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アルのお土産 15
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ジュリアンさんにリボンをかませたあとも、威嚇するように、ジュリアンさんをにらみつけるアル。
「アル! ちょっと離れて! 邪気は少なくなったけれど、この邪気はすごく強いというか、執念深いというか…。よくわからないから、絶対にうつらないともいいきれない。だから、早く離れて。あ、ジュリアンさんのリボンはそのままでいいから…」
「わかった。ライラも油断するな」
アルはそう言うと、視線はジュリアンさんをにらんだまま、ものすごいスピードで、器用に後ろ向きにさがっていった。
あっという間に壁際にたち、ジュリアンさんに、にらみをきかせるように腕をくんでいる。
離れても、鋭い視線の圧は変わらないね…。
でも、まあ、これでアルの方はよし。
が、今度は、ジュリアンさんが、なにやら口をもごもごして、私に何か言ってきた。
なんだろう…?
首をかしげると、ジュリアンさんが、口のリボンを左手で指差した。
「あ、それね…。ごめんなさい、ジュリアンさん。ちょっと、そのままでがまんして…。今は、アルの対応が面倒だから」
と、私の気持ちを隠さず言う。
ジュリアンさんがアルを見る。
アルは、私の指示通り、ジュリアンさんからしっかり離れ、壁際に立っている。
そういうところは、すごく素直なんだけれど、視線がね…。怖すぎるよ…。
王子というより、暗殺者みたいな目で、ジュリアンさんを見ている。
ジュリアンさんも、その視線に恐れをなしたのか大人しくなった。
とりあえず、リボンを外すことをあきらめたよう…。
でも、今はそのほうがいいわ。だって、それを外すと、今度は顔を覆われるみたいだから…。
ということで、ジュリアンさんの手に、私は、再び集中する。
さっき黒い邪気がとれ、肌が見え始めたところから、その隣に手を動かし、今度は、その一か所を集中してすいとる。
そして、黒い邪気がすいとれたら、今度は、また手を動かして、邪気をすいとる。
そうやっていくうちに、ジュリアンさんの肌が見える範囲が、だんだん、ひろがっていった。
やっぱり、触ると早い! この調子で、どんどんすいとるわよ!
どんどんどんどん、すいとって、すいとって、すいとりまくろう!
もっと、もっと、すいとって、すいとって、すいとりまくろう!
と、心の中で自分を鼓舞しながら、夢中で邪気をすいとっていく私。
ふと気が付くと、いつのまにか、声にでていたみたい…。
背後から、アルのククッと笑う声。
リボンをかまされたままのジュリアンさんも、笑いながら、涙を左手でふいている。
笑いたければ、笑いなさい…フフフ!
私は、今、ものすごくやる気に満ちているから、ちっともかまわない。
だって、強い邪気が沢山ついているから、花の種がどんどんうまれてくるんだもの!
テーブルに山となっている種を見る。
ちらっと見ただけでも、まがまがしい雰囲気が漂っている!
絶対、珍しい種に決まってる!
はあー、なんておもしろそうな種! 植えたら、どんな花が咲くかな? あとで、ゆっくり観察しよう!
ということで、更に気合いを入れ、必死で手を動かす私。
そして、やっと、ジュリアンさんの手から、完全に邪気が消えた。
「完璧にとれたわ! ジュリアンさん、右手をにぎってみて」
私の言葉に、ジュリアンさんはうなずいた。
そして、邪気のとれた右手をにぎって、ひらいて、また、にぎって…!
「すご…、ぜん…、い…! あ……! ラ………っ!」
ジュリアンさんが、何を言っているかは全然わからない。
でも、ものすごく喜んでいることは伝わってくる。良かった!
アルがすぐさま、私のそばによってきた。
「ライラ。大丈夫か?! …あ、汗がでてる! そんなに一生懸命やらなくていいのに…」
そう言いながら、自分のハンカチをとりだし、甲斐甲斐しく、私の額の汗をぬぐってくれるアル。
「アル、私は大丈夫だよ。それより、ジュリアンさんのリボンをとってあげて」
「ああ、そっちはどうでもいい。きつく縛ってあるが、手もなおしてもらったんだし、自分でとればいい。それより、ライラの大丈夫は信用できない。ライラは無理をするからな。母上の時も、パトリックの時も、力を使いすぎて、倒れただろ? 俺は2度も見てる! とりあえず、休め!」
「え、でも、今日は疲労を感じないんだよね。ほら、アルがお花を私のまわりにおいてくてれたし。私も前より成長したぶん、体力がついたのかな?」
と、話している間に、ジュリアンさんは、痛みがとれた右手を使って、自分でリボンをほどいたみたい。
椅子からたちあがると、椅子にすわったままの私の隣に立った。
そして、そのまま、ひざまずいた。
え? ジュリアンさん、一体、何を…?
「ライラちゃん。本当にありがとう。俺、ジュリアン・ロンバルディーは、一生、ライラちゃんに忠誠を誓います」
そう言うやいなや、ものすごい勢いで、私の手をとり、自分の額を私の手の甲に押し当てた。
「断る!」
と、アルの声。そのまま、アルは、ジュリアンさんの頭を押しのけ、手をたたきおとし、ジュリアンさんに蹴りを入れ、私をだきしめるようにして、ジュリアンさんから引き離した。
ジュリアンさんは、アルに蹴られて、床に転がった。
「ライラに触るな! 死にたいのか、ジュリアン?」
アルの凍りつきそうな声が響く。
ジュリアンさんは、立ちあがると、私に向かって甘く微笑みかけてきた。
「これでも遠慮したんだよ? ライラちゃんは、ぼくの恩人でしょ? ほんとは、手にキスをして忠誠を誓いたいところだったのに、アルが怒るだろうと思って、額にしてみたんだ」
と、アルを無視して、何故か、私に甘ったるい笑みをうかべて話しかけてくるジュリアンさん。
笑顔の裏に、どす黒いものが見える…。
こんな怒るアルを前に、更に挑発しているような…。
さすが、親友ね…。
と、感心していると、寒気がしてきた。
なにやら、アルから殺気のようなものが流れ出てる気がするんだけど…。
※ 不定期な更新のなか、読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、エールもありがとうございます! 大変、励みにさせていただいています!
「アル! ちょっと離れて! 邪気は少なくなったけれど、この邪気はすごく強いというか、執念深いというか…。よくわからないから、絶対にうつらないともいいきれない。だから、早く離れて。あ、ジュリアンさんのリボンはそのままでいいから…」
「わかった。ライラも油断するな」
アルはそう言うと、視線はジュリアンさんをにらんだまま、ものすごいスピードで、器用に後ろ向きにさがっていった。
あっという間に壁際にたち、ジュリアンさんに、にらみをきかせるように腕をくんでいる。
離れても、鋭い視線の圧は変わらないね…。
でも、まあ、これでアルの方はよし。
が、今度は、ジュリアンさんが、なにやら口をもごもごして、私に何か言ってきた。
なんだろう…?
首をかしげると、ジュリアンさんが、口のリボンを左手で指差した。
「あ、それね…。ごめんなさい、ジュリアンさん。ちょっと、そのままでがまんして…。今は、アルの対応が面倒だから」
と、私の気持ちを隠さず言う。
ジュリアンさんがアルを見る。
アルは、私の指示通り、ジュリアンさんからしっかり離れ、壁際に立っている。
そういうところは、すごく素直なんだけれど、視線がね…。怖すぎるよ…。
王子というより、暗殺者みたいな目で、ジュリアンさんを見ている。
ジュリアンさんも、その視線に恐れをなしたのか大人しくなった。
とりあえず、リボンを外すことをあきらめたよう…。
でも、今はそのほうがいいわ。だって、それを外すと、今度は顔を覆われるみたいだから…。
ということで、ジュリアンさんの手に、私は、再び集中する。
さっき黒い邪気がとれ、肌が見え始めたところから、その隣に手を動かし、今度は、その一か所を集中してすいとる。
そして、黒い邪気がすいとれたら、今度は、また手を動かして、邪気をすいとる。
そうやっていくうちに、ジュリアンさんの肌が見える範囲が、だんだん、ひろがっていった。
やっぱり、触ると早い! この調子で、どんどんすいとるわよ!
どんどんどんどん、すいとって、すいとって、すいとりまくろう!
もっと、もっと、すいとって、すいとって、すいとりまくろう!
と、心の中で自分を鼓舞しながら、夢中で邪気をすいとっていく私。
ふと気が付くと、いつのまにか、声にでていたみたい…。
背後から、アルのククッと笑う声。
リボンをかまされたままのジュリアンさんも、笑いながら、涙を左手でふいている。
笑いたければ、笑いなさい…フフフ!
私は、今、ものすごくやる気に満ちているから、ちっともかまわない。
だって、強い邪気が沢山ついているから、花の種がどんどんうまれてくるんだもの!
テーブルに山となっている種を見る。
ちらっと見ただけでも、まがまがしい雰囲気が漂っている!
絶対、珍しい種に決まってる!
はあー、なんておもしろそうな種! 植えたら、どんな花が咲くかな? あとで、ゆっくり観察しよう!
ということで、更に気合いを入れ、必死で手を動かす私。
そして、やっと、ジュリアンさんの手から、完全に邪気が消えた。
「完璧にとれたわ! ジュリアンさん、右手をにぎってみて」
私の言葉に、ジュリアンさんはうなずいた。
そして、邪気のとれた右手をにぎって、ひらいて、また、にぎって…!
「すご…、ぜん…、い…! あ……! ラ………っ!」
ジュリアンさんが、何を言っているかは全然わからない。
でも、ものすごく喜んでいることは伝わってくる。良かった!
アルがすぐさま、私のそばによってきた。
「ライラ。大丈夫か?! …あ、汗がでてる! そんなに一生懸命やらなくていいのに…」
そう言いながら、自分のハンカチをとりだし、甲斐甲斐しく、私の額の汗をぬぐってくれるアル。
「アル、私は大丈夫だよ。それより、ジュリアンさんのリボンをとってあげて」
「ああ、そっちはどうでもいい。きつく縛ってあるが、手もなおしてもらったんだし、自分でとればいい。それより、ライラの大丈夫は信用できない。ライラは無理をするからな。母上の時も、パトリックの時も、力を使いすぎて、倒れただろ? 俺は2度も見てる! とりあえず、休め!」
「え、でも、今日は疲労を感じないんだよね。ほら、アルがお花を私のまわりにおいてくてれたし。私も前より成長したぶん、体力がついたのかな?」
と、話している間に、ジュリアンさんは、痛みがとれた右手を使って、自分でリボンをほどいたみたい。
椅子からたちあがると、椅子にすわったままの私の隣に立った。
そして、そのまま、ひざまずいた。
え? ジュリアンさん、一体、何を…?
「ライラちゃん。本当にありがとう。俺、ジュリアン・ロンバルディーは、一生、ライラちゃんに忠誠を誓います」
そう言うやいなや、ものすごい勢いで、私の手をとり、自分の額を私の手の甲に押し当てた。
「断る!」
と、アルの声。そのまま、アルは、ジュリアンさんの頭を押しのけ、手をたたきおとし、ジュリアンさんに蹴りを入れ、私をだきしめるようにして、ジュリアンさんから引き離した。
ジュリアンさんは、アルに蹴られて、床に転がった。
「ライラに触るな! 死にたいのか、ジュリアン?」
アルの凍りつきそうな声が響く。
ジュリアンさんは、立ちあがると、私に向かって甘く微笑みかけてきた。
「これでも遠慮したんだよ? ライラちゃんは、ぼくの恩人でしょ? ほんとは、手にキスをして忠誠を誓いたいところだったのに、アルが怒るだろうと思って、額にしてみたんだ」
と、アルを無視して、何故か、私に甘ったるい笑みをうかべて話しかけてくるジュリアンさん。
笑顔の裏に、どす黒いものが見える…。
こんな怒るアルを前に、更に挑発しているような…。
さすが、親友ね…。
と、感心していると、寒気がしてきた。
なにやら、アルから殺気のようなものが流れ出てる気がするんだけど…。
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