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頼みの綱

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ここで、能天気な笑い声が聞こえてきた。ルイ兄様だ。
「なんか、王子の側近も大変だね」

ルイ兄様!! それ言っちゃダメ!!

あなたの側近はだれですか?
ほら、にらんでるよ。

しっかり、ブーメランで返ってきてるんですが…。

このままいくと、永久凍土になりそうなんだけど、この場所。

コホンと咳払いがあり、騎士団長が、
「アデル様が来られる前に日程を先に決めたのですが、出発は5日後。日曜日になります。よろしいですか?」
と、私に聞いてきた。

このままだと、空気が悪くなるものね。流れを変えてくれて、ありがとう!

ちなみに、騎士団長のラルフさん。父の幼馴染で、家族ぐるみのお付き合いがあり、幼い頃から、かわいがってもらっている。強面だけど、とってもやさしい。頼れる父みたいな存在だ。

「はい、大丈夫です。騎士団長」
普段は、ラルフさんと呼んでいるが、ここは王女モードで答えてみる。

「それで、こちらから、アデル様につける護衛騎士なのですが、希望者がおりまして」
と、ここまで言ったところで、

「希望者はダメです」
口をはさんだのは、ユーリだ。

ルイ兄様が、
「希望者ってだれ?」
と、のんきに聞く。

いや、聞かないでもわかるよね…。

「もちろん、ロイドです。能力はぬきんでているので、アデル様をお守りする観点から言えば、一番安心なのですが、いかんせん、アデル様に接する態度があれでは…。あれを他国にだしてよいものかと…」
騎士団長が、眉間にしわをよせる。

あれを連発されているわよ、ロイド…。

「ほんと、昔からロイドは、アデル、アデルだよね。ぼくの専属護衛騎士なのに。お嫁に行くとき、どうするんだろ? しかも、外国とかに行ったりしたらね」
と、のほほんとした顔で言った。

「なに、ありえない、たとえ話してんの?」
ユーリがルイ兄様を、すごい目で見ている。

かなり、いらついているのがわかる。だって、いつもの仮面を投げ捨て、真顔になってるから。

ルイ兄様! ほんと、ちょっとだまって!
お願いだから、もっと身の危険を感じて! 用心深くなって!

が、願いもむなしく、
「あ、ごめん、ごめん。ユーリの婚約者だったね」
と、ルイ兄様は、にこにこしながら、軽いのりで答えた。

で、ここでやめておくのかと思ったら、
「でもさ、アデルも王女でしょ。うちの国に何かあったら、ユーリと婚約を解消してでも、よその国に嫁がないといけないときもあるしね。まあ、そうならないよう、ぼくが王になっても、がんばるからね」
と、これまた、軽いのりで爆弾発言。

「…」

驚きすぎて、声もでない。恐ろしすぎて、ユーリを見れない。そして、ルイ兄様の未来が見えない。

だれでもいいから、ルイ兄様の口をぬいつけてー!

と、ここで口をひらく猛者がいた。デュラン王子だ。
「あ、その時は、ブルージュ国へ来てね。ロイド君も見てておもしろいから、護衛騎士として連れてきてもいいし」
と、甘い微笑みをうかべる。

やめてー! 隣からの殺気がすごいから!

「なに、馬鹿なことを言ってるんですか、あなたは。それよりも、アデル王女の訪問について詰めましょう」
と、スパッとさえぎったのは、ジリムさんだ。

すごいよ、ジリムさん!
まさに勇者だわ。ありがとうございます。助かりました!

「とりあえず、護衛はロイド以外で選出することにします。人選はこちらでお任せください」
と、即座に、ラルフさんが言った。

これ以上、変な流れを作らさないよう、ロイドの話題は終了させたのね。
それがいいわ!

ほんとに、このメンバーで、頼みの綱は、ジリムさんとラルフさんだけね。
色々とご迷惑をおかけしますが、どうぞ、よろしくお願いします!


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