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アルのお土産 20
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私は辺境にひきこもっているので、他の貴族の紋章をあまり知らない。
種に浮き出たものをじっと見る。
「グリシア侯爵家の紋章って、…蛇?」
「いや、グリシア侯爵家の紋章は黒色のバジリスクだ」
「バジリスクって、あの伝説の…? でも、ここが頭だよね? 帽子をかぶってるの…?」
私が、種を見ながら、指をさした。
「それは王冠だ。グリシア侯爵家の紋章の図柄は、大きい王冠をバジリスクがかぶっている」
「これ、王冠…? すごい大きいよね…」
「ああ。グリシア侯爵家は、昔、王家と匹敵するほどの力を持っていた時期があったらしい。だから、自分たちが真の王だという意味をこめて、王冠を強調しているみたいだ」
「そうなんだ…。昔の名残なんだね…」
と、私が言うと、ジュリアンさんは意味ありげに微笑んだ。
「いや、それが、昔ってわけじゃないんだよ、ライラちゃん。今のグリシア侯爵は、王位を狙ってる。妹のアメルダ様をごり押しで側妃にし、待望の王子が生まれた。なのに、残念ながら第二王子。でも、あきらめられないグリシア侯爵。で、邪魔なのが、もちろん、正妃の王子である王太子。それに、第三王子なのに優秀すぎるアルも目障り。ちなみに、コリーヌ様も、王の寵愛を受けているため、アメルダ様からねたまれている。…ってことで、アルもコリーヌ様も、あの親子には目の敵にされてるんだよ」
と、ジュリアンさんが、恐ろしくドロっとした内容を、軽い口調で、さらっと説明してくれた。
アルが顔をしかめる。
「ああ、毒をもられて死にかけた時もあったな。まあ、毒に耐性をつけていたから、ぎりぎり助かったようなもんだが…」
「え、毒?! なんで、罪にならないのっ?!」
「証拠がない。以前、俺の食事に毒を入れたのは、俺の護衛だった。事件後わかったことは、側妃アメルダの侍女の恋人だったこと。アメルダが指示したのは間違いない。もちろん、グリシア侯爵経由で毒を入手していることもだ。だが、護衛は処刑、侍女は自殺して、そこで、捜査は終了。公になることもなかった」
「そんな…」
「ライラちゃん。王宮は、本当に恐ろしいところだよ。アルは、こういう環境で生き抜いてきたんだ」
思わず、アルの顔を見た。
アルが、今、自分の目の前にいてくれる喜びがあふれてくる。
「アル、生きててくれて、ありがとう」
心からの思いを口にした。
アルが驚いたように私を見る。
が、すぐに、私から目をそらした。
「はあー、まずい…。ジュリアンがいなかったら、絶対、だきしめてる…。かわいすぎるだろ…」
と、つぶやいたアル。
「いや、ほんとに…。ライラちゃん、天然で怖いね…。思わず、俺もくらっとした。ねえ、ライラちゃん。兄と妹だから、ちょっとだけ、抱きしめてもいい?」
と、甘い笑みを浮かべるジュリアンさん。
次の瞬間、アルが立ちあがった。
そして、テーブルに山となっている、ジュリアンさんの邪気からとれた種を、両手ですくいあげる。
無言のまま、ジュリアンさんのところまで歩いていくと、ジュリアンさんの頭の上から、盛大に種をふりかけた。
「俺のライラに、邪なことを言う奴は呪われろ」
と、不吉な言葉をあびせるアル。
「ちょっと、アル! ジュリアンさんになんてことを言うの?! …あ、でも、それよりも、種だわ! 種になんてことするのっ?! 種は大事に扱わなきゃダメ!」
びしっと注意する私。
が、注意されたアルは、嬉しそうに笑いだした。
反対に、ジュリアンさんが悲しそうな顔で私を見る。
「ライラちゃん…。俺と種と、どっちが大事なの…?」
「種!」
「ひどい、即答」
嘆くジュリアンさんと喜ぶアル。
そんな2人を放置し、私は、大切な種をひろいはじめた。
種に浮き出たものをじっと見る。
「グリシア侯爵家の紋章って、…蛇?」
「いや、グリシア侯爵家の紋章は黒色のバジリスクだ」
「バジリスクって、あの伝説の…? でも、ここが頭だよね? 帽子をかぶってるの…?」
私が、種を見ながら、指をさした。
「それは王冠だ。グリシア侯爵家の紋章の図柄は、大きい王冠をバジリスクがかぶっている」
「これ、王冠…? すごい大きいよね…」
「ああ。グリシア侯爵家は、昔、王家と匹敵するほどの力を持っていた時期があったらしい。だから、自分たちが真の王だという意味をこめて、王冠を強調しているみたいだ」
「そうなんだ…。昔の名残なんだね…」
と、私が言うと、ジュリアンさんは意味ありげに微笑んだ。
「いや、それが、昔ってわけじゃないんだよ、ライラちゃん。今のグリシア侯爵は、王位を狙ってる。妹のアメルダ様をごり押しで側妃にし、待望の王子が生まれた。なのに、残念ながら第二王子。でも、あきらめられないグリシア侯爵。で、邪魔なのが、もちろん、正妃の王子である王太子。それに、第三王子なのに優秀すぎるアルも目障り。ちなみに、コリーヌ様も、王の寵愛を受けているため、アメルダ様からねたまれている。…ってことで、アルもコリーヌ様も、あの親子には目の敵にされてるんだよ」
と、ジュリアンさんが、恐ろしくドロっとした内容を、軽い口調で、さらっと説明してくれた。
アルが顔をしかめる。
「ああ、毒をもられて死にかけた時もあったな。まあ、毒に耐性をつけていたから、ぎりぎり助かったようなもんだが…」
「え、毒?! なんで、罪にならないのっ?!」
「証拠がない。以前、俺の食事に毒を入れたのは、俺の護衛だった。事件後わかったことは、側妃アメルダの侍女の恋人だったこと。アメルダが指示したのは間違いない。もちろん、グリシア侯爵経由で毒を入手していることもだ。だが、護衛は処刑、侍女は自殺して、そこで、捜査は終了。公になることもなかった」
「そんな…」
「ライラちゃん。王宮は、本当に恐ろしいところだよ。アルは、こういう環境で生き抜いてきたんだ」
思わず、アルの顔を見た。
アルが、今、自分の目の前にいてくれる喜びがあふれてくる。
「アル、生きててくれて、ありがとう」
心からの思いを口にした。
アルが驚いたように私を見る。
が、すぐに、私から目をそらした。
「はあー、まずい…。ジュリアンがいなかったら、絶対、だきしめてる…。かわいすぎるだろ…」
と、つぶやいたアル。
「いや、ほんとに…。ライラちゃん、天然で怖いね…。思わず、俺もくらっとした。ねえ、ライラちゃん。兄と妹だから、ちょっとだけ、抱きしめてもいい?」
と、甘い笑みを浮かべるジュリアンさん。
次の瞬間、アルが立ちあがった。
そして、テーブルに山となっている、ジュリアンさんの邪気からとれた種を、両手ですくいあげる。
無言のまま、ジュリアンさんのところまで歩いていくと、ジュリアンさんの頭の上から、盛大に種をふりかけた。
「俺のライラに、邪なことを言う奴は呪われろ」
と、不吉な言葉をあびせるアル。
「ちょっと、アル! ジュリアンさんになんてことを言うの?! …あ、でも、それよりも、種だわ! 種になんてことするのっ?! 種は大事に扱わなきゃダメ!」
びしっと注意する私。
が、注意されたアルは、嬉しそうに笑いだした。
反対に、ジュリアンさんが悲しそうな顔で私を見る。
「ライラちゃん…。俺と種と、どっちが大事なの…?」
「種!」
「ひどい、即答」
嘆くジュリアンさんと喜ぶアル。
そんな2人を放置し、私は、大切な種をひろいはじめた。
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