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魔王、降臨

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「それで、アデル。さっきのセリフ、なんなの?」

「えっと、さっきの? とは、…なんだっけ?」
ちょっと、とぼけてみる。

「盛大に愛の告白をしてたよね。友情かと思ってたら、真実の愛なんだって? それと」
と、言って、マルクのほうを、ゴミでも見るかのような目で見た。

マルク、目を閉じていて良かったね。
開けてたら、トラウマになる怖さだったよ。

意識をとばし続けているマルクが、なんだかうらやましい。
この目の前にいる、魔王から逃げられてるんだもんね。
まあ、今だけだけど…。

私は、頭をフル回転させた。
どう答えれば、助かるのか。

そして、ひらめきました!

なんだ、簡単じゃない。真実の愛作戦のままでいいんじゃない?
だって、ユーリにとってもいいことだし、ユーリさえ賛同すれば、すぐさま結婚はやまるだろう。

ということで、演技続行!

「そう、その通りよ! マルクとの真実の愛に気づいたの。なので、ユーリとは、婚約を取り消したいと思って。ユーリもそのほうが、いいよね。ユーリだったら、選び放題。ものすごい美女とだって、結婚できるよ。だから、私たちみたいに、お互い好きでもない政略結婚はやめにしよう!」

どうだ! 一気に言いきった!
ユーリのほうは、怖くて見れないけど。

「へええ、驚いたよ、アデル。俺のことまで気遣ってくれてたんだね」

口調は穏やかなのに、冷え冷えとした声に凍えてしまいそう。
なんか、ここ、寒いよ…。

それに、俺って言った?
まずい…。

ユーリが、自分のことを俺って言ったのは、一度しか聞いたことがない。
なぜだか、猛烈に怒っている時だった。
その後、制御できなくなった魔力が暴走したっけね…。

私、生きて帰れますか?

「俺が、嫌なのに、王命だから政略結婚するように見えるんだ、アデルには。なめられたもんだね」

とんでもない! 断じて、なめてません!

「じゃあ、とりあえず、マルクとは、いつから真実の愛をはぐくんでるの?」

そんなこと聞かれるとは思ってなかった。
頭がフリーズしたものの、なんとか答える。

「いつから…、うーん。いつの間にか、かな?」

うん、あいまいで、いい答えがでた。思わず、ほっとする。

「で、マルクのどこが好きなの?」

これまた、難問だ。

「えっと…、寡黙なところ?」

「寡黙?」

いかんいかん、さっきの芝居にひっぱられてた。

「ちがった。えっと、…えっと、優しいところ!」

うん、これが無難だ。

「じゃあ、真実の愛って、なに?」

あ、これなら、マルクに説明したみたいに、言えばいいわね。

「えっと、天国みたいな状態?」

「ってことは、マルクといると、天国みたいな状態ってこと?」

「いや、それはない。…じゃない。そうかも?」

「じゃあ、天国みたいな状態って、どんな状態?」

すごい勢いで質問がとんでくる。

もう、答えるのにせいいっぱいなんだけど…。

「うーん、好きな本が読み放題の状態かな?」

「なるほどね」

あれ、なんか、私、失敗した?!


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