(番外編) 私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!

水無月あん

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アルのお土産 16

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険悪な雰囲気の二人。

いきなり、アルが、だきしめていた私を放し、部屋の外へと出て行った。
と思ったら、すぐさま帰って来た。

「ええと、一体何をしにいってたの…?」

アルの行動がよめず、おそるおそる聞いてみる。
すると、アルは、私に微笑んで言った。

「ちょっと、廊下で待機している護衛に頼みごとをしてきた」

そうだった。ついつい忘れてしまうけれど、アルは第三王子。
ここへも護衛の方がついてきている。
なので、今も部屋の外で待機しているんだよね。

すると、すぐに、執事のジュードが、カートを押して部屋に入って来た。

「アルフォンス殿下。護衛の方からお聞きしましたが、ご用意するのは、こちらでよろしいでしょうか?」
と、アルに聞く。

アルは、カートの上をみて、うなずいた。

「ここへ置いてくれ」
と、テーブルの上を指差す。

ジュードは、持ってきたものをテーブルに並べた。
水差しと、半分ほど水が入った手洗い用の器。そして、タオル。

これ、何に使うの…?

とまどいながら、アルを見る。
アルは、「ありがとう、ジュード」と、お礼を言った。

そして、いきなり私の両手を取るなり、水の入った器へと押しこんだ。

「え?! ちょっと、アル?! 何してるのっ?!」
私があわてて声をあげる。

「ジュリアンに触れて、手がよごれただろう? すぐに洗わないと」

アルは、水の中で、なでるようにして、私の手を洗った。

「額を押しつけられた手の甲もしっかり洗うからな」
そう言いながら、今度は、私の手の甲に、ピッチャーから水をそそぎかけた。

「俺は菌か?! …っていうか、やりすぎだろ? 怖いんだけど…」
と、ジュリアンさんが、あきれた声で言う。

確かに、やりすぎというか、アルが変…。

驚きすぎて茫然としている間に、アルは私の両手を器からとりだし、タオルでしっかりとふいた。

「これで、よし。あとは、仕上げだ」
と、満足そうなアル。

仕上げ…?

首をかしげる私の足元に、アルが、いきなり、ひざまずいた。

…はあ?! アルまで、なにしてるの?!

「ライラ! 俺は、一生、ライラに、忠誠どころか、俺の全部をささげることを誓う!」
そう言うやいなや、私の手をとり、私の手の甲に唇をしっかりと押し当てた。

一瞬、シーンとした。

プッとふきだしたのは、ジュリアンさん。

「なに、それ…! 俺に対抗してんの?! すごい負けず嫌いで、笑える…!」
そう言って、おなかをかかえて笑っている。

一気に顔が熱くなった。

「ちょっと、アル! いきなり、なんてことするの?! 恥ずかしいでしょ?!」

真っ赤になって怒る私を見ながら、涼しい顔でアルは立ちあがった。
そして、真顔で言った。

「ジュリアンがライラにしたことを、俺がしていないなんて絶対に許せないからな。上書きした」

それを聞いて、ジュリアンさんが、「すごい独占欲! 怖すぎて笑える…!」と言いながら、更に笑いころげている…。

と、こんな流れで、精神的に、何かがけずられた私。


「そろそろ、花の種をじっくり見たいんだけど?」
という私の言葉に、おかしな行動をとる2人も、やっと落ち着いて、テーブルに座った。

私の変わった能力については、ジュリアンさんも体験したから、おおよそ察したと思うけれど、一応、簡単に説明する。

人の邪気が黒い煙のように見えること。そして、それを手のひらですいとれること。
そうすると、私の手の中に花の種がうまれること。それを庭に植えていることなどなど…。

ジュリアンさんは、私の説明を真剣に聞いてくれた。

「で、この花の種が、ジュリアンさんの邪気から生まれ変わったものです」
そう言って、テーブルの上に、こんもりと山となった花の種から一つとり、ジュリアンさんの目の前におく。

全体的に、黒っぽい。粉がふいたような感じで、奥にちらちらと赤いものが見える。

「いつもながら、不気味な感じだな…」
と、アル。

ジュリアンさんは、興味深そうに、花の種に顔を近づけた。

「なんか、匂う…」
と、不思議そうにつぶやいた、ジュリアンさん。

え、匂う?! 

私も、すぐに、花の種を手にとり、匂ってみる。

「あっ、ほんとだ…。匂うわ!」

邪気からとれた種で、今まで、特別、匂ったものはない。

「うわあ、すごい! おもしろい!」
思わず、喜びの声をあげた私。

だって、今までになかったタイプの種に出会えたなんて、ワクワクする!



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