55 / 158
まきこまないで by マルク
しおりを挟む
※ マルク視点が続きます。
せまい馬車の中。
できるだけ、見ないよう、聞こえないようにしても、見えるし、聞こえる…。
デュラン王子は、やっぱり、かなりアデルを気に入っているよう。
「アディー」とか呼びはじめ、面倒なことになってきた。
ユーリ兄様のアデル三原則が、全部やぶられているかと思うと、ふるえがとまらない。
この馬車に、ぼくは乗ってない、乗ってない、乗ってない…、と暗示をかける。
なのに、アデル! ぼくをまきこまないで!
短い距離なのに、更にげっそりとして、馬車をおりた。
と、そこへ、王太子の専属護衛騎士のロイドさんがやってきた。
見目はよく、頭脳明晰、腕もすごいのに、…なんだろう、この残念な感じ。
ユーリ兄様と方向性は全然違うけれど、ややこしい人なんだよね。
アデル至上主義で、過保護が度を超しているし…。
ロイドさんの基準は簡単。アデルに害をなすものは敵。ぼくは無害に分類されているらしく、ごく普通の対応だ。
ユーリ兄様のファンの女性たちは、アデルの悪口を言うから、高位貴族の御令嬢であっても、もはや、害虫を退治するかのように、おっぱらっている。
そして、なんと言っても、婚約者のユーリ兄様は有害中の有害。もはや天敵だ。
騎士の中でもとびぬけた実力で、このままいけば、騎士団のトップになれるんだろうけれど、ロイドさんが目指すのは、アデルの専属護衛騎士、一択。
で、それを邪魔しているのがユーリ兄様だ。
今のところ、ユーリ兄様の裏工作が優位にたち、ロイドさんは、ずーっと王太子の専属護衛騎士のままだ。
あ、まだ来てすぐなのに、ロイドさんのアデルへの過保護が発動してしまった。
ほら、早速、アデルを自分の保護下におき、歩き出す。
どう見ても歩きにくいよね、あれ。変だし…。
しかも、どこからか、日傘もだしてきたよ。あいかわらず、アデルへの用意がすごいね。
あの日傘、アデル専用として用意しているのは間違いない。
以前、王宮の庭で、小雨に降られたアデルに、ロイドさんが、さっとハンカチをさしだしたことがあった。
ロイドさんが使わないような、かわいらしい動物の刺繍がしてあったから、アデルが聞いたんだよね。
「かわいい、ハンカチ! もしや、だれかからのプレゼント?」
すると、
「いえ、私がアデル様にと用意したハンカチです。アデル様に使うときのことを想定して、自分用と2枚用意しています」
と、答えた時は、ぞわっとした。怖いでしょ。
アデルへの執着の強さは、ユーリ兄様と同じくらいかも。
今も、隣国の王子様がいるのに、部下に任せて、自分はアデルしか見てないもんね。
さすがのデュラン王子も、驚愕してる。
ぼくは、ふと思う。
アデルが結婚する時、ロイドさんはついていくのかな? 嫁ぎ先に。
アデルは色々画策してるけれど、ユーリ兄様から逃げきることは無理だと、ぼくは思ってる。
ということは、ぼくの家に、ロイドさんもくるの?
想像しただけで、恐ろしいよね。
そういえば、こんなこともあったっけ。
以前、高位貴族の御令嬢で、ロイドさんを気に入った人がいたんだけど、アデルへの執着を知らなかったんだよね。だから、あらゆるコネを使って、近づいてた。
まあ、ロイドさんは、視界にすらいれてなかったけれど。
そして、あれは、王室主催のパーティーの時。
令嬢が猛烈にロイドさんにアピールしていた時に、事件は起きた…。
アデルがドレスのすそをふんで転ぶという、王女としては、ありえない失態をしたんだよね。
それを見たロイドさん。ちょうど、令嬢がロイドさんに飲み物のグラスを渡した時だったんだけど、それを床に投げ捨てて、走り出したんだよね。
しかも、割れるグラスの音で、みんなが注目してしまって…。
令嬢は泣き出すし、ロイドさんは、アデルのもとへかけより、乳母のように、かいがいしく世話をするし。
アデルは、恥ずかしくて、真っ赤になるし、ユーリ兄様は冷気を放ちながら、ロイドさんを追っ払おうとするし…。
まるで、地獄絵図みたいだった。
なぜか、王太子は笑ってたけど…。
あれ? でも、これっていい感じじゃない?
さっきから、デュラン王子がロイドさんしか見ていない。
目が離せなくなってる。
まあ、初めて見ると、ロイドさんのアデルへの行動はいろいろ衝撃だもんね。
そして、デュラン王子がロイドさんにくぎ付けになっている状態なら、ユーリ兄様のアデル三原則が守られてるってことだ!
こうなったら、ロイドさん、このまま、アデルへの過保護全開でいてください!
そして、デュラン王子の目をひきつけておいてください!
お願いします、ロイドさん!
せまい馬車の中。
できるだけ、見ないよう、聞こえないようにしても、見えるし、聞こえる…。
デュラン王子は、やっぱり、かなりアデルを気に入っているよう。
「アディー」とか呼びはじめ、面倒なことになってきた。
ユーリ兄様のアデル三原則が、全部やぶられているかと思うと、ふるえがとまらない。
この馬車に、ぼくは乗ってない、乗ってない、乗ってない…、と暗示をかける。
なのに、アデル! ぼくをまきこまないで!
短い距離なのに、更にげっそりとして、馬車をおりた。
と、そこへ、王太子の専属護衛騎士のロイドさんがやってきた。
見目はよく、頭脳明晰、腕もすごいのに、…なんだろう、この残念な感じ。
ユーリ兄様と方向性は全然違うけれど、ややこしい人なんだよね。
アデル至上主義で、過保護が度を超しているし…。
ロイドさんの基準は簡単。アデルに害をなすものは敵。ぼくは無害に分類されているらしく、ごく普通の対応だ。
ユーリ兄様のファンの女性たちは、アデルの悪口を言うから、高位貴族の御令嬢であっても、もはや、害虫を退治するかのように、おっぱらっている。
そして、なんと言っても、婚約者のユーリ兄様は有害中の有害。もはや天敵だ。
騎士の中でもとびぬけた実力で、このままいけば、騎士団のトップになれるんだろうけれど、ロイドさんが目指すのは、アデルの専属護衛騎士、一択。
で、それを邪魔しているのがユーリ兄様だ。
今のところ、ユーリ兄様の裏工作が優位にたち、ロイドさんは、ずーっと王太子の専属護衛騎士のままだ。
あ、まだ来てすぐなのに、ロイドさんのアデルへの過保護が発動してしまった。
ほら、早速、アデルを自分の保護下におき、歩き出す。
どう見ても歩きにくいよね、あれ。変だし…。
しかも、どこからか、日傘もだしてきたよ。あいかわらず、アデルへの用意がすごいね。
あの日傘、アデル専用として用意しているのは間違いない。
以前、王宮の庭で、小雨に降られたアデルに、ロイドさんが、さっとハンカチをさしだしたことがあった。
ロイドさんが使わないような、かわいらしい動物の刺繍がしてあったから、アデルが聞いたんだよね。
「かわいい、ハンカチ! もしや、だれかからのプレゼント?」
すると、
「いえ、私がアデル様にと用意したハンカチです。アデル様に使うときのことを想定して、自分用と2枚用意しています」
と、答えた時は、ぞわっとした。怖いでしょ。
アデルへの執着の強さは、ユーリ兄様と同じくらいかも。
今も、隣国の王子様がいるのに、部下に任せて、自分はアデルしか見てないもんね。
さすがのデュラン王子も、驚愕してる。
ぼくは、ふと思う。
アデルが結婚する時、ロイドさんはついていくのかな? 嫁ぎ先に。
アデルは色々画策してるけれど、ユーリ兄様から逃げきることは無理だと、ぼくは思ってる。
ということは、ぼくの家に、ロイドさんもくるの?
想像しただけで、恐ろしいよね。
そういえば、こんなこともあったっけ。
以前、高位貴族の御令嬢で、ロイドさんを気に入った人がいたんだけど、アデルへの執着を知らなかったんだよね。だから、あらゆるコネを使って、近づいてた。
まあ、ロイドさんは、視界にすらいれてなかったけれど。
そして、あれは、王室主催のパーティーの時。
令嬢が猛烈にロイドさんにアピールしていた時に、事件は起きた…。
アデルがドレスのすそをふんで転ぶという、王女としては、ありえない失態をしたんだよね。
それを見たロイドさん。ちょうど、令嬢がロイドさんに飲み物のグラスを渡した時だったんだけど、それを床に投げ捨てて、走り出したんだよね。
しかも、割れるグラスの音で、みんなが注目してしまって…。
令嬢は泣き出すし、ロイドさんは、アデルのもとへかけより、乳母のように、かいがいしく世話をするし。
アデルは、恥ずかしくて、真っ赤になるし、ユーリ兄様は冷気を放ちながら、ロイドさんを追っ払おうとするし…。
まるで、地獄絵図みたいだった。
なぜか、王太子は笑ってたけど…。
あれ? でも、これっていい感じじゃない?
さっきから、デュラン王子がロイドさんしか見ていない。
目が離せなくなってる。
まあ、初めて見ると、ロイドさんのアデルへの行動はいろいろ衝撃だもんね。
そして、デュラン王子がロイドさんにくぎ付けになっている状態なら、ユーリ兄様のアデル三原則が守られてるってことだ!
こうなったら、ロイドさん、このまま、アデルへの過保護全開でいてください!
そして、デュラン王子の目をひきつけておいてください!
お願いします、ロイドさん!
26
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる