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王宮で探る 20
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「説明しにくいんですが、私が気になったのは、邪気がついた時の反応というか、邪気の影響みたいなことなんです……。たとえば、ジュリアンさんの場合。最初にうちの家に来た時、手にすごく邪気がついていて、痛みが激しかったですよね。で、今さっきも、耳に邪気がはりついたとたん、耳が聞こえなくなった。つまり、邪気の影響がすぐに反映されているというか……。そう思って考えたら、コリーヌ様も邪気がついている間、ずっと頭が痛かったんですよね」
「ええ。ライラちゃんにとってもらうまで、長い間、苦しめられたわね。……でも、邪気がついたら、みんな、そうなるのじゃないの?」
と、不思議そうに言ったコリーヌ様。
「私が今まで邪気をすいとった人たちは、邪気がついていても、変な話、なじんでいるように見える人もかなりいます。私の場合、相手に気づかれないよう、こっそり邪気をすいとることが多いんですが、すいとっても体調の変化が見てわかるくらいかわったりはしないんです。確認してはいないけれど、多分、なんとなく体調がすっきりしたみたいな人が一番多いのかなと思います」
「そうなのね……。私の場合は、ライラちゃんに邪気をすいとってもらった途端、驚くほど楽になったわ」
コリーヌ様の言葉に、ジュリアンさんが「俺もです」と、うなずいた。
「そういえば、俺もライラに初めて会った時はそうだった」
と、アル。
「あ、そうだね。アルはあの時、顔がみえないくらい邪気がついていて、動けなくなってたもんね。多分、アルは邪気がちょっとずつ、たまって、私が会ったときは限界がきてたのかも。あの時のアルみたいに、あまりに邪気がたまると、急に体調に影響がでることはあると思う」
「そう言われればそうだな。あの時、ライラに会う直前までは、普通に動けてたからな。それに、あれ以来、ライラに会うたび、邪気がついてたら、その都度、すいとってもらってたけど、俺自身は邪気がついているかどうかはわからない。ただ、ライラにすいとってもらうと、体が軽くなって体調がいいとは思ったが」
「多分、そんな人がほとんどだと思う。以前、私の父が、仕事で隣国に行った時、結構、しっかりと邪気をつけて帰ってきたことがあったけど、父に自覚はなく、私が邪気をとったら、『疲れがとれた気がする』と言ってたし。つまり、邪気をとっても、それくらいの違いしか感じなかったってことなんだよね」
「ああ……、あの、ライラが痛がった種がとれた邪気だろう?」
と、アルが顔をしかめた。
「よく覚えてたね、アル」
「当たり前だ。触ったら痛い種だなんて、どう考えても危ないだろう。だから、俺はすぐに捨てろと言ったのに、ライラは『痛い! ピリピリする!』とか叫びながら、目を輝かせて種を触ってたからな」
「だって、触ったら痛いっていう種は初めてだったから、珍しくて。それに、私はどんな種も捨てずに植えるよ」
「やっぱり、ライラちゃんって勇者だねえ……。で、ちなみに、どうなったの、その変な種?」
と、ジュリアンさんが身をのりだして、聞いてきた。
「それが色々な手袋をして触っても、なぜか、ぴりぴりした痛みが伝わってくる不思議な種だったんだけど、コリーヌ様にいただいたマーラの毛の手袋をして触ったら、痛みが消えて、なんと種がひかりだしたの! しかも、その種を植えたら地面が光って、どんどん成長しはじめて……。更に、他の種も影響を受けたみたいで、その種に同調して成長をあわせたから、いっぺんに花がさいて、消えたんだよ。ほんと、邪気からとれる種って、それぞれ違うから、すごくおもしろいでしょう!」
思わず、その時を思い出して、ジュリアンさんに興奮状態で説明した私。
コリーヌ様が微笑みながら、うなずいた。
「ライラちゃんからのお手紙でそのことを知ったときは、とても驚いたわ」
「つまり、マーラの手袋をしたら邪気がとれるってこと? なら、俺もマーラの手袋を買おうかな」
と、ジュリアンさんが真剣な顔で言った。
「それなら、マーラの手袋を、今度、ジュリアンにもプレゼントするわ。あたたかいから。ただし、私がマーラの手袋をプレゼントした人たちは誰も不思議な体験はしていないから、そこは期待しないで。ライラちゃんが使ったから、そんな現象が起きたのだと思うわ」
「コリーヌ様、ありがとうございます。マーラの手袋、楽しみに待ってます。……でも、マーラの手袋だけじゃだめで、ライラちゃんがいれば完璧ってことだよね。なるほど。では、邪気がつきやすい俺はやっぱり、ライラちゃんのそばにいよう」
「おい、ライラに近寄るな。かわりに、マーラの毛で全身を覆ってやる」
「いや、だから、今、コリーヌ様が、ライラちゃんじゃないとマーラでは邪気がとれないって言ってただろう?」
またもや、わいわいと言い合うふたり。
「ほんとに、ふたりは仲がいいね」
と、ほっこりしつつ口にしたら、アルが不満そうな顔をした。
「いや、ジュリアンとは、ただの腐れ縁だ」
「え、ひどーい、アル! 無二の親友だろう?」
ジュリアンさんがふざけて言うのを、アルはまるっと無視して、「ライラ、話の続きを頼む」と、淡々と言った。
「ええ。ライラちゃんにとってもらうまで、長い間、苦しめられたわね。……でも、邪気がついたら、みんな、そうなるのじゃないの?」
と、不思議そうに言ったコリーヌ様。
「私が今まで邪気をすいとった人たちは、邪気がついていても、変な話、なじんでいるように見える人もかなりいます。私の場合、相手に気づかれないよう、こっそり邪気をすいとることが多いんですが、すいとっても体調の変化が見てわかるくらいかわったりはしないんです。確認してはいないけれど、多分、なんとなく体調がすっきりしたみたいな人が一番多いのかなと思います」
「そうなのね……。私の場合は、ライラちゃんに邪気をすいとってもらった途端、驚くほど楽になったわ」
コリーヌ様の言葉に、ジュリアンさんが「俺もです」と、うなずいた。
「そういえば、俺もライラに初めて会った時はそうだった」
と、アル。
「あ、そうだね。アルはあの時、顔がみえないくらい邪気がついていて、動けなくなってたもんね。多分、アルは邪気がちょっとずつ、たまって、私が会ったときは限界がきてたのかも。あの時のアルみたいに、あまりに邪気がたまると、急に体調に影響がでることはあると思う」
「そう言われればそうだな。あの時、ライラに会う直前までは、普通に動けてたからな。それに、あれ以来、ライラに会うたび、邪気がついてたら、その都度、すいとってもらってたけど、俺自身は邪気がついているかどうかはわからない。ただ、ライラにすいとってもらうと、体が軽くなって体調がいいとは思ったが」
「多分、そんな人がほとんどだと思う。以前、私の父が、仕事で隣国に行った時、結構、しっかりと邪気をつけて帰ってきたことがあったけど、父に自覚はなく、私が邪気をとったら、『疲れがとれた気がする』と言ってたし。つまり、邪気をとっても、それくらいの違いしか感じなかったってことなんだよね」
「ああ……、あの、ライラが痛がった種がとれた邪気だろう?」
と、アルが顔をしかめた。
「よく覚えてたね、アル」
「当たり前だ。触ったら痛い種だなんて、どう考えても危ないだろう。だから、俺はすぐに捨てろと言ったのに、ライラは『痛い! ピリピリする!』とか叫びながら、目を輝かせて種を触ってたからな」
「だって、触ったら痛いっていう種は初めてだったから、珍しくて。それに、私はどんな種も捨てずに植えるよ」
「やっぱり、ライラちゃんって勇者だねえ……。で、ちなみに、どうなったの、その変な種?」
と、ジュリアンさんが身をのりだして、聞いてきた。
「それが色々な手袋をして触っても、なぜか、ぴりぴりした痛みが伝わってくる不思議な種だったんだけど、コリーヌ様にいただいたマーラの毛の手袋をして触ったら、痛みが消えて、なんと種がひかりだしたの! しかも、その種を植えたら地面が光って、どんどん成長しはじめて……。更に、他の種も影響を受けたみたいで、その種に同調して成長をあわせたから、いっぺんに花がさいて、消えたんだよ。ほんと、邪気からとれる種って、それぞれ違うから、すごくおもしろいでしょう!」
思わず、その時を思い出して、ジュリアンさんに興奮状態で説明した私。
コリーヌ様が微笑みながら、うなずいた。
「ライラちゃんからのお手紙でそのことを知ったときは、とても驚いたわ」
「つまり、マーラの手袋をしたら邪気がとれるってこと? なら、俺もマーラの手袋を買おうかな」
と、ジュリアンさんが真剣な顔で言った。
「それなら、マーラの手袋を、今度、ジュリアンにもプレゼントするわ。あたたかいから。ただし、私がマーラの手袋をプレゼントした人たちは誰も不思議な体験はしていないから、そこは期待しないで。ライラちゃんが使ったから、そんな現象が起きたのだと思うわ」
「コリーヌ様、ありがとうございます。マーラの手袋、楽しみに待ってます。……でも、マーラの手袋だけじゃだめで、ライラちゃんがいれば完璧ってことだよね。なるほど。では、邪気がつきやすい俺はやっぱり、ライラちゃんのそばにいよう」
「おい、ライラに近寄るな。かわりに、マーラの毛で全身を覆ってやる」
「いや、だから、今、コリーヌ様が、ライラちゃんじゃないとマーラでは邪気がとれないって言ってただろう?」
またもや、わいわいと言い合うふたり。
「ほんとに、ふたりは仲がいいね」
と、ほっこりしつつ口にしたら、アルが不満そうな顔をした。
「いや、ジュリアンとは、ただの腐れ縁だ」
「え、ひどーい、アル! 無二の親友だろう?」
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