とけい屋

水無月あん

文字の大きさ
上 下
4 / 7

キャラメル

しおりを挟む
家に帰ると、すぐに、紙袋の中から、キャラメルをひとつとりだした。

ものすごく小さくて、やわらかい。
透明のつつみがみをはがして、口に放り込んだ。

やさしい甘さが口いっぱいにひろがっていく。
美味しい……!

でも、小さすぎるせいか、あっという間にとけてなくなった。
ものたりない。

だから、もうひとつ、もうひとつ……。

気がついた時には、袋はからっぽ。
とけてしまうのが早いキャラメルだけれど、体の中にたまっていたイライラも、一緒にとけて消えてしまったよう。

だって、食べ終わって一番に思ったのは、ゆうすけのことだったから。
このキャラメル、ゆうすけにも食べさせてあげたいな……。


◇ ◇ ◇


次の日、ぼくは朝早く目がさめた。
今日は祭日で学校は休みだけれど、早く、ゆうすけに会いにいって謝りたかったから。

ぼくは、ごはんを食べたら、すぐに家を飛び出した。

そうだ、あのお店によって、キャラメルを買っていこう!

確か、こっちの道だったよね……?

うろうろしながら、やっと、それらしき道にでた。

あった! あのお店だ!

でも、あんなに静かだったお店が、なんだかにぎやか。
いりぐちの扉が開いていて、色々な人たちが忙しそうに出たり入ったりしている。

何かあったのかな……?

あわててかけよった。

開いたままの扉には、昨日と同じく「とけい屋」という看板はあるけれど、その下の「おかし、あります」という小さな張り紙はなかった。

中をのぞいていると、お店の中からエプロンをした人がでてきた。
若い男の人だ。

ぼくは思い切って、聞いてみた。

「あの、……ここにお菓子を買いに来たんですが、何かあったんですか?」

男の人が、一瞬、きょとんとしてから、
「お菓子を買いに? ここへ?」
と、聞きなおしてきた。

「はい、昨日ここで買っていったキャラメルが美味しかったから。また、買いに来たんです」

男の人は、首をかしげた。

「どこかと間違えてない? ここは、ぼくの祖母が時計屋をしていたんだけれど、店を閉めてからは、ずっと、空き家だったんだよ」

え……?

その時、作業着を着た人が、お店の中からでてきた。

「これらが中にあったものです。確認お願いします」

そう言って、男の人に小さな段ボール箱を手渡すと、また、お店の中へと入っていった。
ふたのあいたままの箱の中身がぼくにも見えた。

「あっ、これっ……!」

思わず、声がでた。

だって、箱の中には、見覚えのあるものが入っていたから。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おかたづけこびとのミサちゃん

みのる
児童書・童話
とあるお片付けの大好きなこびとさんのお話です。

とあるぬいぐるみのいきかた

みのる
児童書・童話
どっかで聞いたような(?)ぬいぐるみのあゆみです。

なんでおれとあそんでくれないの?

みのる
児童書・童話
斗真くんにはお兄ちゃんと、お兄ちゃんと同い年のいとこが2人おりました。 ひとりだけ歳の違う斗真くんは、お兄ちゃん達から何故か何をするにも『おじゃまむし扱い』。

小さな王子さまのお話

佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』…… **あらすじ** 昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。 珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。 王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。 なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。 「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。 ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…? 『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』―― 亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。 全年齢の童話風ファンタジーになります。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

子猫マムの冒険

杉 孝子
児童書・童話
 ある小さな町に住む元気な子猫、マムは、家族や友達と幸せに暮らしていました。  しかしある日、偶然見つけた不思議な地図がマムの冒険心をかきたてます。地図には「星の谷」と呼ばれる場所が描かれており、そこには願いをかなえる「星のしずく」があると言われていました。  マムは友達のフクロウのグリムと一緒に、星の谷を目指す旅に出ることを決意します。

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

処理中です...