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声
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しゃがみこんでしまった私を取り囲むようにして、木々の葉っぱのこすれる音が一層うるさくなった。
その時だ。
(ねえ、……が見えるの?)
え……? 今、人の声がしなかった……?
葉っぱの音に紛れて人の声が聞こえた気がした。
でも、こんなところに人がいるわけない。聞き間違いだよね。
そう思った時、また聞こえた。
(ねえねえ、……が見えるの?)
おそるおそる顔をあげてみた。
でも、まわりは真っ暗のまま。何も見えない。
やっぱり、聞き間違いなのかも……と、自分をごまかそうとした瞬間、
(ねえ、森里さんって妖精が見えるの?)
今度はごまかしようがないくらいはっきりと聞こえた。
体に痛みがはしった。
忘れたくても忘れられない言葉だったから。
2年前のあの時の……!
でも、なんで……!?
驚きと怖さで、更に身を固くする私を笑うように、次々と声が聞こえてきた。
(冬樹君から聞いた。でも、それってうそだよね!)
(妖精なんているわけないし)
(妖精って、おとぎばなしとかにでてくるやつだよね!)
(いるなら、ここに呼んでー)
ばかにしたような声。
一瞬にして、2年前のあの日、あの教室にもどってしまったよう……。
しゃがみこんだ体は、どんどん固く冷たくなっていく。
今や葉っぱの音は完全に消え、クスクスと笑う声が私をとりかこんでいる。
やめて……!
そう、叫びたいのに声がでない。
両手で耳をふさいでも、声はなんなくすりぬけてくる。
(森里さん、なにも言えないんだね。やっぱり、妖精を見たってうそなんだ。冬樹が不思議なものが好きだから、気をひこうとして、うそついたんだよね!)
違う! 本当に見えるから! うそなんかついてない!
そう言いたいのに、あの時みたいに、声がでてこない。
すると、ばかにするような笑い声が更に大きくなった。
(冬樹君だって、うそつきは嫌いだよー!)
(そうだそうだ! うそつきなんて、だーいきらーい!)
(うそなんてつくなー!)
(そうよそうよ! うそつきなんて、だーいきらーい!)
(みてみて、うそつきがここにいるよー!)
(うそつきはかえれー!)
(うそつきー! うそつきー!)
大合唱のように重なる声が、私を責め立てる。
(はるちゃん。ぼくにうそついたの? ほんとうは妖精が見えないの? やっぱり、妖精はいないの?)
今度は冬樹君の悲しそうな声。
その声にはじかれるようにして、私の声が外へと飛び出した。
「うそなんかじゃない! 私は、うそなんかついてない! 本当に妖精が見えるから!」
私は耳をふさいで、しゃがみこんだまま、大声で叫んだ。
「そんなことは、どうでもいい! それより、目をとじるな!」
突然、近くから、どなりつけられた。
びっくりして目をあけたが、何も見えない。
いや、ちがう。
うっすらとだけど、ほのかな光が目の前にあった。
その時だ。
(ねえ、……が見えるの?)
え……? 今、人の声がしなかった……?
葉っぱの音に紛れて人の声が聞こえた気がした。
でも、こんなところに人がいるわけない。聞き間違いだよね。
そう思った時、また聞こえた。
(ねえねえ、……が見えるの?)
おそるおそる顔をあげてみた。
でも、まわりは真っ暗のまま。何も見えない。
やっぱり、聞き間違いなのかも……と、自分をごまかそうとした瞬間、
(ねえ、森里さんって妖精が見えるの?)
今度はごまかしようがないくらいはっきりと聞こえた。
体に痛みがはしった。
忘れたくても忘れられない言葉だったから。
2年前のあの時の……!
でも、なんで……!?
驚きと怖さで、更に身を固くする私を笑うように、次々と声が聞こえてきた。
(冬樹君から聞いた。でも、それってうそだよね!)
(妖精なんているわけないし)
(妖精って、おとぎばなしとかにでてくるやつだよね!)
(いるなら、ここに呼んでー)
ばかにしたような声。
一瞬にして、2年前のあの日、あの教室にもどってしまったよう……。
しゃがみこんだ体は、どんどん固く冷たくなっていく。
今や葉っぱの音は完全に消え、クスクスと笑う声が私をとりかこんでいる。
やめて……!
そう、叫びたいのに声がでない。
両手で耳をふさいでも、声はなんなくすりぬけてくる。
(森里さん、なにも言えないんだね。やっぱり、妖精を見たってうそなんだ。冬樹が不思議なものが好きだから、気をひこうとして、うそついたんだよね!)
違う! 本当に見えるから! うそなんかついてない!
そう言いたいのに、あの時みたいに、声がでてこない。
すると、ばかにするような笑い声が更に大きくなった。
(冬樹君だって、うそつきは嫌いだよー!)
(そうだそうだ! うそつきなんて、だーいきらーい!)
(うそなんてつくなー!)
(そうよそうよ! うそつきなんて、だーいきらーい!)
(みてみて、うそつきがここにいるよー!)
(うそつきはかえれー!)
(うそつきー! うそつきー!)
大合唱のように重なる声が、私を責め立てる。
(はるちゃん。ぼくにうそついたの? ほんとうは妖精が見えないの? やっぱり、妖精はいないの?)
今度は冬樹君の悲しそうな声。
その声にはじかれるようにして、私の声が外へと飛び出した。
「うそなんかじゃない! 私は、うそなんかついてない! 本当に妖精が見えるから!」
私は耳をふさいで、しゃがみこんだまま、大声で叫んだ。
「そんなことは、どうでもいい! それより、目をとじるな!」
突然、近くから、どなりつけられた。
びっくりして目をあけたが、何も見えない。
いや、ちがう。
うっすらとだけど、ほのかな光が目の前にあった。
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