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マルクに会う

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※幼少期、今回も続きます。


そして、二度目の再会は、すぐにやってきた。

今度は、私が母に連れられて、公爵家に遊びに行った。
が、8歳年上のユーリは、まだ学校から帰ってきていなかった。

ここで、登場してきたのが、ユーリの弟であり、私より1歳年上のマルクである。
おっとりとした感じで、ユーリとはまるで違う。
なんだか、年下みたい。

が、すぐに親近感がわいた。
というのも、手に、私の好きな絵本をかかえていたから。

思わず、近寄っていき、
「ねえ、その絵本、好き?」
と、私が聞くと、マルクはうなずいた。

「わたしも好きなの」
そう言うと、マルクはほほえんだ。

本が好きな子に、悪い子はいない。しかも、同じ本が好きなら、なおさらだ。
あっという間に、マルクとはうちとけた。

テーブルに、マルクの絵本をひろげて、私の好きなところを説明していく。
この世界に生まれて、初めて、本を語り合う楽しみに、すっかり私はうかれていた。

「あらあら、すぐに仲良くなったわね。年も近いし、これから学校で一緒になるから、安心だわ」
と、母と公爵夫人が優雅にお茶を飲みながら、談笑しているのが聞こえる。

「ただいまかえりました」
と、そこへ、ユーリが帰ってきた。

部屋に入ってくる姿は、やはり、まぶしい。

そして、音もなく(天使だから)近寄ってきたかと思うと、
「王妃様、アデル王女様、ようこそ」
そう言って、華麗なおじぎをみせた。

まさに完璧。
前世の記憶がある私からしてみれば、いったい、この子はいくつなの?と、思うけれど、まあ、天使だから年は関係ないよね。

「アデルちゃんとマルク、もう仲良くなったのよ。ほら、二人とも、本がすきでしょ」
公爵夫人がユーリに話しかけた。

「へえ」
冷たくて、小さな声。

え? ユーリから聞こえたように思うけれど、聞き間違い?
だって、天使ににつかわしくない声だよね。

またもや、体がぶるっとふるえる。
私はとなりを見た。
横にいるマルクもふるえている。

二人を見下ろすように立っているユーリは、もはや天使ではない笑みをうかべていた。

「二人でどんな本を読んでるの? 見せて?」
マルクが強くにぎっていたはずの絵本が、いつの間にか、ユーリの手元に移っている。

え、いつの間に? 
もしや、うばったの? って、馬鹿力?
こわいんですが…。

ユーリは、きれいにほほえんで言った。
「ひどいなあ。ぼく、何もしてないよ。ねえ、マルク」

私はとっさに口を手でかくして、マルクを見た。

え? 心の声、今、でてた?!

マルクには通じたらしく、おびえた顔でうなずいた。

「クククッ…。ふたりとも、ほんと、ばか…かわいいよねえ」

ばか?! この人、今、ばかって言った?!

今や、背中に黒い羽が見える気がするユーリを、私はにらみつけた。

「アデル王女様って、おもしろいね。ねえ、アデルって呼んでいい?」

「いや!」

「ありがとう、アデル。ぼくのことは、ユーリって呼んでね」

こわいよ! 話がつうじない!!







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