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マルクの思い
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真実の愛作戦、実行の日。
ぼく、マルクは、猛烈に後悔していた。
よくわからないような話なのに、アデルが話すとひきこまれてしまう。
できそうな気がしてしまって、いつの間にか、受け入れてしまっていた。
が、真実の愛って、いったい、なんだ?
それに、短い間であっても、仮であっても、アデルの婚約者になるだなんて、無理にきまってる。
相手は、あのユーリ兄様だ。殺されるじゃないか…。
アデルは、ユーリ兄様の熱狂的なファンの妬みにさらされ続けてきたから、どうも、自己評価が低いところがある。
が、くるくると動く表情と、大きな目は人をひきつける。
今は愛らしいと評判だが、きっと、これから、どんどん美しくなっていくことは、ぼくにも想像できる。
しかも、王女らしからぬ気さくさで、親しみやすい。
本人はぶつぶつ言いながらも、真面目で、努力家で、王女の役目はがんばりすぎるほど。
なので、末っ子のアデル王女は、みんなに愛されている。
アデルは、やたらと、ユーリ兄様と距離をとりたがるが、並ぶとお似合いで、目を奪われる二人なのだ。
そして、ぼくにはわかる。
ユーリ兄様が、アデルを手放すわけがないと。
小さい頃から天才で、魔力が強く、並外れて美しかったユーリ兄様には、人がいっぱい近づいてきた。
が、だれにも、なににも、興味を示さなかった。
しつこい人は相手がだれであっても、容赦しない。そういう点では、血も涙もないのだ。
そんなユーリ兄様が、アデルと出会って、かわった。
宝石のように美しいけれど、何もうつしていないように見えた目が、アデルをうつし、息づいた。
そして、その目は、いつもアデルを追っている。
アデルが遊びに来る時、なぜだか、早く帰ってくる。しかも、急に決まった訪問であってもだ。
それに、ぼくだけの時に、お土産なんて買ってきたこともないのに、アデルが来ていると、美味しいお菓子を買ってくるんだ。
こんなに、アデルだけが特別なのに、アデル本人には、一ミリも伝わっていない。
それどころか、怖がられている。そして、それもしょうがない。
アデルが嫌がったり、怒ったり、感情をむきだしにすると、ユーリ兄様はとても喜ぶ。
だから、そういうことをしては喜んでいるから、嫌がられるのも無理はない。
真実の愛はわからないけれど、ユーリ兄様の愛情の表し方がまずいのは、ぼくにもわかる。
そして、そんなとんでもないユーリ兄様から婚約者を奪う役を任されたぼくは、朝から緊張していた。
緊張しすぎて、…その後の記憶はない。
が、気がついた時、なぜか、ユーリ兄様が、目の前で、優雅に紅茶を飲んでいた。
機嫌は良さそうだ。
あれ、アデルはどこだろう?
まわりを見まわしてみる。いない。
「アデルなら、帰ったよ」
「え? いつの間に」
「マルクが意識をとばしている間にね」
そっか、ユーリ兄様が、ご機嫌ってことは、あの変な作戦はやまったんだな。
ほっとしたら、のどがかわいた。
目の前には、冷え切った紅茶がある。カップをとって、のどをうるおす。
「マルクが、真実の愛の相手なんだって?」
ブーッ!
「ちょっと、マルク、汚いんだけど」
ユーリ兄様が合図をする。メイドが、タオルをもって、すぐさまとんできた。
「ご、ごめんなさい…。びっくりして」
「何に、謝ってるの?」
空気が一気に冷えてきた。
「えっと、紅茶をふいたこと…です」
「ああ、そっちね。それで、マルクが真実の愛の相手なの?」
魔力がもれだしている目が、ぼくを見ぬく。
ごめん、アデル! 無理だから!
「ちがう…、ちがいます! ぼくたち、ただの友達です!」
「…」
間が怖い。なんで、だまってるの?
すると、ユーリ兄様の目から魔力が消えた。
「わかってるよ、そんなこと。もし、本当にそうなら、とっくの昔に消してる」
え! なにを? なにを消すの?!
まさか、ぼくを? 血のつながった弟を?!
悪いけど、アデルには犠牲になってもらおう。
まわりへの被害が甚大だから!!
ぼく、マルクは、猛烈に後悔していた。
よくわからないような話なのに、アデルが話すとひきこまれてしまう。
できそうな気がしてしまって、いつの間にか、受け入れてしまっていた。
が、真実の愛って、いったい、なんだ?
それに、短い間であっても、仮であっても、アデルの婚約者になるだなんて、無理にきまってる。
相手は、あのユーリ兄様だ。殺されるじゃないか…。
アデルは、ユーリ兄様の熱狂的なファンの妬みにさらされ続けてきたから、どうも、自己評価が低いところがある。
が、くるくると動く表情と、大きな目は人をひきつける。
今は愛らしいと評判だが、きっと、これから、どんどん美しくなっていくことは、ぼくにも想像できる。
しかも、王女らしからぬ気さくさで、親しみやすい。
本人はぶつぶつ言いながらも、真面目で、努力家で、王女の役目はがんばりすぎるほど。
なので、末っ子のアデル王女は、みんなに愛されている。
アデルは、やたらと、ユーリ兄様と距離をとりたがるが、並ぶとお似合いで、目を奪われる二人なのだ。
そして、ぼくにはわかる。
ユーリ兄様が、アデルを手放すわけがないと。
小さい頃から天才で、魔力が強く、並外れて美しかったユーリ兄様には、人がいっぱい近づいてきた。
が、だれにも、なににも、興味を示さなかった。
しつこい人は相手がだれであっても、容赦しない。そういう点では、血も涙もないのだ。
そんなユーリ兄様が、アデルと出会って、かわった。
宝石のように美しいけれど、何もうつしていないように見えた目が、アデルをうつし、息づいた。
そして、その目は、いつもアデルを追っている。
アデルが遊びに来る時、なぜだか、早く帰ってくる。しかも、急に決まった訪問であってもだ。
それに、ぼくだけの時に、お土産なんて買ってきたこともないのに、アデルが来ていると、美味しいお菓子を買ってくるんだ。
こんなに、アデルだけが特別なのに、アデル本人には、一ミリも伝わっていない。
それどころか、怖がられている。そして、それもしょうがない。
アデルが嫌がったり、怒ったり、感情をむきだしにすると、ユーリ兄様はとても喜ぶ。
だから、そういうことをしては喜んでいるから、嫌がられるのも無理はない。
真実の愛はわからないけれど、ユーリ兄様の愛情の表し方がまずいのは、ぼくにもわかる。
そして、そんなとんでもないユーリ兄様から婚約者を奪う役を任されたぼくは、朝から緊張していた。
緊張しすぎて、…その後の記憶はない。
が、気がついた時、なぜか、ユーリ兄様が、目の前で、優雅に紅茶を飲んでいた。
機嫌は良さそうだ。
あれ、アデルはどこだろう?
まわりを見まわしてみる。いない。
「アデルなら、帰ったよ」
「え? いつの間に」
「マルクが意識をとばしている間にね」
そっか、ユーリ兄様が、ご機嫌ってことは、あの変な作戦はやまったんだな。
ほっとしたら、のどがかわいた。
目の前には、冷え切った紅茶がある。カップをとって、のどをうるおす。
「マルクが、真実の愛の相手なんだって?」
ブーッ!
「ちょっと、マルク、汚いんだけど」
ユーリ兄様が合図をする。メイドが、タオルをもって、すぐさまとんできた。
「ご、ごめんなさい…。びっくりして」
「何に、謝ってるの?」
空気が一気に冷えてきた。
「えっと、紅茶をふいたこと…です」
「ああ、そっちね。それで、マルクが真実の愛の相手なの?」
魔力がもれだしている目が、ぼくを見ぬく。
ごめん、アデル! 無理だから!
「ちがう…、ちがいます! ぼくたち、ただの友達です!」
「…」
間が怖い。なんで、だまってるの?
すると、ユーリ兄様の目から魔力が消えた。
「わかってるよ、そんなこと。もし、本当にそうなら、とっくの昔に消してる」
え! なにを? なにを消すの?!
まさか、ぼくを? 血のつながった弟を?!
悪いけど、アデルには犠牲になってもらおう。
まわりへの被害が甚大だから!!
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