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王宮で探る 12
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守るといっても、私ができることと言えば、もちろん、邪気が見えて、邪気をすいとれることしかない。
ということで、どれだけ種に威嚇されようと、怖いなんて言っていられない!
自分のできることに集中しよう!
まずは、イザベル様の邪気からとれた種を詳しく確認。
そう思って、紋様が動きまくる種を手に持ち、顔を近づけていく。
「ライラ、ちょっと待て! 何をしようとしてる!?」
アルがあわてた様子で叫んだ。
「まずは、匂いをかいでみようと思って。さっき、イザベル様に会った時にね、背中の黒い翼のような邪気が、大きくはばたいて見えたの。その時、かすかに、甘い匂いがしたんだよね。ジュリアンさんの種の匂いと同じだと思う。種も匂うと思うから、確認しておきたくて!」
勢い込んで、私の考えを言うと、アルが顔をしかめた。
「……つまり、ライラは、この種に鼻を近づけようとしたのか? やめろ! 危ないだろ!」
「そんな不気味な種に顔を近づけるなんて、ライラちゃんって、もしや、妖精じゃなくて、勇者じゃない!? でも、アルの言う通り、やめといたほうがいいって! なんか、その動きまくってる、グリシア侯爵家の紋章そっくりのやつ、噛みつく気、満々って感じだし……」
「そうよ、ライラちゃん。絶対に無理はしないで」
と、コリーヌ様も、心配そうに言った。
「心配してくださって、ありがとうございます。でも、種からは邪気がでていないから、危害を加えられるってことはないと思うんです。万が一、噛みつきそうなら、さっとよけますから、大丈夫です。安心してください!」
そう言いながら、種を持った手に顔を近づけようとすると、アルがものすごい勢いで、種を持つ私の手を両手でにぎりこんできた。
「安心なんてできるわけないだろ! もし、種に顔を近づけるつもりなら、このまま手を離さない。それでも、いいか?」
「え? このまま? ……いやいや、おかしいよね? いいわけないよね!?」
私はあせって、アルの手から自分の手をはずそうとする。
が、がっちり捕獲されていて、びくともしない。
アルは、ふっと表情をゆるませて言った。
「俺は別に構わないが。いや、むしろ、ずっと、このままでもいい」
「グフッ……。もう、ダメだ! 隠そうとしないアルの本音が怖すぎて、笑える!」
ジュリアンさんが、またもや爆笑し始めた。
見ると、コリーヌ様も楽しそうに笑っている。
うん、これは恥ずかしい……。
早く手を離してもらわないと!
「わかったから、アル……。とりあえず、種の紋様の動きがおさまるまで、テーブルにおいておく。匂いの確認はあとにするから」
そう言うと、やっと私の手は自由になった。
ということで、私は、かわりにジュリアンさんの邪気からとれた種を手にとり、コリーヌ様の前へと動かした。
「このジュリアンさんの邪気からとれた種は、少し甘い香りがするんです。時間がたって、薄くなってはいますが、まだ、匂います。コリーヌ様、この香りに覚えがあるかどうか、確認していただいてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
コリーヌ様は種を手にとり、そっと顔をちかづけた。
「本当ね。かすかに甘い香りがするわ……。あ、この香り……。私が、使っていた髪用のクリームの香りと同じじゃないかしら……」
髪用のクリーム……。アルと同じ意見だ。
思わず、アルの方を見ると、アルが私にうなずいてきた。
アルが、コリーヌ様に言った。
「俺もジュリアンのその種を匂った時、すぐに、母上の髪用のクリームの匂いを思い出した」
「あら、アル。私の髪用のクリームの香りを知っていたの?」
コリーヌ様が意外そうに言った。
「以前、パーティーでエスコートするため、ここへ、母上を迎えに来た時、俺の髪を母上がクリームを使って整えてくれたことがあっただろう? その時、少し甘い匂いがした。独特の甘さだったから、覚えていたんだ。母上、現物があれば、見せてもらえないか?」
「それが、今は別のクリームを使っているのよ。でも、もしかしたら……」
そういうと、コリーヌ様は、テーブルの上にあった小さなベルを優雅な仕草で鳴らした。
「失礼いたします」
即座に、メリルさんがお部屋に入ってきた。
「メリル。私が、以前、使っていた青い陶器の入れ物に入った髪用のクリームがあったでしょう? ハンナが紹介してくれたあの髪用のクリームよ。まだ、買い置きが残っているかしら?」
「いえ、ございません。注文しておきましょうか?」
「ええ、お願い。ひとつでいいわ」
と、コリーヌ様が、メリルさんに頼んだ。
「メリル。ひとつくらい、保管している場所に残っていないのか?」
今すぐ、現物を確認したい様子のアルが、メリルさんに食い下がった。
すると、メリルさんはアルにむかって、きっぱりと言った。
「いえ、ございません。コリーヌ様の御身に直接つけられるお化粧類や髪のクリームなどの保管は、毎日、私が確認しておりますから」
なるほど……。さすがは、コリーヌ様が信頼されるほどのベテラン侍女メリルさん。
なんて、頼もしいお仕事っぷり!
が、私には、クリームの現物より、今の会話で気になったことがある。
そう、そのクリームをコリーヌ様に紹介したハンナさんとやらだ。
ハンナさんに話を聞けば、何か手がかりがあるかも!
私は、早速、コリーヌ様に聞いてみた。
「今、ハンナさんが紹介してくれたクリームと言われましたが、ハンナさんとは、どなたなのですか? お会いして、お話を聞くことができますか?」
※ ご無沙汰しております! バタバタしておりまして、久々の更新になってしまいました!
不定期な更新で、読みづらいと思いますが、読んでくださった方、本当にありがとうございます!!
ということで、どれだけ種に威嚇されようと、怖いなんて言っていられない!
自分のできることに集中しよう!
まずは、イザベル様の邪気からとれた種を詳しく確認。
そう思って、紋様が動きまくる種を手に持ち、顔を近づけていく。
「ライラ、ちょっと待て! 何をしようとしてる!?」
アルがあわてた様子で叫んだ。
「まずは、匂いをかいでみようと思って。さっき、イザベル様に会った時にね、背中の黒い翼のような邪気が、大きくはばたいて見えたの。その時、かすかに、甘い匂いがしたんだよね。ジュリアンさんの種の匂いと同じだと思う。種も匂うと思うから、確認しておきたくて!」
勢い込んで、私の考えを言うと、アルが顔をしかめた。
「……つまり、ライラは、この種に鼻を近づけようとしたのか? やめろ! 危ないだろ!」
「そんな不気味な種に顔を近づけるなんて、ライラちゃんって、もしや、妖精じゃなくて、勇者じゃない!? でも、アルの言う通り、やめといたほうがいいって! なんか、その動きまくってる、グリシア侯爵家の紋章そっくりのやつ、噛みつく気、満々って感じだし……」
「そうよ、ライラちゃん。絶対に無理はしないで」
と、コリーヌ様も、心配そうに言った。
「心配してくださって、ありがとうございます。でも、種からは邪気がでていないから、危害を加えられるってことはないと思うんです。万が一、噛みつきそうなら、さっとよけますから、大丈夫です。安心してください!」
そう言いながら、種を持った手に顔を近づけようとすると、アルがものすごい勢いで、種を持つ私の手を両手でにぎりこんできた。
「安心なんてできるわけないだろ! もし、種に顔を近づけるつもりなら、このまま手を離さない。それでも、いいか?」
「え? このまま? ……いやいや、おかしいよね? いいわけないよね!?」
私はあせって、アルの手から自分の手をはずそうとする。
が、がっちり捕獲されていて、びくともしない。
アルは、ふっと表情をゆるませて言った。
「俺は別に構わないが。いや、むしろ、ずっと、このままでもいい」
「グフッ……。もう、ダメだ! 隠そうとしないアルの本音が怖すぎて、笑える!」
ジュリアンさんが、またもや爆笑し始めた。
見ると、コリーヌ様も楽しそうに笑っている。
うん、これは恥ずかしい……。
早く手を離してもらわないと!
「わかったから、アル……。とりあえず、種の紋様の動きがおさまるまで、テーブルにおいておく。匂いの確認はあとにするから」
そう言うと、やっと私の手は自由になった。
ということで、私は、かわりにジュリアンさんの邪気からとれた種を手にとり、コリーヌ様の前へと動かした。
「このジュリアンさんの邪気からとれた種は、少し甘い香りがするんです。時間がたって、薄くなってはいますが、まだ、匂います。コリーヌ様、この香りに覚えがあるかどうか、確認していただいてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
コリーヌ様は種を手にとり、そっと顔をちかづけた。
「本当ね。かすかに甘い香りがするわ……。あ、この香り……。私が、使っていた髪用のクリームの香りと同じじゃないかしら……」
髪用のクリーム……。アルと同じ意見だ。
思わず、アルの方を見ると、アルが私にうなずいてきた。
アルが、コリーヌ様に言った。
「俺もジュリアンのその種を匂った時、すぐに、母上の髪用のクリームの匂いを思い出した」
「あら、アル。私の髪用のクリームの香りを知っていたの?」
コリーヌ様が意外そうに言った。
「以前、パーティーでエスコートするため、ここへ、母上を迎えに来た時、俺の髪を母上がクリームを使って整えてくれたことがあっただろう? その時、少し甘い匂いがした。独特の甘さだったから、覚えていたんだ。母上、現物があれば、見せてもらえないか?」
「それが、今は別のクリームを使っているのよ。でも、もしかしたら……」
そういうと、コリーヌ様は、テーブルの上にあった小さなベルを優雅な仕草で鳴らした。
「失礼いたします」
即座に、メリルさんがお部屋に入ってきた。
「メリル。私が、以前、使っていた青い陶器の入れ物に入った髪用のクリームがあったでしょう? ハンナが紹介してくれたあの髪用のクリームよ。まだ、買い置きが残っているかしら?」
「いえ、ございません。注文しておきましょうか?」
「ええ、お願い。ひとつでいいわ」
と、コリーヌ様が、メリルさんに頼んだ。
「メリル。ひとつくらい、保管している場所に残っていないのか?」
今すぐ、現物を確認したい様子のアルが、メリルさんに食い下がった。
すると、メリルさんはアルにむかって、きっぱりと言った。
「いえ、ございません。コリーヌ様の御身に直接つけられるお化粧類や髪のクリームなどの保管は、毎日、私が確認しておりますから」
なるほど……。さすがは、コリーヌ様が信頼されるほどのベテラン侍女メリルさん。
なんて、頼もしいお仕事っぷり!
が、私には、クリームの現物より、今の会話で気になったことがある。
そう、そのクリームをコリーヌ様に紹介したハンナさんとやらだ。
ハンナさんに話を聞けば、何か手がかりがあるかも!
私は、早速、コリーヌ様に聞いてみた。
「今、ハンナさんが紹介してくれたクリームと言われましたが、ハンナさんとは、どなたなのですか? お会いして、お話を聞くことができますか?」
※ ご無沙汰しております! バタバタしておりまして、久々の更新になってしまいました!
不定期な更新で、読みづらいと思いますが、読んでくださった方、本当にありがとうございます!!
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