天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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デュラン王子の手のひらの中心から、青白い光がではじめた。
細い線のような光が、ドーラさんの胸の中心に差し込んでいく。

これって、魔力かしら? でも、魔力って見えるものなの?!

なんて、思っている間にも、その光の線は、どんどん太くなり、手のひら全体から光がではじめた。

デュラン王子の手のひらと、ドーラさんがしっかりと光でつながっている状態。
ドーラさんは、驚いている様子だけれど、痛がったり、気持ち悪がったりはしていない。

青白い光が輝いて、とても美しくて、神秘的…。
私は、息をのんで、ただただその様子を見守る。

しばらく、その状態が続いた後、だんだん、光が細くなってきた。
そして、ついに、すーっとデュラン王子の手のひらにすいこまれて、消えていった。

デュラン王子は、目を閉じたまま、立ちあがって、後ろをむく。

「ドーラさん、終わったから、寝間着を着てね。アディー、手伝ってあげて」

「はい! デュー先生!」

思わず声が裏返ってしまったわ。
だって、ドキドキがとまらないもの。
なんだか、すごいものを見たのではないかしら。

そして、ドーラさんは、少し楽になったみたい。
脱ぐ時とちがって、私が手伝う必要もなく、すんなりと自分で着ることができた。

「ドーラさん、着ましたよ。デュー先生!」

あ、また、声が裏返ってしまったわ。
二度目は、ちょっと恥ずかしい。でも、仕方がないわよね。
落ち着かないんだもの。
あれが、なんだったのか、早く知りたい!

私の気持ちが伝わったのか、デュラン王子はふりむくと、微笑みながら言った。

「今から説明するよ、助手さん。そうだ、部屋の前にいる人も呼んできて」

え? 部屋の前? だれかいたっけ?

ドアを開けると、師匠が転がり込んできた。

あれから、ずっと、はりついてたのね。
師匠ったら、そんなにドーラさんのことが、…ムフフフフ。

じゃなくって、そんなことより、早く説明をお願い!

「ドーラさんは大丈夫。風邪をこじらせたみたいだね。けれど、ちょっと楽になってきたでしょ? 薬を飲んで、安静にしていれば、数日でなおるよ」

ドーラさんは、
「ええ、随分楽になりました。ありがとうございます、先生」
と、かすれた声で言った。

「本当に良かった…」
師匠のほうが、泣きそうな顔をしている。

それで、それで? 早く、あの光について教えてよ!

私の顔を見た、デュラン王子が、私の頭をなでて、
「本当にぼくの助手は、かわいいね」
と、とろけるように、笑いかけてきた。

それはどうでもいいですから、早く説明を! ほら、ほら!

師匠が、うっ!と、うなった。

「男の俺が見ても甘すぎる攻撃を、お姫さん、あんた、よく無視できるな…」

「そう、手ごわいんだよね。まあ、それもおもしろいんだけどね」
と、デュラン王子が返す。

「そんなことより、早く説明して!」

あ、思わず、声にでた。しかも、声が大きすぎたわね。
病人の前で私ったら。ごめんなさい、ドーラさん…。

「ふふっ。本当にかわいらしい助手さんですね」
ドーラさんが、笑いながら言った。

うるさくしたのに、寛大な人だわ。確かに、師匠にはもったいないかもね。
そして、ありがとう、ドーラさん。

「では、アディーも我慢の限界のようだし、説明するね。最初に、体の様子をみて、風邪だと思ったんだけど、熱が高くて、衰弱してたんだよね。なので、念のために、ぼくの魔力を使って、詳しく体をみてみたんだ」

「魔力を使って、体の中が詳しくみられるの?」

デュラン王子はうなずいた。
「ぼくの魔力はね、体の中の状態をみることができるんだ。だから、魔力を生かすために、医師の資格も取ったんだよ。じゃないと、状態がみえても、意味がわからないしね」

「じゃあ、もしかして、癒すこともできるの? あのあと、ドーラさんの体調がよくなったもの」

私の問いに、デュラン王子は首を横にふった。

「いや、基本的には病を治したりはできない。でも、ちょっとした癒しはできる。今日は、魔力で体の中を診ながら、高熱を吸いとったから、楽になったんだよ。それくらいかな」

それくらいって、すごすぎるわよ!

この世界には、魔力をもっている人は、ある程度いる。が、通常は、その魔力を使えない人がほとんどだ。
私も、魔力はあるにはあるけれど、この人、魔力があるなあ、などとわかるくらいで、いまだ使い道はわからない。

なので、魔力を役立てることができる人になると、ほんの一握り。
しかも、その人たちは、その使い方を隠したがるから、こうな風に目の前で役立てているのを見るのは初めて。

だから、前世で、よく読んでいた物語のように、魔法使いなどは、この世界では見たことがない。

ちなみに、ユーリは魔力量が膨大だから、本人さえ、その気になれば、名実ともに魔力で国を支配し、魔王になれると思うわ。

それにしても、デュラン王子は、すごい人だったのね。
ずっと魔王だと思ってたけど、間違ってた。まさに、癒しの王子だわ! 失礼しました、デュー先生!

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