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王宮で探る 2
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「ジュリアン様!」
女性の嬉々とした声がする。
「おい、ジュリアン! 前に出て、せきとめろ。あれをライラに見せるな。ライラの目が汚れる」
アルは冷たい声で、ジュリアンさんに向かって言い放った。
「はいはい、わかったよ。ごめんねー、ライラちゃん。王宮へ来て、いきなり変なのと遭遇しちゃって…。はあ、なんでこのタイミングでいるの…?」
ジュリアンさんは、ぶつぶつ言いながらも、女性のほうへと歩いていった。
遭遇って…。
なんだか、森で猛獣とあったみたいな雰囲気だよね…。
「ええと、すごい警戒してるみたいだけど、だれなの?」
いまだ、アルの背中に隠されているので、アルの背中に向かって聞いてみた。
「ジュリアンに邪気をつけた女だ」
「あ! グリシア侯爵家のイザベル様?! なら、見たい! ちょうどいい機会だし」
わくわくしながら、アルの背中からでようとしたら、がばっと振り返ったアルが、両手で私を囲うようにした。
「ダメだ、ライラ! 危ないだろう?」
「大丈夫! それに、私は、コリーヌ様につけられた邪気のことを探りにきたの! 同じような邪気をつけた張本人が目の前にいるのに、このチャンス、逃すわけにはいかないわ!」
と、アルに、ぴしっと言ってやった。
で、結局、折れたアル。
心配そうに私に言った。
「なら、俺の背中に隠れて、ここから見ろ。ジュリアンと話しているところを観察できるだろ。観察が終わったら、速やかに、少し戻って、別の廊下を使う。少し遠回りになるが、邪気女をライラにを近づけたくないからな」
もう、ほんと、アルは過保護だよね…。
「私は邪気がすいとれるから、大丈夫なのに。それにしても、邪気女って…。なんだか、魔物みたいな呼び方よね」
「グリシア侯爵家の者なら、魔物ほうが、まだましだ。ライラ、気をつけろ。あの女の目は見るなよ?」
と、苦々しい声で言うアル。
「目は見るなって…、アル。いくらなんでも、石になるわけじゃないだろうし」
「わからないぞ。ほら見ろ、あの髪。メデューサみたいじゃないか」
言われて、アルの背中から、イザベル様を見た。
「…ゴージャスに巻いてるだけじゃない?」
「そうか? 俺には、無数の蛇に見えるが」
冗談ではなく、真剣に、そう言ったアル。
無数の蛇って、なにそれ。怖いわ…。
まあ、髪か蛇かなんて、どうでもいい。
そんな不毛な会話はやめにして、アルの背中から顔だけだして、イザベル様を観察してみる。
でもね…。なんだか、チラチラ見られているような…。
「ねえ、アル? 私、今、かなり変な人じゃない? アルの背中から出られない、ひきこもりみたいな…? ほら、働いている方たちの不思議そうな視線を感じるんだけど…?」
「気にするな。それに、俺の背中から出られない、ひきこもり…全く変じゃない。むしろ、大歓迎だ」
と、おかしなことを、力強く言いだしたアル。
こうなったら、説得するのが面倒だ…。
あきらめて、アルの背中から、イザベル様を観察することにした。
話しかけるジュリアンさんを、頬をそめ、上目遣いに見ているイザベル様。
以前見た時と同様、派手なお顔立ちの美人。栗色の長い髪は、きっちりと巻かれ、縦ロールになっている。
そして、ドレスは、華やかな赤色。
でも、なにより目立つのは、イザベル様の背後に見える黒い煙。
イザベル様の背後に大きく広がり、しかも、ゆらゆらと羽ばたくように動いている。
まるで、黒い翼みたいな邪気ね…。
ふと、アンナさんを思い出した。
やっぱり、人に邪気をつける人は、自分はもっとつけてるんだね…。
※ 不定期な更新ですが、読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、エールもありがとうございます! 大変、励みになります!
女性の嬉々とした声がする。
「おい、ジュリアン! 前に出て、せきとめろ。あれをライラに見せるな。ライラの目が汚れる」
アルは冷たい声で、ジュリアンさんに向かって言い放った。
「はいはい、わかったよ。ごめんねー、ライラちゃん。王宮へ来て、いきなり変なのと遭遇しちゃって…。はあ、なんでこのタイミングでいるの…?」
ジュリアンさんは、ぶつぶつ言いながらも、女性のほうへと歩いていった。
遭遇って…。
なんだか、森で猛獣とあったみたいな雰囲気だよね…。
「ええと、すごい警戒してるみたいだけど、だれなの?」
いまだ、アルの背中に隠されているので、アルの背中に向かって聞いてみた。
「ジュリアンに邪気をつけた女だ」
「あ! グリシア侯爵家のイザベル様?! なら、見たい! ちょうどいい機会だし」
わくわくしながら、アルの背中からでようとしたら、がばっと振り返ったアルが、両手で私を囲うようにした。
「ダメだ、ライラ! 危ないだろう?」
「大丈夫! それに、私は、コリーヌ様につけられた邪気のことを探りにきたの! 同じような邪気をつけた張本人が目の前にいるのに、このチャンス、逃すわけにはいかないわ!」
と、アルに、ぴしっと言ってやった。
で、結局、折れたアル。
心配そうに私に言った。
「なら、俺の背中に隠れて、ここから見ろ。ジュリアンと話しているところを観察できるだろ。観察が終わったら、速やかに、少し戻って、別の廊下を使う。少し遠回りになるが、邪気女をライラにを近づけたくないからな」
もう、ほんと、アルは過保護だよね…。
「私は邪気がすいとれるから、大丈夫なのに。それにしても、邪気女って…。なんだか、魔物みたいな呼び方よね」
「グリシア侯爵家の者なら、魔物ほうが、まだましだ。ライラ、気をつけろ。あの女の目は見るなよ?」
と、苦々しい声で言うアル。
「目は見るなって…、アル。いくらなんでも、石になるわけじゃないだろうし」
「わからないぞ。ほら見ろ、あの髪。メデューサみたいじゃないか」
言われて、アルの背中から、イザベル様を見た。
「…ゴージャスに巻いてるだけじゃない?」
「そうか? 俺には、無数の蛇に見えるが」
冗談ではなく、真剣に、そう言ったアル。
無数の蛇って、なにそれ。怖いわ…。
まあ、髪か蛇かなんて、どうでもいい。
そんな不毛な会話はやめにして、アルの背中から顔だけだして、イザベル様を観察してみる。
でもね…。なんだか、チラチラ見られているような…。
「ねえ、アル? 私、今、かなり変な人じゃない? アルの背中から出られない、ひきこもりみたいな…? ほら、働いている方たちの不思議そうな視線を感じるんだけど…?」
「気にするな。それに、俺の背中から出られない、ひきこもり…全く変じゃない。むしろ、大歓迎だ」
と、おかしなことを、力強く言いだしたアル。
こうなったら、説得するのが面倒だ…。
あきらめて、アルの背中から、イザベル様を観察することにした。
話しかけるジュリアンさんを、頬をそめ、上目遣いに見ているイザベル様。
以前見た時と同様、派手なお顔立ちの美人。栗色の長い髪は、きっちりと巻かれ、縦ロールになっている。
そして、ドレスは、華やかな赤色。
でも、なにより目立つのは、イザベル様の背後に見える黒い煙。
イザベル様の背後に大きく広がり、しかも、ゆらゆらと羽ばたくように動いている。
まるで、黒い翼みたいな邪気ね…。
ふと、アンナさんを思い出した。
やっぱり、人に邪気をつける人は、自分はもっとつけてるんだね…。
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