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勇者か、魔族か
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ユーリの国つぶす発言から、真っ先に言葉を発したのは、ジリムさんだった。
やっぱり、勇者だわ。
まるで、この一連のくだりがなかったのように、
「では、アデル王女の滞在期間は、最初のご本人の申し出を尊重し、1週間ということに決定します」
と、言いきった。
「えー! 短いよ!」
と、せっかくの発言を無駄にしようとする、デュラン王子。
「あなたは黙っててください。…っていうか、デュー、だまれ!」
ジリムさんは、デュラン王子に小声で一喝した。
魔王にこの口調、やはり、ただものではないジリムさん。
そして、デュラン王子、本当にデューって呼ばれてるんだね。
ジリムさんは、
「すみません。ちょっと目に疲れが…」
と断って、眼鏡をはずし、目頭を押さえている。
ほんとに、お疲れ様でございます。
睡眠不足の上、打ち合わせとは思えない、おかしな状況に放り込まれて、申し訳ないです…。
そして、眼鏡をかけなおすと、私にむかって、
「あいまいな滞在期間だと、警護に問題もでますし、1週間の間に、リッカ先生との面談もなんとかできるように、調整してみます」
と言ってくれた。
もう、あなたは神ですか?! 後光が見えます!
私は、ばきっと立ちあがり、
「ジリムさんには、お忙しいところ、大変ご迷惑をおかけします。が、リッカ先生とのことだけは、なんとか、なんとか、なんとか、よろしくお願いいたします!」
そう言って、がばっと頭をさげた。
一瞬、シーンとした後、
「なんか、令嬢的な要素がまるでない、斬新な言葉とお辞儀だったね…」
と、ルイ兄様が、ぽつりと言った。
そりゃあ、リッカ先生だよ! なりふりかまってられないわ。誠意をみせなきゃ!
ジリムさんは、少しポカンとした後、くすっと笑った。
お、はじめての笑顔!
デュラン王子も笑いながら、ジリムさんに言った。
「ほら、王女らしからぬ、おもしろさでしょ?」
んん? それって、ほめられてないよね。
「なるほど…、デューが気に入るのもわかりますね。おもしろい…」
と、つぶやいた。
眼鏡をくいっとあげて、こちらを見ている。
眼鏡越しでも、美形は目力が強いね。
そして、私に向かって、
「リッカ先生の面談の機会は、必ず手に入れてみせます。私は、狙ったものは、どんな手を使ってでも、必ず手に入れる主義ですので。お任せください、アデル王女様」
そう言って、爽やかに微笑んだ。
おお、なんと、頼りになるお言葉!
でも、なんか、ちょっと、変な文だったよね?
怖いというか、見に覚えのある系統というか…。
ええと、もしや、あなたは、勇者ではなく、魔族系ですか?
そして、国をつぶす発言をして以来、沈黙している、お隣の魔王。
さっきから、更に、何か不穏な気配がながれだしてます。
何か、お気にさわりましたか? 怖くて見れないけど…。
一応、確認しといたほうがいいかしら?
と、思った時、騎士団長のラルフさんが、
「では、行き帰りや、滞在時の警護については、私とオルブライトさんで話し合っておきます。決定した内容を、後程、みなさんにおまわしすることにいたします。では、訓練がありますので、お先に失礼いたします」
そう言って、颯爽と去っていった。
確かに、このまま、ここで話していても、何も決まらなさそうだものね。
打ち合わせというより、なんか、魔族のつどいみたいになってるし。
お忙しいところ、来ていただいたのに、本当にすみません…。
やっぱり、勇者だわ。
まるで、この一連のくだりがなかったのように、
「では、アデル王女の滞在期間は、最初のご本人の申し出を尊重し、1週間ということに決定します」
と、言いきった。
「えー! 短いよ!」
と、せっかくの発言を無駄にしようとする、デュラン王子。
「あなたは黙っててください。…っていうか、デュー、だまれ!」
ジリムさんは、デュラン王子に小声で一喝した。
魔王にこの口調、やはり、ただものではないジリムさん。
そして、デュラン王子、本当にデューって呼ばれてるんだね。
ジリムさんは、
「すみません。ちょっと目に疲れが…」
と断って、眼鏡をはずし、目頭を押さえている。
ほんとに、お疲れ様でございます。
睡眠不足の上、打ち合わせとは思えない、おかしな状況に放り込まれて、申し訳ないです…。
そして、眼鏡をかけなおすと、私にむかって、
「あいまいな滞在期間だと、警護に問題もでますし、1週間の間に、リッカ先生との面談もなんとかできるように、調整してみます」
と言ってくれた。
もう、あなたは神ですか?! 後光が見えます!
私は、ばきっと立ちあがり、
「ジリムさんには、お忙しいところ、大変ご迷惑をおかけします。が、リッカ先生とのことだけは、なんとか、なんとか、なんとか、よろしくお願いいたします!」
そう言って、がばっと頭をさげた。
一瞬、シーンとした後、
「なんか、令嬢的な要素がまるでない、斬新な言葉とお辞儀だったね…」
と、ルイ兄様が、ぽつりと言った。
そりゃあ、リッカ先生だよ! なりふりかまってられないわ。誠意をみせなきゃ!
ジリムさんは、少しポカンとした後、くすっと笑った。
お、はじめての笑顔!
デュラン王子も笑いながら、ジリムさんに言った。
「ほら、王女らしからぬ、おもしろさでしょ?」
んん? それって、ほめられてないよね。
「なるほど…、デューが気に入るのもわかりますね。おもしろい…」
と、つぶやいた。
眼鏡をくいっとあげて、こちらを見ている。
眼鏡越しでも、美形は目力が強いね。
そして、私に向かって、
「リッカ先生の面談の機会は、必ず手に入れてみせます。私は、狙ったものは、どんな手を使ってでも、必ず手に入れる主義ですので。お任せください、アデル王女様」
そう言って、爽やかに微笑んだ。
おお、なんと、頼りになるお言葉!
でも、なんか、ちょっと、変な文だったよね?
怖いというか、見に覚えのある系統というか…。
ええと、もしや、あなたは、勇者ではなく、魔族系ですか?
そして、国をつぶす発言をして以来、沈黙している、お隣の魔王。
さっきから、更に、何か不穏な気配がながれだしてます。
何か、お気にさわりましたか? 怖くて見れないけど…。
一応、確認しといたほうがいいかしら?
と、思った時、騎士団長のラルフさんが、
「では、行き帰りや、滞在時の警護については、私とオルブライトさんで話し合っておきます。決定した内容を、後程、みなさんにおまわしすることにいたします。では、訓練がありますので、お先に失礼いたします」
そう言って、颯爽と去っていった。
確かに、このまま、ここで話していても、何も決まらなさそうだものね。
打ち合わせというより、なんか、魔族のつどいみたいになってるし。
お忙しいところ、来ていただいたのに、本当にすみません…。
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