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アルのお土産 14

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「おい、ライラ! いつもは触らず、邪気をとってるじゃないか?! なのに、なんで触るんだ?! そんなのに触るな!」
と、不満げな声をあげるアル。

アル、そんなのって…、ひどいでしょ。

「あのね、アル。ジュリアンさんの邪気は、めちゃくちゃ強くついてるの。だから、触ったほうが絶対早くとれる。もう、こうなったら、こっそりとる必要もないんだし、早く、とりきったほうがいいでしょ?」
私の言葉に、アルが即答する。

「よくない! それなら、早くとる必要はない。いや、むしろ、とるな!」

「ちょっと、アル…。むしろ、とるなって、どういうこと? ジュリアンさんは痛いんだよ? そのままにしたら、かわいそうじゃない! 大丈夫ですからね、ジュリアンさん」 

そう言って、ジュリアンさんを見たら、なにやら考え込んだ様子でつぶやいている。

「…邪気? 俺には邪気がついてるのか…。まあ…、俺の生活を考えると、ついていても不思議はないけど…。しかし、その邪気が、とれるということは、ライラちゃんって…もしかして…本当に妖精とか…? そう思ってみると、…確かに妖精っぽいよね…。やっぱり、妖精は実在するってこと…?」

こちらは、不可思議な感じになってるわね…。

ということで、私は2人を放置し、ジュリアンさんの手に集中する。

真っ黒い邪気に、がっしりと覆われた手。
その手に重ねた私の手が、スポンジになり、黒い邪気をすいとっていくイメージをする。

まずは、一か所に集中して、手のひらを動かしてみる。

すると、黒い邪気の下から、ジュリアンさんの地肌が見えてきた。
すぐに、私の手のひらにポコンと種がうまれた。

私の手のひらは、ジュリアンさんの手に重ねている状態なので、その間から、種が転がりでてきた感じ。

その様子を見て、驚愕した顔で固まってしまったジュリアンさん。

まあ、確かに、驚くよね…。奇妙な光景だもんね…。

「気持ち悪いかもしれないけど、あとで説明しますから。もうちょっとがまんしてくださいね、ジュリアンさん」
と、声をかけておく。

すると、はっとしたように、ジュリアンさんが私を見た。
「…あ、いや、全く気持ち悪くないよ…。それより、びっくりしすぎて…。生まれてこのかた、一番、びっくりしたかな…。でも、ここらへんの痛みが完全に消えた…」

そう言って、黒い邪気がとれ、地肌が見えだした部分を、ジュリアンさんは左手で指差した。

「ほんと?! なら、良かった! やっぱり、直接、触ったほうが早いってことよね…。この調子で、しっかりきれいにするからね! もう少しだけ、がまんしてね、ジュリアンさん!」
嬉しくなった私は、おもいっきり敬語を忘れて、ジュリアンさんに言った。

「…うっ、…弱った体に、ライラちゃんの頼もしさと優しさが染みてくる…。ねえ、アル…。幸い、2人は、まだ結婚してないことだし、ライラちゃんを、かわいそうな俺にゆずって…」

と言ったところで、アルがものすごい目で、ジュリアンさんをにらんだ。

そして、無言のまま、コリーヌ様からのお土産のひとつ、花かごに入った花に近づいた。そして、花かごに結ばれていた長く豪華なリボンを外すと、ジュリアンさんのそばへ行く。

え? リボンで、何をするつもり…?

アルは、しっかりした生地のリボンを素早く二つに折り、いきなり、ジュリアンさんの口にかませはじめた。

抵抗するジュリアンさん。

「おいこら、アル、やめろ…なに…、う………!!」

が、腕一本の抵抗ではアルに敵わず、すぐに、リボンをがしっとかまされてしまったジュリアンさん。
何か言っているみたいだけれど、もごもごとしか聞こえない。

「…ちょっと、アル? ジュリアンさんに何してるの…?」

「ろくでもないことを言う口は、邪魔だからな。これで静かになった。うるさくなくて、ライラも邪気をとりやすいだろ? まあ、でも、こんな奴、珍しい種がとれたら、もうあとは適当でいいぞ? ライラが疲れてまで、助けてやる必要はない」
そう言いながら、アルは、ものすごい冷たい目で、もごもご言うジュリアンさんを見た。

「私は別に大丈夫だから、はずしてあげて」

「口をはずすなら、顔全体を覆うが、それでもいいか?」
と、アル。

意味がわからない…。

まあ、ジュリアンさんには悪いけれど、アルの対応も面倒なので、このまま急いで邪気をとってしまおう。
ごめんなさいね、ジュリアンさん…。




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