38 / 158
移動します
しおりを挟む
新たに案内係となった師匠。
「じゃあ、おれのいる下町はどうだ? 見たことないだろう? あ、高貴な方々だと、俺だけじゃあ、護衛がたりんか?」
「それなら大丈夫よ。ロイドがぬかりなく手配しているから」
精鋭の騎士たちが、少し離れたところで見守っているのが見える。
何度も言うようだけれど、ロイドは、誰よりも信頼できる騎士だ。
ただ、私に過保護すぎて、ちょっと…というか、かなり変になるだけ。
「まあ、そこの男前の王子さんも、自分の身は守れそうだしな。かなり、やれるんだろう?」
そう言うと、デュラン王子の全身を確かめるように見た。
「一応はね。アデルはぼくが守るよ。安心して」
と、甘いウインクをしてきた。
見とれていた女性が、思わずよろめく。
さすが、魔王。そのウインクなら敵を倒せるわね! すごい威力だもの。
「じゃあ、俺はマル坊を守るとするか。いいか、マル坊?」
マルクは嬉しそうにうなずいた。すっかり、懐いているわ。
甘いもの好きの連帯感がすごいわね。
早速、市場をでて、細い路地を入っていく。
道は、くねくねと曲がっていて、迷路みたい。迷子になったら、帰れないわね…。
そこで、エプロンをして、人の良さそうな女の人とすれ違う。
「あれ、師匠。派手な人たちを連れてるね。脅してつれてきたのかい?」
「いやあ、どっちかっていうと、俺のほうが捕まったかな?」
「何言ってんだい。師匠を捕まえてもいいことないだろう」
そう言うと、私たちにむかって、
「気をつけなね。お金、だましとられないようにね」
と、ケラケラ笑いながら、立ち去って行った。
えー?! もしや、師匠って、危険人物なの?!
私、危ない人に、案内係を頼んでしまったの?!
思わず、後ずさりすると、
「冗談にきまってんだろ。ロイ坊の師匠だぞ。あのくそ真面目が、そんな奴を信用するか?」
師匠があきれた顔をした。
ああ、確かにね。びっくりしたわ!
やっと細い道をぬけたら、広場にでた。小さなお店がひしめきあっていて、にぎやかだ。
そこへ、猛スピードで走ってくる男の子が見えた。
一体、どうしたのかしら?
すごいスピードのまま、こっちへむかってくる。え、私のほうへ走ってきてるの?!
このままだとぶつかりそう、と気持ちはあせるのに、どっちへよけていいかわからない!
体が動かない! ぶつかるー! と思ったら、さっと体が浮いた。
デュラン王子が私を持ち上げて、横へよけてくれた。
同時に、師匠は一歩前へでて、その男の子を受けとめている。
ああー、びっくりしたわ!
私、こう見えて、運動神経は皆無なの…。
「ありがとう…。デュラン王子」
「いえいえ、アディーのことは、ぼくが守るって言ったでしょ」
「その呼び方、復活するの?」
「ここは下町だから、デューさんって呼んで。うるさいのもいないしね」
うるさいのって、…ロイドか。
確かに、ここで、デュラン王子って呼んだら、まわりの人たちがびっくりするよね。
「わかったわ、デューさん。助けてくれてありがとう」
「どういたしまして、アディー」
語尾にハートがつきそうな甘さで、微笑まれた。
その時、師匠が受けとめた男の子が、息もきれぎれに叫んだ。
「師匠、早く来て! ドーラさんが大変なんだ!」
「ドーラさんが?!」
師匠の顔色がかわった。
私たちの方を見て、
「この子は、俺の弟子で、近くの孤児院の子どもだ。ドーラさんは、そこでお世話をしている女性だ。悪いが、様子を見てくる。あんたたちは、どうする?」
「私も行く!」
考えるよりも先に答えていた。
「じゃあ、おれのいる下町はどうだ? 見たことないだろう? あ、高貴な方々だと、俺だけじゃあ、護衛がたりんか?」
「それなら大丈夫よ。ロイドがぬかりなく手配しているから」
精鋭の騎士たちが、少し離れたところで見守っているのが見える。
何度も言うようだけれど、ロイドは、誰よりも信頼できる騎士だ。
ただ、私に過保護すぎて、ちょっと…というか、かなり変になるだけ。
「まあ、そこの男前の王子さんも、自分の身は守れそうだしな。かなり、やれるんだろう?」
そう言うと、デュラン王子の全身を確かめるように見た。
「一応はね。アデルはぼくが守るよ。安心して」
と、甘いウインクをしてきた。
見とれていた女性が、思わずよろめく。
さすが、魔王。そのウインクなら敵を倒せるわね! すごい威力だもの。
「じゃあ、俺はマル坊を守るとするか。いいか、マル坊?」
マルクは嬉しそうにうなずいた。すっかり、懐いているわ。
甘いもの好きの連帯感がすごいわね。
早速、市場をでて、細い路地を入っていく。
道は、くねくねと曲がっていて、迷路みたい。迷子になったら、帰れないわね…。
そこで、エプロンをして、人の良さそうな女の人とすれ違う。
「あれ、師匠。派手な人たちを連れてるね。脅してつれてきたのかい?」
「いやあ、どっちかっていうと、俺のほうが捕まったかな?」
「何言ってんだい。師匠を捕まえてもいいことないだろう」
そう言うと、私たちにむかって、
「気をつけなね。お金、だましとられないようにね」
と、ケラケラ笑いながら、立ち去って行った。
えー?! もしや、師匠って、危険人物なの?!
私、危ない人に、案内係を頼んでしまったの?!
思わず、後ずさりすると、
「冗談にきまってんだろ。ロイ坊の師匠だぞ。あのくそ真面目が、そんな奴を信用するか?」
師匠があきれた顔をした。
ああ、確かにね。びっくりしたわ!
やっと細い道をぬけたら、広場にでた。小さなお店がひしめきあっていて、にぎやかだ。
そこへ、猛スピードで走ってくる男の子が見えた。
一体、どうしたのかしら?
すごいスピードのまま、こっちへむかってくる。え、私のほうへ走ってきてるの?!
このままだとぶつかりそう、と気持ちはあせるのに、どっちへよけていいかわからない!
体が動かない! ぶつかるー! と思ったら、さっと体が浮いた。
デュラン王子が私を持ち上げて、横へよけてくれた。
同時に、師匠は一歩前へでて、その男の子を受けとめている。
ああー、びっくりしたわ!
私、こう見えて、運動神経は皆無なの…。
「ありがとう…。デュラン王子」
「いえいえ、アディーのことは、ぼくが守るって言ったでしょ」
「その呼び方、復活するの?」
「ここは下町だから、デューさんって呼んで。うるさいのもいないしね」
うるさいのって、…ロイドか。
確かに、ここで、デュラン王子って呼んだら、まわりの人たちがびっくりするよね。
「わかったわ、デューさん。助けてくれてありがとう」
「どういたしまして、アディー」
語尾にハートがつきそうな甘さで、微笑まれた。
その時、師匠が受けとめた男の子が、息もきれぎれに叫んだ。
「師匠、早く来て! ドーラさんが大変なんだ!」
「ドーラさんが?!」
師匠の顔色がかわった。
私たちの方を見て、
「この子は、俺の弟子で、近くの孤児院の子どもだ。ドーラさんは、そこでお世話をしている女性だ。悪いが、様子を見てくる。あんたたちは、どうする?」
「私も行く!」
考えるよりも先に答えていた。
16
お気に入りに追加
373
あなたにおすすめの小説

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。


恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?
夕立悠理
恋愛
ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。
けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。
このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。
なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。
なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる