44 / 158
ダニエル先生
しおりを挟む
台所は、居間の隣。扉をあけると、隣の部屋が良く見える。
なるほど。これなら、料理をしながらも、居間にいる子どもたちの様子がわかるね。
「ちょっと大きいけど、これ着て」
そう言って、ダニエルがエプロンを渡してきた。
「ドーラさんのでしょ? いいの?」
ダニエルがうなずく。
「きれいな服が汚れたらダメだから」
そっか。今日は私は町歩き用に、普段着を着ている。
でも、やっぱり、王女の服は質がいい。
きれいに見えてしまよね、としんみり…。
そして、ダニエルの心づかいにぐっときた。
私もがんばるから、美味しいごはんを作ろうね!!
「先に子どもたちのご飯から作るから」
ダニエル自身も、手早く、自分のエプロンをつけながら言った。
「メニューは決めてるの?」
ダニエルは、材料をだしながら、うなずいた。
「今日は近所の人から卵を沢山もらったから、オムレツにする」
確かに、かごに山盛りの卵がある。
「では、私も手伝うわ。何をしたらいいかしら?」
ダニエルは少し考えて、言った。
「卵、われる?」
さすがに卵はわれるよね!
…あ、でも、今世では卵をわったことがなかったわね。
「たぶん、大丈夫…だと思うよ?」
「じゃあ、ひとつ、わってみてくれる」
「了解、まかせて!」
まず、卵をにぎりしめる。
そして、器のへりにめがけて、…叩き落す。
「待って、待って、待って、アディー!」
すごい勢いで、ダニエルが止めに入った。
「なにかしら、ダニエル?」
「すごい力が入ってるけど? 卵をわるんじゃなくて、壊してるの?」
そういえば、肩がガチガチだわ。
前世ぶりの卵をわる作業なので、緊張しちゃったのかしら?
ククッと笑い声が聞こえた。
デュラン王子だ。
いつの間にか、近くの椅子にすわって、こちらを見ている。
見てなさい。今から、本領発揮よ!
と思ったら、ダニエルが言った。
「ぼくがわってみせるから、見てて」
なるほど。それ、いいわね。
「じゃあ、お願いします! ダニエル先生!」
「先生って…」
と言いながら、真っ赤になるダニエル。
あらためて見ると、目はくりっとしていて、まつ毛も長い!
なんだか、悔しいくらい、かわいらしい。
大きくなったら、もてそう。きらきら星人予備軍だわね。
ダニエルは、卵を持ち、器のへりにこつんと軽くあてた。
そして、パカンとあざやかにわる。
「すごいわ、ダニエル!! 流れるような手さばきね!」
思わず、感激して声をあげた。
ダニエルは、またもや真っ赤になって、
「卵をわるくらいで、大げさだよ。アディーもすぐにできるようになるよ」
そう言って、はずかしそうに微笑んだ。
くりくりの大きな瞳が、きらきらしている。
あー、なんていい子なのかしら! そして、かわいい! 頭なでたいっ!
あっ、ダメダメ。子ども扱いしたら、また怒られるわ。
では、私も気合いを入れて、卵をわらせていただきます!
「ほら、そんなににぎりしめないで。普通に持って!」
「はい、先生!」
「そんなに上に手をあげなくていいよ。卵は叩きつけるんじゃないからね!」
「はい、先生!」
「器に、軽くあててみて」
…コスッ
「先生、われません!」
「うん、今度は軽すぎるよね。器にさわるだけじゃ、殻にひびが入らないから」
「はい、先生!」
「もうちょっと、強くあててみて。失敗しても大丈夫だから」
「はい、先生!」
繰り返すこと、何度目か…。
「われました! 先生!」
パチパチパチパチ
拍手がおこった。
デュラン王子やマルク、子どもたち。
いつの間にか、みんなが台所にのりだすようにして、見ていた。
みんなに手をふって、こたえてみせる。
私、やりとげました! 残りの卵わりもおまかせください!
子どもたちが、手をふりかえしてくれた。
ほんと、いい子たちねえ。
そんな感動のなか、笑い転げてる人が一名。師匠!
なるほど。これなら、料理をしながらも、居間にいる子どもたちの様子がわかるね。
「ちょっと大きいけど、これ着て」
そう言って、ダニエルがエプロンを渡してきた。
「ドーラさんのでしょ? いいの?」
ダニエルがうなずく。
「きれいな服が汚れたらダメだから」
そっか。今日は私は町歩き用に、普段着を着ている。
でも、やっぱり、王女の服は質がいい。
きれいに見えてしまよね、としんみり…。
そして、ダニエルの心づかいにぐっときた。
私もがんばるから、美味しいごはんを作ろうね!!
「先に子どもたちのご飯から作るから」
ダニエル自身も、手早く、自分のエプロンをつけながら言った。
「メニューは決めてるの?」
ダニエルは、材料をだしながら、うなずいた。
「今日は近所の人から卵を沢山もらったから、オムレツにする」
確かに、かごに山盛りの卵がある。
「では、私も手伝うわ。何をしたらいいかしら?」
ダニエルは少し考えて、言った。
「卵、われる?」
さすがに卵はわれるよね!
…あ、でも、今世では卵をわったことがなかったわね。
「たぶん、大丈夫…だと思うよ?」
「じゃあ、ひとつ、わってみてくれる」
「了解、まかせて!」
まず、卵をにぎりしめる。
そして、器のへりにめがけて、…叩き落す。
「待って、待って、待って、アディー!」
すごい勢いで、ダニエルが止めに入った。
「なにかしら、ダニエル?」
「すごい力が入ってるけど? 卵をわるんじゃなくて、壊してるの?」
そういえば、肩がガチガチだわ。
前世ぶりの卵をわる作業なので、緊張しちゃったのかしら?
ククッと笑い声が聞こえた。
デュラン王子だ。
いつの間にか、近くの椅子にすわって、こちらを見ている。
見てなさい。今から、本領発揮よ!
と思ったら、ダニエルが言った。
「ぼくがわってみせるから、見てて」
なるほど。それ、いいわね。
「じゃあ、お願いします! ダニエル先生!」
「先生って…」
と言いながら、真っ赤になるダニエル。
あらためて見ると、目はくりっとしていて、まつ毛も長い!
なんだか、悔しいくらい、かわいらしい。
大きくなったら、もてそう。きらきら星人予備軍だわね。
ダニエルは、卵を持ち、器のへりにこつんと軽くあてた。
そして、パカンとあざやかにわる。
「すごいわ、ダニエル!! 流れるような手さばきね!」
思わず、感激して声をあげた。
ダニエルは、またもや真っ赤になって、
「卵をわるくらいで、大げさだよ。アディーもすぐにできるようになるよ」
そう言って、はずかしそうに微笑んだ。
くりくりの大きな瞳が、きらきらしている。
あー、なんていい子なのかしら! そして、かわいい! 頭なでたいっ!
あっ、ダメダメ。子ども扱いしたら、また怒られるわ。
では、私も気合いを入れて、卵をわらせていただきます!
「ほら、そんなににぎりしめないで。普通に持って!」
「はい、先生!」
「そんなに上に手をあげなくていいよ。卵は叩きつけるんじゃないからね!」
「はい、先生!」
「器に、軽くあててみて」
…コスッ
「先生、われません!」
「うん、今度は軽すぎるよね。器にさわるだけじゃ、殻にひびが入らないから」
「はい、先生!」
「もうちょっと、強くあててみて。失敗しても大丈夫だから」
「はい、先生!」
繰り返すこと、何度目か…。
「われました! 先生!」
パチパチパチパチ
拍手がおこった。
デュラン王子やマルク、子どもたち。
いつの間にか、みんなが台所にのりだすようにして、見ていた。
みんなに手をふって、こたえてみせる。
私、やりとげました! 残りの卵わりもおまかせください!
子どもたちが、手をふりかえしてくれた。
ほんと、いい子たちねえ。
そんな感動のなか、笑い転げてる人が一名。師匠!
6
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
気付いたら最悪の方向に転がり落ちていた。
下菊みこと
恋愛
失敗したお話。ヤンデレ。
私の好きな人には好きな人がいる。それでもよかったけれど、結婚すると聞いてこれで全部終わりだと思っていた。けれど相変わらず彼は私を呼び出す。そして、結婚式について相談してくる。一体どうして?
小説家になろう様でも投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
かわいい孫と冒険の旅に出るはずたったのに、どうやらここは乙女ゲーの世界らしいですよ
あさいゆめ
ファンタジー
勇者に選ばれた孫の転生に巻き込まれたばーちゃん。孫がばーちゃんも一緒じゃなきゃ嫌だとごねてくれたおかげで一緒に異世界へ。孫が勇者ならあたしはすっごい魔法使いにして下さいと神様にお願い。だけど生まれ変わったばーちゃんは天使のようなかわいい娘。孫にはなかなか会えない。やっと会えた孫は魔王の呪いで瀕死。どうやらこの状態から助ける事がばーちゃんの役割だったようだ。だけど、どうやらここは本当は乙女ゲーの世界らしい。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる