上 下
27 / 158

ダンスは終わったけど

しおりを挟む
こんな拷問のようなダンスって、ある?!

途中、デュラン王子がきたけれど、ユーリがかわるのを断固拒否。
私の手をにぎってはなさない。子ども?!

ふりほどこうとしても、すごい力でつかまえられている。
うん、獲物の気持ちがわかるわ…。

しかも、いつもは、冷気で私をふるえあがらせているくせに、手を強くにぎって、暑すぎるんですが。
ユーリも体温のある人間だったのね。…なーんて考えてる場合じゃない。

言いたくないけれど、私の手汗がすごいことになってるから。
うん、乙女心が死ぬ。とりあえず、手をはなして!

結局、ユーリとだけ踊り続けるはめに…。

ルイ兄様が、ダンスの途中、すれ違うたび、ププッとふきだす声が聞こえてくる。

笑ってないで、助けなさいよー!

目で訴えるが、涙をうかべて、笑っているだけ。
ほんと、頼りにならないよ。

こうなったら、そう、親友のマルク!
さっきは逃げたけれど、もう一度、チャンスをあげる。
信じてるわ。親友だもの。

ほら、合図を送れば…って、何食べてるの?!
また、マカロン?! のんきだな。
はあ、こっちもダメだわ…。

あっ、そこでダンスを見ているのは、公爵夫人であるレイラおばさま!
ユーリの母上だもの、とめられるんじゃない?

息子さん、奇妙な状態になってますよ? 助けてください!

近づいた時に、必死で目で訴える。が、なぜだか、手をふってきた。

「ユーリ、がんばれ!! アデルちゃんをめぐっての、男たちの戦いね! 楽しいわ~」

…そうね、助けを求める人を間違えたわ。

しかたない。次はだれに助けを求めるか、きょろきょろしていると、ぐいっと腰をひかれた。
目の前に、美しすぎるお顔が!

「ちょっと! ユーリ、もっと離れてよ!」

「ねえ、さっきから、どこ見てるの? おこるよ、アデル」
と、魔王の声が耳にふきこまれる。

だ・か・ら! ほんと、耳に息をふくのをやめてってば!
ぞくっとするじゃない。

そんな私を見て、魔王は、極上の笑顔をみせた。

そして、やっと、ラストの曲が終わった。
私は、いろいろ削り取られ、もう、消えてしまいそうだ。

ユーリはといえば、なんだか、さらに輝きが増し、上機嫌に見える。
さては、私のエネルギーをすいとったな!
魔王かと思ったら、吸血鬼だったのね。
うん、似合いすぎるわ…。

さあ、これでお開きね。私は疲れ果ててます。もう、帰らせて!

が、ここで、ブルージュ国を代表して、ご挨拶が。
もちろん、話をするのは、交渉団の団長、デュラン王子だ。

「みなさまがた、本日は、すばらしいパーティーを開いていただき、ありがとうございます」
甘い微笑みをふりまきながら、話し始めると、もう女性たちはメロメロだ。

気をつけて、中身は魔王だから…。

「これからは、さらに両国が助け合っていけるように、国同士の交流も活発になっていくことを期待しております。まずは、その先陣をきって、アデル王女が我が国を訪問していただけることとなりました」

え、さっき、決まったばかりだよね。もう、言うの? なんか、嫌な予感がするんですが?!

「あまりに嬉しくて、明日、帰国する予定でしたが、私だけ、もう少し滞在させていただくことにいたしました」

え? なんで?! いやいや、帰ろうよ!

「そして、帰国する際に、アデル王女とご一緒できるよう、王太子殿下にご了承していただきました」

はああ? ルイ兄様?! なに、勝手に了承してるの?

ここで、にこにこしながら、ルイ兄様が登場。

「デュラン王子がご一緒してくれたら、道中も安心ですからね。早急に、アデルの訪問の準備を整えたいと思います」

魔王にすっかりまるめこまれている。

そして、お隣さんのご機嫌は急降下。
あんなに暑かったのに、冷気がただよいはじめた。

ユーリさん、寒いよ…。
汗が一気にひいていくから、風邪ひくじゃない…。

「この国のことをもっと知りたいと思いますので、みなさん、滞在中、色々教えてくださいね」
デュラン王子の言葉に、いっせいに、うなずく女性陣。

さすが、魔王。すでに、国民のハートをつかんでる。油断できないわ。
もしや、この国をのっとるつもりかしら?
ルイ兄様なら、即刻、従えられそう。頑固な父が、いまだ王で良かったわ…。

ん? 待って? じゃあ、ブルージュ国への道中、この二人の魔王と一緒ってことよね。
私だけ別便で行かせてもらえませんか?

ほんと、リッカ先生に会うまでの道のりが遠すぎるよ…。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...