上 下
15 / 58

アルのお土産 2

しおりを挟む
いつも来る時間よりずっと早いから、びっくりして私が聞いた。
「アル、今日は来るのが早かったね!」

「先日知らせたように、今日は、あとから土産…じゃなくて、俺の友人がくる。あいつがくる前に、ライラとの時間が欲しいと思って、昨晩、出発したんだ」

「え?! じゃあ、眠ってないの?! 大丈夫?」

「馬車の中で寝たから大丈夫だ。それより、急に友人がくることになって悪かったな」

私は、ブンブンと首を横にふった。
「アルのお友達に会うのは初めてだから、ちょっと緊張するけど、嬉しいよ!」

アルの切れ長の目が、スーッと細くなった。
「あいつに緊張なんか、しなくていいぞ。もったいないからな。ライラは微塵も気を使うな。もったいないからな」

「あの…アル? もったいないの使い方が、なんか変なんだけど?」

「いや、ほんとは会わせたくないんだ。ライラがもったいないからな…」
と、もったいないを連呼するアル。

やっぱり、もったいないの使い方が間違っているような…。
でも、それよりも、花を見せなきゃ!

「ねえ、アル! アルの邪気からとれた種が咲いたんだよ! ほーら、素敵でしょう!」
私の声に反応した花が、いっせいに私のほうをむく。

うわ、かわいいっ!

アルが、花をじっと見ると、なんとも言えない顔をした。
「…いつにもまして、すごいインパクトだな…。しかも、ライラの声に反応してるだろう? 聞こえてるってことだよな…。この不気味な花が、俺についていた邪気から生まれたと思うと複雑だ…」

せっかく咲いたのに、種になる邪気をくれた人がその反応じゃ、かわいそう!
ということで、この花の良さを力説しておこう。

「今回の花は、特に色が素敵だよね? グレーに赤い色が流れるよう。マーブル模様みたいで、おしゃれだよね? ほらほら、よーく見て!」

「マーブル模様? …おしゃれ? …いや、どう見ても触ってはいけないような、危険を感じる色だろ。なんというか、血が流れているみたいに見えるんだが…」

「えっ、そう?! アルって独特な見方をするねー」
私が感心して言うと、

「いや、俺はごくごく普通だ。ライラのほうが、ずーっと独特だ」
あきれたように言う、アル。

そうかな? いや、私は普通だと思う。

それにしても、なかなか、この子の良さが伝わらないね?
あっ、そうだ! もっとすごいチャームポイントがあったわ!

「じゃあ、これならどう。頑固なアルも、絶対に、かわいいと認めると思う!」
私はそう言うと、花に水をあげはじめた。

さっきと同様、水にむかって、いっせいにのびあがる花。
ゴクゴクと飲む音が聞こえてきそうなほど、水をすいこみはじめた。

「ほら、美味しそうにお水を飲んでる様子、すごーくかわいいでしょ?! ね、ね、ね?!」
得意になって、アルに花を見せびらかす。

そのとたん、アルが目元をゆるめ、微笑んだ。

「おっ! さすがのアルも、ついに、この花のかわいさを認めたわね?!」
うれしくなって、笑いながら言う私に、アルが無言で手を伸ばしてきた。

そして、ぐりぐりとわたしの頭をなではじめた。

「…ちょっと、アル?! いきなり、なにするの?!」
驚いてアルを見ると、アルが、はーっとため息をついた。

「ライラには悪いが、その花のかわいさは全くわからない。でも、嬉しそうに水をやるライラがかわいいのはわかる。だから、ライラ。俺に構わず、その花を愛でてくれ。俺はライラを愛でるから」
そう言って、私の頭をなで続けるアル。

端正な顔で甘く微笑むアルを見ると、ぶわっと顔が熱くなった。
ドキドキする!

「顔が赤い。かわいいな…」
そう言って、アルは、今度は私のほっぺたをやさしくなでた。

ドキドキを通り越して、バクバクしはじめた私の心臓!
ちょっと、どうしたの、アル?! 
危険なのは、花の色じゃなくて、アルだよね?!



※ 読んでくださった方、ありがとうございます! 
  そして、エールもありがとうございます! 励みになります!!
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

初恋を奪われたなら

豆狸
恋愛
「帝国との関係を重視する父上と母上でも、さすがに三度目となっては庇うまい。死神令嬢を未来の王妃にするわけにはいかない。私は、君との婚約を破棄するッ!」

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】婚約者なのに脇役の私

夢見 歩
恋愛
貴方が運命的な恋に落ちる横で 私は貴方に恋をしていました。 だから私は自分の想いに蓋をして 貴方の背中を少しだけ押します。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

身代わりーダイヤモンドのように

Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。 恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。 お互い好きあっていたが破れた恋の話。 一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)

処理中です...