、王女なので、これで勘弁してくださいね?
そして、デュラン王子と、ユーリに挟まれて、王城の入口まで歩く。
とても短い距離なんだけれど、とてつもなく長く感じる。
沢山の人たちに見られながら、きらびやかすぎる魔王たちに挟まれて歩くなんて、なんだか、罰ゲームっぽい感じだわね…。
やっと、王宮の中へと足をふみいれた。
が、そこでも、多くの方々が、整列してお出迎えしてくださっている。
まったく、気が抜けないわ。
当たり前なんだけれど、はじめて来た場所で、はじめて会う人々がずらり。
気軽な訪問とはいえ、一人だけで、初めての他国訪問なのねと、今更ながら、実感がわいてきた。
そう思ったら、急に緊張してきたわ。
どうしよう! 変なドキドキが止まらない!
ふと、隣のユーリをちらりと見る。
すると、私の不安を察したのか、ユーリも私のほうをむき、
「ぼくがいるから大丈夫。安心して、アデル」
と、ささやくと、艶やかに微笑んだ。
幼い頃から見てきた、自信に満ち溢れたユーリの笑顔。
とたんに、体中の緊張がとけた。一気に呼吸が楽になる。
ユーリがいれば、確かに大丈夫だ、と心の底から思ったから。
変なドキドキもとまった。良かった!
「ありがと、ユーリ。一緒に来てくれて良かった」
思わず、そうつぶやいて、ユーリに笑いかける。
ユーリが目を見開いて固まった。
そして、
「…もう、いきなりやめてよ。ずるいな、アデル」
と、つぶやいた。顔がほんのり赤くなっている。
いやいや、ずるいのはユーリでしょ。
その顔は、もはや、物語にでてくる傾国の美女のようだよ…。
ほら、女性たちがうっとりと見てるよ?
他国でも、ユーリファンとかできるのかしら?
ま、でも、ユーリのおかげで、正気に戻りました!
では、王女としての役目、楽しんで、がんばります!
そして、通されたのは、豪華な広間。
王家の方々が出迎えてくださった。
デュラン王子が、私を紹介してくれたので、
「オパール国、第二王女のアデルと申します。この度は、急に訪問させていただくことになり、申し訳ありません。お世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします」
と、まずは、簡単にご挨拶をする。
すると、大柄で、少しお年をめされたブルージュ国の王様が、
「アデル王女。我が国へ、ようこそいらっしゃった。デュランが、なかなか帰ってこないので、よほどオパール国が気に入ったのかと思ったら、こんな可愛らしい王女がおられたとはな。ゆっくり滞在して、この国をよく知ってもらえれば、私もうれしい」
そう言って、優し気に微笑んだ。
私は笑顔で軽く頭をさげる。
可愛いだなんて…! 王様、気さくで良い方ね! ほっとしたわ。
そして、お隣におられる、美しい女性が王妃様でしょうね。
というのも、ブルージュ国もオパール国と同じで、側室はいないと聞いている。
「アデル王女、お会いできるのを楽しみにしておりました。長旅、おつかれになったでしょう。お部屋を用意してますので、後程、デュランに案内させますね。…それと、オパール国では、色々と、デュランが迷惑をかけたのではないですか?」
と、心配げにたずねられた。
ええ、その通り。…では、なくて、
「いえ、とんでもございません。良くしていただいております」
なにを? だけれど、やっぱり、ここは社交辞令よね。
今の、王女らしい受け答えだったんじゃない? と思ったら、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
見ると、当の本人のデュラン王子が笑っている。
ちょっと、そこで笑ったらダメでしょ?! と、私は目を見開き、私の目力を最大限に使って訴えるが、笑いは止まらない。
すると、王妃様は、
「本当にお可愛らしい方ね、アデル王女は。デュランが仲良くさせてもらってるようで、ありがとう」
そう言って、優雅に微笑まれた。
デュラン王子に似た面立ちだけれど、さらにお優しい雰囲気で、慈愛に満ちたお顔をされている。
まるで、女神さまのようだわ!
なのに、なぜ、こんな笑い上戸の魔王が生まれたのかしら…。
馬車から降りると、沢山のお出迎えの方々が並んでくださっている。
まずい…。
早く、王女モードを取り戻さないと!
先に降りたユーリに手をそえられて、馬車から降りると、急いで、全身から、なにかしらの王女らしさをかき集めて、にこやかに微笑んだ。
なんとか、王女に見えるかしら?
まあ、見えなくても、王女なので、これで勘弁してくださいね?
そして、デュラン王子と、ユーリに挟まれて、王城の入口まで歩く。
とても短い距離なんだけれど、とてつもなく長く感じる。
沢山の人たちに見られながら、きらびやかすぎる魔王たちに挟まれて歩くなんて、なんだか、罰ゲームっぽい感じだわね…。
やっと、王宮の中へと足をふみいれた。
が、そこでも、多くの方々が、整列してお出迎えしてくださっている。
まったく、気が抜けないわ。
当たり前なんだけれど、はじめて来た場所で、はじめて会う人々がずらり。
気軽な訪問とはいえ、一人だけで、初めての他国訪問なのねと、今更ながら、実感がわいてきた。
そう思ったら、急に緊張してきたわ。
どうしよう! 変なドキドキが止まらない!
ふと、隣のユーリをちらりと見る。
すると、私の不安を察したのか、ユーリも私のほうをむき、
「ぼくがいるから大丈夫。安心して、アデル」
と、ささやくと、艶やかに微笑んだ。
幼い頃から見てきた、自信に満ち溢れたユーリの笑顔。
とたんに、体中の緊張がとけた。一気に呼吸が楽になる。
ユーリがいれば、確かに大丈夫だ、と心の底から思ったから。
変なドキドキもとまった。良かった!
「ありがと、ユーリ。一緒に来てくれて良かった」
思わず、そうつぶやいて、ユーリに笑いかける。
ユーリが目を見開いて固まった。
そして、
「…もう、いきなりやめてよ。ずるいな、アデル」
と、つぶやいた。顔がほんのり赤くなっている。
いやいや、ずるいのはユーリでしょ。
その顔は、もはや、物語にでてくる傾国の美女のようだよ…。
ほら、女性たちがうっとりと見てるよ?
他国でも、ユーリファンとかできるのかしら?
ま、でも、ユーリのおかげで、正気に戻りました!
では、王女としての役目、楽しんで、がんばります!
そして、通されたのは、豪華な広間。
王家の方々が出迎えてくださった。
デュラン王子が、私を紹介してくれたので、
「オパール国、第二王女のアデルと申します。この度は、急に訪問させていただくことになり、申し訳ありません。お世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします」
と、まずは、簡単にご挨拶をする。
すると、大柄で、少しお年をめされたブルージュ国の王様が、
「アデル王女。我が国へ、ようこそいらっしゃった。デュランが、なかなか帰ってこないので、よほどオパール国が気に入ったのかと思ったら、こんな可愛らしい王女がおられたとはな。ゆっくり滞在して、この国をよく知ってもらえれば、私もうれしい」
そう言って、優し気に微笑んだ。
私は笑顔で軽く頭をさげる。
可愛いだなんて…! 王様、気さくで良い方ね! ほっとしたわ。
そして、お隣におられる、美しい女性が王妃様でしょうね。
というのも、ブルージュ国もオパール国と同じで、側室はいないと聞いている。
「アデル王女、お会いできるのを楽しみにしておりました。長旅、おつかれになったでしょう。お部屋を用意してますので、後程、デュランに案内させますね。…それと、オパール国では、色々と、デュランが迷惑をかけたのではないですか?」
と、心配げにたずねられた。
ええ、その通り。…では、なくて、
「いえ、とんでもございません。良くしていただいております」
なにを? だけれど、やっぱり、ここは社交辞令よね。
今の、王女らしい受け答えだったんじゃない? と思ったら、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
見ると、当の本人のデュラン王子が笑っている。
ちょっと、そこで笑ったらダメでしょ?! と、私は目を見開き、私の目力を最大限に使って訴えるが、笑いは止まらない。
すると、王妃様は、
「本当にお可愛らしい方ね、アデル王女は。デュランが仲良くさせてもらってるようで、ありがとう」
そう言って、優雅に微笑まれた。
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